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第10回 三重県旧関町(新亀山市)の景観まちづくり 2005.1.1

 

新年あけましておめでとうございます。
第10回は今月11日新亀山市となる、三重県鈴鹿郡関町(せきちょう)です。亀山市となっても「関町」の名は一部地域に残ります。20年前、1.8kmにわたり国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたのが関宿です。地名は、越前の愛発(あちら)、美濃の不破とともに、日本三関と呼ばれた伊勢鈴鹿関が置かれたことに由来しています。
徳川幕府の宿駅制度による、東海道53次の47番目にあたるのが関宿であり、宿場町として長い間繁栄しました。当時の特産品は鉄砲や煙草に使われた火縄でした。
鈴鹿山麓に位置した静かなまちですが、国道1号線からはずれた位置に旧街道があったこともあり、昔のまち並みが残された貴重な地域です。
最近は、「生活の場」であることをより重視しています。関宿町並み保存会会長の服部泰彦さんと教育委員会・町並み保存担当の嶋村明彦さんにお話を伺いました。

服部さん
嶋村さん


  • 服部さんが「関宿町並み保存会」の会長に手を上げたのは、還暦を迎えた時、まちに恩返しする気持ちで「ぼちぼち始めよか」と思ったのがきっかけ。
  • 1980年に伝統的建造物居住者を会員として結成された「関町町並み保存会」がその前身であるが、当時は趣旨が十分に理解されず、反対意見も多かった。しかし、時間が経過するにつれ、徐々に皆の心の中に意識が芽生えた。
  • 1998年に発足し、当初のメンバー23人から、現在は約90人に増えている。毎月1回の勉強会では、お年寄りから昔話を聞いたりしている。この内容を含めた会報「町並みかわら版」を隔月2,500部発行し、全戸に配布している。情報伝達が見事である。
  • 服部さんによれば「江戸時代宿場町のDNA」ということになるが、誇りは訪問者へ気軽に話し掛けること、訪問者へのホスピタリティー精神である。
眺関亭より
  • 観光地にするのが第一義的目的ではなく、あくまで「生活の場」の向上を目指した、生活しながらの保存を優先しているとのことである。この趣旨は前回紹介したアイルランドの「美しいまちコンテスト」のそれに合致している。また、保存は手段であり、住民がまちに誇りを持って住むことが一番とのこと。
  • 通勤圏内に働く場所があり、経済基盤がしっかりしているため、観光に頼らずとも、生活しながらじっくりまち並みを保存することが可能であった。
  • 現在のまちのサイズが最もやりやすいが、新亀山市になった時、上手く継続できるか、一町民として少し不安はある。
新所まち並み
  • ゴミゼロ。ゴミを路上に捨てられない雰囲気をまち全体が醸し出している。
  • 次世代への引継ぎが課題であるが、服部さんはじめ保存会会員は、小学校で話をするようにしており、次第に小学生もまちに誇りを持つようになってきた。また、かつてまちを出て行った中高年層に対しては「定年になったら戻ってきて欲しい」と思っている。
  • 先月初め台湾からの視察団があったが、観光地を目指したものではない、関宿のまちづくりに関心を持って帰ったとのこと。近隣アジアの国々も景観について考え始めた一つの実例か…。
会津屋・洋館屋
  • 1984年12月10日、重要伝統的建造物群保存地区に指定された日が関町町民の「まち並み保存元年」、保存することをまちづくりの起爆剤にしようと決意した。
  • 関町としては、まち並み保存にあたり、まず地域をよく「みる」ことから始めた。これによりまちの個性が見えてきた。次に、まちに「ならう」こと。すなわち、先人の知恵を大切にし、これに新しい工夫を加えた。さらに、医者が患者を治すように「なおす」こと。結果、本来の姿が見えてくる。また、まちを美しく「しつらえる」、これはもてなしの心でもある。
  • まちの歴史・文化を最大限尊重しつつ、暮らしに知恵と工夫を加えていくことを関の「まちづくりの思想」とし、今後とも大切にしたいとしている。
  • 2004年3月末現在の累積修復数は427件、補助金総額は6億1千万円。保存地区全体には600棟あり、まだまだ待っている家が残っている。
中町まち並み
  • 庇が同じような高さで並ぶ低い二階建てが、まち並みの美しさを演出している。
  • 行政としては、住民に「かかわりを持ってもらう」ことを心掛けている。その表れが服部さんの「保存会」であり、単なる観光案内ではなく訪問者との交流を目指した「関宿案内ボランティアの会」であり、1997年より実施の小学校高学年対象「一泊二日体験学習」である。
  • 関町の人口は現在7,200人、中1,500~1,600人が関宿街道沿いに住んでいる。嶋村さんによれば、前者の60%、後者の80~90%の住民が今ではまち並み保存に関心をもっているとのこと。住民意識の確立が最も大切と考えている。
漆喰彫刻・鶴

  • 「景観法」を上手く利用し、新亀山市になっても関宿がその中心となるような景観行政を提案したいとのことである。
  • 近隣には関宿以外にも、棚田や亀山宿といった保存対象地域が存在するが、これらを連携させたいとも考えている。
  • 行政の目下の課題は、外観のみならず建物の内部を快適な住まいに変えること。空家を増やさないためにも、快適性はポイントとなる。
  • 「自分たちのまちを自分たちで守る、という町民の意識の高さ…」、これが関町の最大の特徴と言えるのではないか。(太田正美)
 塗籠(ぬりごめ)・虫籠窓(むしこまど)


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