第22回 贅沢を楽しむ
2007.4.20
① ラグジュアリーな気分に浸る
パイオニアは今月上旬、1本315万円の最高級スピーカーを発売した。低音域から高音域まで幅広い音域に対応し、忠実に音色を再生できるとしている。表面は高級家具用の天然木を使用し、工芸品のような仕上がりとのことで、重さは150kgもある。年間100本の販売を目指しているが、主たる販売ターゲットは団塊を中心とする世代である。
団塊世代からはリフォーム需要も旺盛になってくるものと思われる。子供が出ていった後の空き部屋を良質な書斎に造り直し、自分の居場所を確保することによりプチ・リッチな気分を味わうとか、毎日使用するバスルームを明るく開放的で、多機能なものに改造し時間をかけて入浴を楽しむ、などということにお金をかけるケースも多くなるのではないか。
いずれもラグジュアリーな気分に浸ったり、プレミアム感を味わいたいとする団塊世代の欲求を満たすものである。贅沢と言ってもさすがに1本315万円のスピーカーにはなかなか手が出せず、団塊世代のそれは、大半がプチ・リッチ、すなわちちょっとした贅沢を楽しむといったものである。すでに団塊女性が大いに楽しんでいる"ちょっと豪華なランチ"なども、その一つかもしれない。
アメリカでは少し無理をすれば入手できる贅沢品の購買層、「ニューラグジュアリー」が出現し、自分のこだわりに対しお金をかけているようであるが、日本では主として団塊世代が当該購買層にあたるかもしれない。場合によりワンランク上の商品・サービスを買うといったような消費行動をするのが特徴である。
かつて経験したことのない時間的余裕を持つことになる団塊世代にとり、お金をかけてでも、いかに有意義に時間を使うかが大きな課題となってくる。もともと次世代に財産を残すことには興味が薄いこの世代は、自分たちが楽しい時間を過ごすため、時として、例えば特別な日には、思い切った出費をためらわないことが想定される。
② プチ・リッチな旅
旅行についても高級志向が高まり、ケースによってはある程度まとまった出費をするものと思われる。旅行中少々贅沢したいものとして、多くの団塊世代は「ホテル」「食事」「時間」の三つを挙げるのではないか。
自分たちだけの空間を求めて隠れ宿や離れのある宿に宿泊する、お気に入りの宿を定め何度でもそこに出かけるなど、今までの旅行とは異なり、ちょっとリッチな気分にさせてくれる宿泊先を選ぶようになる。レイトチェックアウト、客室露天風呂などといったサービスを受けることによっても、ささやかな優越感に浸る。
レストランについては高級店や有名シェフの店、雰囲気の良い店、一元の客は入れないようなカウンターのある店を選び、会話を楽しみながら舌鼓を打つ。旅先での地場でしか味わえない食材をふんだんに使用した料理とか、冬の味覚など季節限定の料理などは、団塊世代をちょっとリッチな気分にさせてくれる。お酒好きは蔵元で銘酒を嗜(たしな)んだり、ウイスキーの醸造元にてシングルモ
ルトを味わうことにより同様な気分が楽しめる。
ゆったりとした時間を過ごすことにより、プチ・リッチ感に浸ることもできる。国内各地や鉄道網の発達したヨーロッパ各国にて、あえてローカル列車の旅を選択することも、時間の贅沢を味わうという意味では楽しい。これまでの旅行では気付かなかった思いがけない発見を、各駅ごとにすることになるかもしれない。
旅先であちらこちらに出かけず、「何もしないこと」も時間の贅沢な使い方と言える。読みたい本を大量に持ち込んで一ヵ所に比較的長期間滞在し、美しい景色に囲まれ読書三昧に明け暮れる。ヨーロッパには夏に訪問し、特段何をするでもなく、太陽がなかなか沈まないサマータイムをエンジョイする。
いずれにせよ差別化された優越感を味わうことができる、ワンランク上の少し贅沢な旅は、団塊世代にとっては大変魅力的なものと映るのではないか。
③ 思い切って贅沢に…
「毎回の旅行で…」という訳にはいかないが、節目節目において思い切って贅沢な旅行をすることは、団塊世代の行動パターンとしては大いにあり得る。
その場所を見るのに最適な時期を選んで訪問し、その時期だけにしか見られないものを見る、「旬」にこだわった旅はどうか。例えば、9月下旬から10月上旬にかけての最盛期に、カナダ東海岸メープル街道沿いの紅葉を見る。先ずはモントリオール北西部のローレンシャン高原にて、世界最大とも言われる雄大な高原の紅葉を、トレンブラン湖上よりクルーズしながらじっくりと味わう。次いでオンタリオ湖の北部にあるもう一つの名所アルゴンキン州立公園では、公園内のロッジに宿泊し広大な自然公園内の紅葉を楽しむ。ここには世界中の著名人の別荘もあるとか…。さらには世界遺産のまちケベックで、紅葉景観を背景に古都のまち並みを歩く。メープル街道からは外れるが、10月中旬には赤毛のアンの島プリンスエドワード島に足を伸ばし、静謐さの中で紅葉を観賞する。
豪華列車の旅も贅沢旅行の選択肢の一つではないか。オーストラリアを縦断するザ・ガン鉄道(The
Ghan) にて、アデレードからアリススプリングス経由ダーウィンまでの2,979kmの旅へ出かける。時間はゆっくり流れる。もちろん最高のゴールド・カンガルー・サービスを選択し、快適な寝台と豪華な食事をエンジョイする。よりラグジュアリーな気分を味わいたい場合には、1列車1部屋しかないデラックス・キャビンにアップグレードしてみる。当列車は週2回運行され、2泊3日、47時間15分を要するが、途中アリススプリングスとキャサリンでは4時間程度停車する。停車中にはヘリコプター・ツアーなどいくつかのホイッスル・ストップと呼ばれるツアーが用意されている。
豪華列車と言えば、1883年パリからイスタンブールに向け運行が開始され、現在では複数の会社がいくつかのルートで運行、"動く豪華ホテル"の地位を揺るぎなきものにしているオリエント・エクスプレス(Orient-Express)
とか、サンモリッツからツェルマットまで、パノラマ1等車の車窓からアルプスの景観が堪能できるスイスの氷河急行(Glacier Express)
なども挙げられる。
団塊世代が興味を示しそうなラグジュアリーなツアーは、これらの他にも色々考えられる。マスターズ・ゴルフやジ・オープンと呼ばれるブリティッシュ・オープン等のメジャー・ゴルフ大会、4大テニス・トーナメントなどといった超一流のスポーツ大会をじっくり観戦する。アドリア海やエーゲ海にて最高級のクルーズを経験する。水上飛行機によるシーニック・フライトにて、一味違ったシドニーを上空から眺める。360度地平線を見渡すことのできるウルル(エアーズロック)にて初日の出を迎える。タヒチにて水上コテージから満天の星空を満喫する。100日間の世界一周の旅に出かける等々…。いずれも各地の最上級ホテルに宿泊する。
個性豊かな団塊世代にとり、一時(いっとき)の贅沢を味わう旅の選択肢は多岐に渡る。(太田正美)
<参考資料>
「カナディアンネットワーク」(web)
「AUSTRALIA'S GREAT TRAIN JOURNEYS」(web)
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