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団塊のツアーとは
 

 1. 団塊世代とは何か

2. ノスタルジー

3. スローライフ

4. 学習するツアー

5.夫婦単位

6. 健康力向上

7. 景観・まち並みを楽しむ

8. アクティブ

9. 社会貢献意識

10. ロングステイ

11.Quality of Life

12.本物志向

13.インターネット

14.環境問題

15.田舎を見直す

16.明確なツアーテーマ

17.新しいもの好き

18.蘊蓄(うんちく)の旅

19. 感動を味わう

20. アンチエイジング







第15回 田舎を見直す
                                                        2006.9.20              

① ルーツ田舎のDNA

「美しき日本の残像(英題 Lost Japan)」(朝日文庫)を著したアレックス・カー(Alex Kerr)は、日本の田舎の魅力にいち早く気付いた一人である。1973年21才の時、徳島県の山間にある村祖谷(いや)に茅葺屋根の家を購入、修復の上しばらく移り住んだ。彼の目には当時の日本は田舎に至るも、すでに醜くなりつつあると映ったようで、自ら祖谷に居を構えることにより、何とか田舎やそれを取り巻く自然のよさを見直すよう訴え続けた。

内閣府の「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」(2005年11月)によれば、「週末は田舎で過ごしたい」と回答した団塊世代を中心とする50才代は45.5%に及び、年代別に見ると最も割合が大きく、田舎への関心が高いと言える。
かつて地方から都会へ流入した団塊世代は170万人とも言われているが、彼らは概ね十代の後半までは地方で生活しており、ルーツ田舎のDNAが身体に刻み込まれているのではないか、彼らを含め当該世代の田舎暮らし体験願望は潜在的に相当あるのではないかと思われる。


昨今各地方自治体においては、色々な思惑から団塊世代の地方回帰・定住を期待するところが多くなっているが、実際にUまたはI-ターンして居を移す者は極めて限定的ではないかと考えられる。代替として、週末は田舎で過ごすとか、田園ライフをツアーで楽しむという需要が今後高まってくるものと推察される。例えば、数日間農家の生活に入り込むことにより都会生活では失われた何かに気付く、暫し都会の喧騒を忘れ田舎でのんびりする、自然と触れ合い心のゆとりを持つ、人々のやさしさに触れるなどということが考えられる。他方迎え入れる側にとっても、都会からの知的な刺激を直接受けられることにもなるため、いわゆる交流人口の増加により、ツアーで訪れる団塊世代、農山漁村の住民双方が互いに元気になる。
具体的に広島県の7つの市町では、団塊世代に照準を合わせ、神楽鑑賞、漁村暮らし体験、秋祭り参加などを組み込んだツアーを計画し、実行に移そうとしている(2006.6.03日経新聞)。


② 田舎のよさを見直す

都会がとっくに喪失したものが田舎にはまだ存在することがある。団塊世代が子供のころ日常的に触れていたような古くから受け継がれてきたもの、田舎の暮らしの中に今もある懐かしいものなどに再び光を当て、これらのよさを見直すことは有意義ではないかと思われる。あえて新しいものを造る必要性はなく、ソフトでもハードでも、すでに存在するその地に固有な魅力を一つでも(One and only)発見・発掘できれば、後は皆で知恵を絞ってこれを活用すればよい。田舎を訪問することにより、団塊世代が中心となりそれぞれの地域が持つ魅力を住民とともに磨くことも、双方にとり楽しみとなるかもしれない。決して派手ではないが、最近よく言われる持続可能な(Sustainable)地域づくりに寄与することにもなるのではないか。

田舎固有のよさは、具体的には、その地域の歴史や文化に裏付けされるものを始め、景観、自然、動植物、伝統芸能、生活そのもの、もてなし、その土地でしか味わえない食べ物、健康、癒し、星空がきれいなことなど、さまざまなものに見出すことができる。

