第21回 ガイドを楽しむ
2007.3.20
① 説明を楽しむ
アップルコンピュータは大阪市の「大阪まちあるき」とタイアップし、iPodを利用したツアーガイドを開始した。まずPodcastという機能を使用し、iPodに音声ガイドを無料でダウンロードする。大阪まちあるきには現在2つのコースが用意されているが、それぞれ10~11ヵ所を訪問、スポット毎に3~4分のガイドをiPodにて再生する。自分のペースでまち歩きを楽しみながら、立ち止まって随時説明を聞くことができる。
コースの一つは「真田幸村と大坂の陣」と名付けられ、天王寺から大阪城に至るエリアの要所において、徳川家康と真田幸村によって冬・夏と二度にわたって繰り広げられた決戦の様子が説明されており面白い。もう一つは「レトロ浪漫中之島タイムトラベル」コース。国の文化財となっている大阪倶楽部、綿業会館などの歴史的建造物につき、建築様式やどのように使用されていたかなどの説明を聞くことができる。かつて大阪は綿業が盛んであり東洋のマンチェスターと呼ばれたこと、また大正14年には人口が200万人を超え日本最大、世界第6位の都市
であったことなど、新たな発見をすることもできる。
自宅に帰り専用マップを開きながら再び聞けば、旅の余韻に浸ることもできる。昨年の10、11月にはiPodのレンタルも実施され、団塊世代を含む50~70代のシニア層を中心に好評であったとのことである。
このように行く先々にて興味深い説明を受ければ、特に団塊世代にとり旅の楽しさは倍増するのではないか。はとバスが長い間支持されているのも、ガイドの説明がその理由の一つかもしれない。
NHKは昨秋「はじめてのお遍路」を数回にわたり放送したが、そのテキストは11万部も売れたそうだ。ところどころ先輩ガイドが同行し、四国八十八ヵ所の霊場を巡るお遍路の作法などを説明していたが、これから自分を見つめ直す機会が多くなる団塊世代にとっては、関心を高める対象になるのではないか。
団塊世代は徐々に地域社会に戻って行くことになるが、自らが地域のガイドになろうとする者も出てくるものと思われる。ガイドの説明を聞くことにより、実践的な学習もできる。
② まちの案内を聞く
最近では全国的に、まち並みガイド、まちかどガイド、ふるさとガイドなど、まちを案内する有償・無償のさまざまな団体が組織されている。「観光ボランティアガイド」などは現在800組織を超えている。いずれも予約しておけば現地で心温まる案内をしてくれる。おもてなしの心が感じられる説明を受ければ、団塊世代にとり忘れ難い旅の思い出となる。ガイドにとっても地域の紹介を訪問者に喜んでもらう、と同時に地域活性化に貢献することにもなり、一石二鳥のやりがいのある仕事となっているようだ。
「盛岡ふるさとガイド」は2001年に誕生したが、市内を流れる中津川を中心に約2時間30分かけて歩く「啄木と賢治青春の道」と名付けられたコースなど、5コースを用意している。
2004年世界遺産となった熊野古道は、和歌山県田辺市の「熊野本宮語り部の会」の会員が、熊野古道を歩きながら「紀伊山地の霊場と参詣道」の文化的景観を説明している。加えて沿道住民との会話も楽しんでもらう工夫もしており、生活風景を垣間見ることができる。
山口県周防大島のボランティアガイドは、「忘れられた日本人」を著した民俗学者宮本常一の生地でもあり、資料展示室などを中心にその足跡を訪問、説明している。ちなみに宮本常一自身は地球4周に相当する16万キロを隈なく歩き、住民から地方の昔話を聞き出している。
東京では東京シティガイド検定の合格者有志が集まり、「東京シティガイドクラブ」を結成した。歴史探索、古典芸能、江戸百景などのグループに分け、23の東京案内コースを設定している。「谷中そぞろあるきコース」では、江戸情緒の残る谷根千(谷中、根津、千駄木)界隈を2~3時間かけ、まち歩きを楽しんでもらいながら案内している。団塊世代にはコースに参加するだけでなく、クラブ会員になって欲しいとの期待もある。現在会員は約450名、人の喜びを自分の喜びとする快感を味わっているとのことである。
③ ガイドツアーあれこれ
各地自然の豊かなところにはネイチャーガイドが存在する。上高地においては明神地区までの片道3kmを、3時間かけてのんびり歩きながら、周囲の自然の不思議を説明してもらう。
北海道の洞爺湖に浮かぶ中島には野生生物が多く生息するが、「エゾシカと巨木ウオッチングツアー」などはどうか。エゾシカのみならず、野鳥や小動物、めずらしい植物に関する知識を深めることができる。
日本の世界遺産の中、自然遺産である屋久島、白神山地、知床の3ヵ所においては、ネイチャーガイドより保全の大切さおよびその方法を学習する。
カナディアンロッキー・ツアーのガイドは、カナダ山岳ガイド協会の厳しい審査に合格しているとともに、自然観察説明員の資格も有しており頼もしい。難易度、時間、歩くペース配分などについては、団塊世代に合ったコースを設定してくれるようである。カナダの貴重な自然を守りながら、満喫するハイキング・ガイドツアーは安全面でも心配なさそうである。めずらしい高山植物の名前、国立公園の歴史など、さまざまな疑問に対する答えはその場で得られる。
ロンドンの西約200kmにある、円形に並べられた巨石群ストーンヘンジは、紀元前2500~2000年のものと言われているが、最近3kmくらい離れたダリントンウオールズで、ストーンヘンジを造った人々が住んでいたと思われる村の跡が発見された。村は生活の場であったが、ストーンヘンジは共同墓地および記念碑であっ
たと推察している(2007/1/30 CNN.com)。ストーンヘンジ周辺は現在ナショナルトラストにより管理されているが、ガイドからこのような説明を聞き、いにしえの情景を思い浮かべながら見学すれば一層感慨深いのではないか。
興味ある絵画の制作にまつわるストーリーをガイドから聞いてはどうか。オルセー美術館では、セザンヌが何故生涯にわたり故郷のサント・ヴィクトワール山を描きつづけたのかを聞き、フィレンツェのウフィツィ美術館では、ダ・ヴィンチの「受胎告知」の背景につき説明を受ける。なお、「受胎告知」は本日(3/20)より東京国立博物館にて本邦初公開される。
奈良の薬師寺では、平山郁夫画伯が30年をかけて描いた、全長49mにおよぶ大作「大唐西域壁画」を見ることができるが、玄奘三蔵の天竺に至る旅とその精神を描いたとされる絵画についてのボランティアの説明は実に分かり易く、楽しい。
その他、音楽好きの団塊世代には、ライプツィッヒでのバッハの軌跡を辿る徒歩ガイドツアーなども興味を引かれるのではないか。
ガイド付きの工場見学ツアーも用意されている。岡崎に行けば660年の歴史ある老舗が、昔ながらの製法で3年をかけ造られる八丁味噌の工場を見せてくれる。
映画ロケ地をガイドの説明付きで巡るのも面白いかもしれない。気になった映画から「アバウト・シュミット」のネブラスカ州オマハ、「マディソン郡の橋」のアイオワ州、邦画では「北の国から」の北海道富良野市、「佐賀のがばいばあちゃん」の佐賀県や福岡県柳井市などを訪れるのはどうか。(太田正美)
<参考資料>
「忘れられた日本人」(宮本常一 岩波文庫)
「アップルコンピュータ」(web)
「東京シティガイドクラブ」(web)
「The Canadian Rockies」(web)etc.
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