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■ 第18回 篠山市の景観まちづくり                  2006.6.1

篠山市街地全景(篠山市教育委員会)
丹波黒大豆、丹波栗、丹波山の芋、丹波大納言(小豆)、篠山米、丹波茶、丹波松茸、篠山牛、丹波猪肉等の特産品に代表されるように、兵庫県篠山(ささやま)市は農業が盛んであり、特徴的な景観の一つは「農村景観」です。
1609年に築城された篠山城に象徴される旧城下町でもあり、旧武家町・旧商家町を中心とする「歴史景観」にも特筆すべきものがあります。篠山の名は築城された場所「笹山」に由来していると言われています。

1999年に周辺4町が合併し、人口約47,000人の篠山市が誕生しました。一時減少していた人口も現在は漸増状況にあり、2010年の60,000人を目標にゆるやかな増加を計画しています。

江戸時代には、薪(たきぎ)や下草を伐り過ぎて山を傷めることのないよう、「入りあい」という採取量などを制限するシステムがありました。守り継がれてきた豊かな丹波の森を今後も大切にしようとするのが「丹波の森構想」であり、現在の様々な施策の原点となっています。1988年には人と自然と文化が調和するアメニティ豊かな地域づくりを目指し、「丹波の森宣言」が出されました。篠山市、丹波市併せて21,616世帯が署名しました。

当市が現在目指しているのは、「住みたいまち ささやま 人と自然と調和した田園文化都市」です。「住みたいまち」=「住みよいまち」としています。
篠山市役所の各ご担当の方々、および篠山まちなみ保存会会長の小林一三さんにお話を伺いました。



幕末の篠山城下町
(出展:丹波国篠山御城図)

街道沿いのプランター

濠周辺のプランター

田園風景
  • 篠山市の景観のベースは、面積の大半を占める自然や田園。「さとの区域」と呼ばれる田園ゾーンには、ほとんど休耕田は見られず、4月末には田植の準備のためきれいに水が張られていた。団塊世代が比較的残っており当分大丈夫。
  • 従来農地保全が進められ、篠山の田園風景は維持されてきたが、最近では担い手不足により山村地区の景観保全が一部困難になりつつある。
  • 殿町(とのまち)では民間団体が、今秋には4,500㎡の田を整備、「滞在型市民農園」を造り、利用者に黒大豆の栽培方法などを手ほどきする。黒田では60~70代の住民が、休耕田に菜の花を育て地域の景観を守っている。
  • 篠山市の景観づくりは、県とも良好な関係を保ちながら推進されている。県の緑条例(通称)に基づき、先進的な「ゾーニング方式」を導入している。
  • 環境形成区域を「歴史的な町の区域」「まちの区域」「さとの区域」「森を生かす区域」「森を守る区域」の5つに分け(ゾーニング)、それぞれの区域に最も相応しい景観・環境指針をガイドラインで示している。
  • 山裾に位置し住民が生活する「森を生かす区域」では「森林率」が定められ、開発を行う場合にも一定の割合での森林保全を求めている。市内最大の面積を占める森林地帯(森を守る区域)と合わせ、先人達が残した緑の財産を守っている。

農村集落


休耕田に咲く菜の花
  • 篠山市はさらに独自の「緑豊かな里づくり条例」を4町が合併した年に制定、ユニークな「里づくり計画」を展開中である。ルーツは「丹波の森構想」。
  • 無秩序な開発を未然に防ぎ、里山・田園景観を守ることが目的であるが、主体はあくまでも地域住民であり、行政はアドバイザーの派遣等、支援する立場に徹している点が特徴的である。「ミニ景観法」とも言える。
  • 現在、6つの集落が話し合いにより土地利用、緑化、景観などについてのルールを里づくり計画としてまとめた。市に承認されると、開発・建築行為はすべて届け出が必要となる。
  • 36世帯140人が住む市北部の乗竹(のりたけ)地区では、里づくり計画による土地利用の誘導の他に、コミュニティー形成に主眼を置いた、花プランターを玄関先に飾る等の「花いっぱいの郷」運動や交流の場「日曜サロン」開催計画も併せて策定した。
  • 歴史・文化景観の中心は、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されている旧城下町地区に広がる旧武家町の西・南・東新町、および旧商家町の上・下河原町と小川町。特徴的な家屋が残存している。
  • かつて鉄道駅が市の中心部には誘導されず、駅前を中核とした都市開発がほとんど進まなかったこと、比較的穏やかな気候風土であること、第二次世界大戦での戦火から免れたことが篠山の歴史的まち並みを守った。
  • 旧商家町・下河原町に住む小林さんの、歴史的景観まちづくりとの取り組みは33年前に遡る。当初は便利さを優先する住民の反対もありまとまらなかった。
  • その後まちづくりに対し90%までは賛成となったが、10%の反対を考慮し断念。


河原町1 (旧商家町)
  • 1993年の下水工事の際、道路整備も行うべきと行政に意見具申し、2年間工事をストップさせた。結果的に新しい道路舗装を実現。工事が終了していた隣の上河原町もやり直した。この"事件"がまち並みを考えるトリガーとなった。
  • 県の景観形成地区指定もあり、下河原町を中心に町民の意識も高まってきた。古くからの運動が奏効し歴史的家屋を潰しにくい雰囲気があったため、当地区では歯抜けの状態がほとんどない。
  • 最終的に6つの自治会すべてが、重伝建の申請に賛同、署名した。小林さんのモットーである全員参加が実現する。2004年12月に全国65番目の指定を受けた。遅咲きではあるが立派な花である…。
  • 現在小林さんは「篠山まちなみ保存会」の会長を務める。毎月第2月曜午後7時に公民館で会合を持つが、夜半まで議論が白熱することもしばしば。
河原町2 (旧商家町)
  • 「まち並みを残すだけが目的ではない」、「まちを活性化する一手段として景観がある」と小林さんは考える。「店舗を増やすことより、今の静かな生活を残した方がよい」とも…。
  • 全員の気持ちを聞いた。現在、町民の誰一人としてまちを出て行きたいと思う者はいない。通りから家の中が少し見え、懐かしさが感じられるようなまちにしたいと考えている。
  • 息子達の一部も戻りたいとの意思表示をしており、当面空き家になる可能性はない。まち並みが整ったことに対し町民は満足している。「良いところを指摘しよう」と言い続けている。
  • 行政側も昨年度より伝統的建造物の修理・修景を開始した。初年度50件の希望があったが、年7~8件のペースで継続的に実施していく。
西新町 (旧武家町)


大手公共的景観創出ゾーン
  • 「重伝建」を除く旧城下町も、県の歴史的景観形成地区に指定され、ゾーンごとに特徴ある景観づくりを推進中。大手公共的景観創出ゾーンでは、市役所、交響ホール、濠沿いの散歩道などが美しく整備されている。
  • 篠山景観の色彩の基本は、「笹の織りなす緑の軸」と「栗・松茸等の実りを表現する色の軸」の2つ。これらの色彩軸に瓦や壁に使われる無彩色が絡む。
  • 篠山市内には高い建造物はない。中心部にはコンビニもない。美しい農村、緑豊かな森、歴史文化遺産を基本財産として、人の営みと自然が一体となった風景を残すこと、景色の中に人が溶け込んでいるようなまちづくり、それが篠山市の目指す最終ゴール。「田園文化都市」の実現…。(太田正美)



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