第26回 こだわりの旅
2007.8.20
① こだわりの強い世代
最近のある調査によれば、団塊世代が好きな言葉の上位3つは、「夢」「自由」「平和」であるが、一世代上のシニア層との比較において差が大きく、団塊世代が際立って好む言葉は「シンプル」「粋」「こだわり」である。いずれもこの世代の心意気を示すようであるが、「こだわり」意識の強い世代であることが窺える。「趣味やモノにこだわりを持っている」と団塊世代の70.9%が回答しており、先輩シニア世代の57.7%もこれを認めている。(2007.1
I&S BBDO調査)
団塊世代のこだわりは、例えば商品選択において顕著に現れる。これまでも見てきたようにスピーカーなどの音響機器、楽器、車、ファッション、リフォーム、デジタル機器などに関しては特段のこだわりを示し、厳選した商品のみを購入することが多い。同様に「旅」についても、これまで以上に何かとこだわりを強めることになるものと思われる。この世代がそれぞれのこだわりの商品や旅行に対し、出費を厭わないことは言うまでもない。
"Like no other (唯一無二)"はソニーのブランド戦略であるが、団塊世代の旅行のイメージと重なり合う部分があるように思われる。"Something
different…"、 何か他人とは異なった旅、素材を組み合わせた手作りの旅、見るだけでは満足せず参加することにこだわる旅などに価値を見出していくのではないか。
② ニッチな旅にこだわる
6月2、3日の両日、静岡県富士宮市において「第2回B-1
グランプリ」が開催された。地元の食べ物によりまちの活性化を図ろうとする団体が、一ヵ所に集合しB級グルメを競う大会である。昨年の第1回は10団体の参加に止まったが、今年は13道県から21団体が参加、25万人を集客し盛況裡に終了したとのことである。ちなみに開催地富士宮市の「富士宮やきそば」が、大差を付け2年連続でグランプリを獲得、2位は八戸市の「八戸せんべい汁」であった。
あえて各地のB級グルメを求める「ニッチ旅行」にこだわることも面白いかもしれない。北海道の富良野で「富良野オムカレー」、鳥取で「とうふちくわ」、来年の開催地久留米では「久留米やきとり」を食する。これらはいずれもB-1
グランプリに参加しているが、全国各地のB級グルメを団塊世代の独自調査にてリストアップし、毎年どこかに出かけてみるのも一興ではないか。
「ローカル線」もこだわり旅の選択肢の一つであり興味深い。団塊世代を主たる読者とし近畿一円で発行されている「フロンティアエイジ」(2007.5.9号)に、近畿地方の5つのローカル・ミニ路線が紹介されていたが、いずれも特徴があり乗ってみたくなる。乗車運賃のみで自転車を持ち込める近江鉄道、湖東の沿線には見所も多く自転車が活躍する。北播磨を走る北条鉄道はディーゼルカーを使用、いずれは使い古しの菜種油で走るエコ電車化を考えている。途中駅では公募から選ばれたボランティア駅長の手作りの花壇を楽しめる。日本一短いのはJR紀勢線の御坊(ごぼう)駅0番ホームを始発駅として間借りする紀州鉄道、全長わずか2.7km、最高時速38kmである。1928年誕生当時は主として材木やみかんを港まで運ぶ貨物輸送を行っていたとのこと。
鉄道ファンの多い団塊世代、全国各地のローカル線乗車にもこだわりを見せるのではないか。時刻表からはさまざまな情報を読み取ることができ、計画段階からわくわくする。沿線に何があるのかよく分からないことも、ミステリアスであり期待感を高めてくれるようだ。本数が少ない不便さも楽しみに変えてしまう。新幹線などと異なりトンネルが少ない所を走るため、車窓からの景色をゆっくり楽しむことができる。1982年以来続くJRのヒット商品「青春18きっぷ」はローカル線利用には最適であるが、年齢制限はなく団塊世代も購入可能である。