移住までしなくとも田舎のよさをツアーで知ること、楽しむことができる。地域のよさをゆっくり味わうスローライフな田舎暮らし体験ツアー、余り知られていない農山漁村固有の資源と触れ合うツアー、その土地でしか入手できない産地直売品を購入するツアー、地域ぐるみの歓迎を受けるツアーなどが考えられる。
田舎の主役は現実的には高齢者であることが多いが、訪問することにより彼らの知恵や生活体験の話を直接聴くことができる。農作物を育てることの大切さを、彼らから学ぶこともできる。ホテルや旅館に泊まらず、空き部屋に泊めてもらうのも楽しい。

 

③ ルーラルツアー

国により呼称は異なるがヨーロッパでも田舎を訪ねるツアーは、以前からポピュラーなものとなっている。フランス、ドイツ、イタリア、イギリスなどにおいては特に盛んである。
中でもフランスは発祥の地と言われ、第二次世界大戦後まもなく農家の価値を再発見するツーリスム・ベール(グリーンツーリズム)が誕生している。ジットと呼ばれる2~3部屋しかない小規模民宿に数日間泊まるのが一般的なようである。
イタリアではアグリツーリスモと言われるが、ここでも農家民宿が主流となっており、夏場はイタリア人のみならずドイツ人、フランス人で溢れ返っているようだ。農場で休暇を過ごし、都会からの人々と農民との交流が行われている。食材は周囲12km以内で採れたもののみを使用しなければならない。中部イタリアのトスカーナ地方が一番人気とのこと。トスカーナ料理の作り方を教わっている者がいるかもしれない。

イギリスやアイルランドではルーラルツーリズム。ファームハウスに宿泊するが、イギリスのコッツウォルズ地方に代表されるように、周囲の景観の美しさが特徴的である。ロンドンから比較的近い地域では、週末農村休暇を楽しんでいる者も多い。
ドイツやオーストリアでは農村空間が一段と整備されており、農家の宿泊施設も極めて清潔で、安心して泊まることができる。
今後はヨーロッパの人々だけでなく、田舎のよさを再発見したいとする団塊の世代も、これらの国々に気軽に出かけ「ルーラルツアー」を楽しむようになるのではないかと思われる。

日本においても同様な動きが見られるが、最近では規制緩和(旅館業法、食品衛生法の解釈)により、条例による農家民宿が可能となっており、田舎に訪問者を受け入れ易い環境が整いつつある。
既述した広島県の計画以外にも、例えば島根県では「しまね田舎ツーリズム」と呼ばれるプロジェクトが立ち上げられている。「田舎暮らしの豊かさを都市住民の方々におすそ分けしたい」との理念の下、具体的なツアーを行政と住民の協働で推進しようとしている。都市住民に癒しの空間を提供すると同時に、県下市町村の活性化を目論んでいる。究極的には団塊世代を始め何人かには定住して欲しいとの本音も少し覗えるが、先ずはツアーによる田舎体験をアピールしたいようである。当該プロジェクトには現在17の団体が参加しており、旬の食材を使った料理を提供する、古民家の囲炉裏を囲み交流を図る、塩づくりを体験する、廃校を利用した宿泊施設に泊まるといったツアーが設定されている。いずれも団塊世代の興味をそそるものが多いように思われるがどうか。

その他、大分県日田市・宇佐市、青森県南部町、愛媛県伊予市、岐阜県飛騨市、鳥取県倉吉市、北海道十勝…等々、ルーラルツアーと熱心に取り組んでいるところは増加の一途を辿っているようである。
一筋縄ではいかない団塊世代獲得のためには、プログラムの多様性と独自性が重要なファクターとなるのではないか。(太田正美)      
                             

<参考資料>
「ヨーロッパ田園と農場の旅」(東京書籍 道下弘紀著)
「美しき日本の残像」(朝日文庫 アレックス・カー著)
「地域振興策としてのルーラル・ツーリズム」(佐藤誠・内田和美、web)
「しまね田舎ツーリズム」(島根県web)
「旅・田舎に行こう・体験グリーンツーリズム」(MSN毎日新聞web)

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