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■ 第14回 鎌倉市の景観まちづくり                   2005.8.1

鎌倉市は全市域の55.5%が風致地区に指定されていますが、この中でも鎌倉駅周辺や若宮大路を中心とした「古都景観地域」、およびそれを取り巻く「古都丘陵景観地域」と言われるエリアに焦点をあてます。
作家の故大佛次郎氏は1965年の朝日新聞に「破壊される自然」と題した随筆を5回の連載にて発表しました。その中で、ブルドーザーが鎌倉の山々を削って分譲地にし始めたのを目の当たりにし、「今の間にブレーキをかけて置かないと、史跡だけでなく、日本の都会の近郊から、まったく自然の美しさが奪われて行くのは決定的なことである」と警告しています。このように当時住んでいた鎌倉や京都・奈良といった古都の景観破壊問題をとり上げていますが、同時に19世紀末より始まったイギリスのナショナル・トラスト運動も詳しく紹介し、わが国に比較し、いかにイギリスにおいて見事な景観が守られているかを説明しています。40年前のことです。

鎌倉には自然や歴史景観を守る多くの市民団体が存在しますが、今回は「鎌倉風致保存会(トラスト運動)」の小笠原さん、「鎌倉若宮大路さわやかロード(アダプトプログラム=後述)」代表の林さん、および鎌倉市の景観づくり推進者の方々にお話を伺いました。


古都景観地域

 古都保存法発祥の地
 アダプトプログラム

  • 1960年代からの高度経済成長時代、「昭和の鎌倉攻め」と言われた宅地開発の波が、聖域である鶴岡八幡宮裏山の「御谷(おやつ)山林」にも押し寄せてきた。
  • 開発反対運動がきっかけとなり、大佛次郎氏らを中心とし、"過去に対する郷愁や未練によるものではなく、将来の日本人の美意識と品位のために"「鎌倉風致保存会」が1964年設立された。
  • 「守るには買い取るのが唯一の方法」と判断し、2年後には御谷山林1.5haの買収に成功した。日本のナショナル・トラスト運動第1号と言われている。
  • 古都鎌倉の歴史的景観と豊かな自然を市民自らの手で守り、永く後世に伝えることが保存会の目的である。
  • 緑地保全については「みどりのボランティア」が、毎月鎌倉市内のどこかで下草刈りや倒木処理等を実施している。
旧安保小児科医院
  • 参加者は毎回30~50人程度、年令層は50代後半から70代までが多く、主流は60代半ばとのこと。毎年2月~3月の卒業前には、市内全8校の中学3年生も参加し、ボランティア活動を体験している。学校側も積極的。
  • 永福(ようふく)寺跡地での下草刈りや竹林の整備には100人超のボランティアが参加しているが、毎年、横須賀米軍から家族連れでの応援がある。日米合同の草刈作業である。
  • 建造物は、保存建造物第1号指定の大佛次郎茶亭と、保存会事務所の置かれている大正13年築の旧安保(あんぼう)小児科医院を管理・保存している。
御谷(おやつ)山林
  • 鎌倉の緑地は市街地に隣接した「近郊緑地」であるが故に、市民の憩いの場となるとともに、排気ガス・防災対策上も重要であり、小規模ながらも大切な役割を果たしているようだ。
  • 「おごらず活動を行っていることが誇り、まだまだ発展途上にあり継続してやっている」と小笠原さんは自分たちの運動を総括している。
  • 御谷山林ケースが引き金となり、鎌倉の三大緑地といわれる「台峯」「常盤山」「広町」についても、議会・行政・市民が一体となった運動により、近年その大部分の公有地化に成功、開発から守っている。署名は10数万に及んだ。
みどりのボランティア
  • ところで、目下鎌倉市は世界遺産登録を目指し努力中である。指定されれば、これが梃子になり、鎌倉の景観はより一層磨きのかかったものになる。
  • 最近はユネスコの審査基準が厳しく予断は許さないが、「武家が初めて造った政権都市」であること、三方山に囲まれた「都市のありよう」がよく残された点を強調し、バッファーゾーンといわれる周辺環境を整備する予定。
  • 鎌倉市は今年5月1日、景観法による「景観行政団体」となった。速やかに景観条例を景観法に沿ったものに改正するとともに、1994年に策定された景観形成基本計画を更新する。
大佛次郎茶亭
  • 市全体を「景観計画区域」とした上で、市民の意見も取り入れつつ、より積極的な景観整備ができる「景観地区」を設定する予定である。
  • 鎌倉市民の景観意識水準はすでに相当高く、行政に対して早速景観法に関連する問合せがあったとか…。
  • 若宮大路周辺の建物については、15mの高さ制限を行政指導しているが、「今の価値があるから、経済的にも成り立っている」との説明を辛抱強く続けている。
  • 鎌倉市は「アダプトプログラム」も導入。従前より地域での活動をしていた林さんが「鎌倉若宮大路さわやかロード」覚書に署名し、プログラム第1号が駅周辺にてスタートした。
若宮大路(アダプトプログラム)

  • アダプトプログラムとは、ハイウェイの散乱ゴミ問題が発端となり、アメリカ・テキサス州で1985年に始まった美化運動。道路や公園などの公共スペースを養子とみなし、ボランティアの住民等が里親となって美化活動を行うもの。日本には1998年導入され、現在は160を越える自治体に広がり、200強のプログラムが展開されている。

  • 年間1,700万人が訪れる鎌倉にとり、ゴミの散乱は悩みのタネであった。市側が清掃用具を貸与、集められたゴミを処理する。対象が県道であることから、保険は県が費用負担している。
さわやかサポターズ
  • 鶴岡八幡宮前の若宮大路はもともと「門掃き(かどはき)」の風習があり、門前を清掃する団体はすでに存在していたため、さわやかロードの対象区間はJR横須賀線のガード下から海岸まで。
  • 最初は行政がやるべきではないかとの意見もあったが、林さんの「鎌倉駅からの若宮通りは玄関までの道、どうせ歩くならきれいな道がいいでしょう」との一言で解決。
  • 年4回一斉清掃を行っているが、普段は毎日気が付いた人がゴミを拾っている。林さんはコツコツとやるこの毎日の運動の方が大事と考えている。
さわやかサポターズJr.
  • 現在は近くの第一小学校が参加、3年生を中心に「若宮大路と仲良くしよう」とゴミ拾いに協力している。林さん風に言えば「8才の子供が800年の若宮大路を管理」となる。
  • 最近では植え込みの中に捨てられる空き缶等は見かけなくなった。他のゴミが少なくなった分、タバコの吸殻が目立ってきたが、これが現下の課題。
  • 若宮大路の松並木を、いずれは仙台のケヤキ並木に匹敵するような景観にしたいというのが林さんの最終的な夢。
  • 市民団体の要望で2001年に制定された条例がある。通称「鎌倉クリーン条例」、正式名称は「鎌倉市みんなでごみの散乱のない美しいまちをつくる条例」であり、"まちの美観を確保し、後世へ継承すること"を謳っている。景観意識の高い鎌倉市のこと、今後も後ろ向きな動きは考えられない。 (太田正美)
若宮大路(鶴岡八幡宮前)


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