第三セクターの長良川鉄道沿線では、「レール&ウオーキング」が催されており、乗車の楽しみに加え、新緑や紅葉の中を歩くすがすがしさも味わうことができる。京都嵐山保津川沿いを走る嵯峨野観光鉄道などのトロッコ列車にも風情がある。1日1往復しか列車が止まらない、北海道石北(せきほく)本線の上白滝駅に行ってみるのは少しマニアック過ぎか…。最近では軽量低床型LRTなど路面電車が見直されているが、最大の路面電車網を有する広島電鉄では、ドイツ製を始め国内各地のレトロ車両がそのまま使用されている。市内の景色に溶け込んでいる長崎電機軌道の路面電車には100円で乗車できる。ぬれ煎餅販売まで行い、懸命に経営再建を図る話題の銚子電機鉄道に乗車すれば、多少の応援になる…。団体旅行では楽しめないニッチなローカル線旅行に際限はなさそうである。
③ それぞれのこだわり旅
毎週日曜日の昼、FM横浜の「KONY ISLAND」を聞けば、つかの間KONISHIKIがハワイムードに浸らせてくれる。
かつての海外旅行の入門編とも言えるハワイに改めてこだわってみるのはどうか。当時は4泊6日の定型パターンにて慌ただしく訪問したのものだが、これからは日数を柔軟に設定し、オアフ、マウイ、ハワイ島などでの、ストレスから解放された滞在を満喫する。コンドミニアムで中長期にわたり滞在するのもよい。しばらく訪れていなかったハワイでも、やはり治安、気候、日本からの距離など、団塊世代にとってのその魅力は決して失われてはいない。今まで知らなかった新たな魅力を発見したいものである。
ハワイ側もワイキキ史上最大とも言われる規模にて、ビーチウオークの再開発を行っており、すでに第一期工事が完了している。遊歩道を歩きながらショッピング、食事、エンターテインメントをエンジョイできる。若い時はビーチで泳いでいれば満足していたが、それなりの年齢に達した団塊世代にとってはありがたい再開発である。ハワイにこだわるこの世代は、ロングステイのリピーターになる可能性も秘めている。
日本の自然100選など、「100選」にこだわった旅も興味をそそる。音風景100選では「函館ハリストス正教会の鐘」、山形市の「山寺の蝉」、美濃市の「うだつのまちの水琴窟」、日田市の「小鹿田(おんだ)皿山の唐臼」などの音や声を聞きに行く。道100選からは、角館市の「武家屋敷通り」、亀山市の「旧東海道関宿」や那覇市の「首里金城の石畳道」を歩く。100名橋の中から、熊本県山都(やまと)町の「通潤橋(つうじゅんきょう)」を訪ね、放水場面を見る。棚田100選では、美しい景観を呈する輪島市の「白米(しろよね)の千枚田」に足を運ぶ。幸い能登輪島地震の被害は免れた。この他にも名水、名木、ふるさとの駅、名城、桜の名所等々さまざまな100選が存在する。
さらに最近では学術的観点に、観光の視点も加味し選択したとされる「日本の地質100選」も出現し、秋吉台・秋芳洞、阿蘇カルデラなどとともに、足尾銅山跡、佐渡金山跡、石見銀山跡、夕張の石炭大露頭が選ばれている。
鉱山跡はかつての日本の産業を支えた歴史もあり、訪問する意義は十分にある。産業遺産にこだわれば鉱山跡だけではなく、ノコギリ型屋根が特徴的な桐生市の繊維工場跡、繭が充分確保できた富岡市の製糸場跡、同じ群馬県の碓氷峠アプト式鉄道遺産、明治期に琵琶湖から京都に引かれた琵琶湖疎水(南禅寺内で水路閣が見られる)なども、それらが造られた背景も含め、団塊世代の興味を引くのではないかと思われる。(太田正美)
<参考資料>
「ローカル線ひとり旅」(光文社新書 谷川 一巳)
「新しい観光」(交通新聞社 須田寛)
「団塊世代インサイト調査(2007.1.25)」(I&S BBDO web)
「フロンティアエイジ」(2007.5.9号)
「日本列島周遊 熟年二人旅」(web)
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