オトガル

 オトガル(Otogar)とは長距離バスターミナルの事である。これは推測だが、オトはAuto(自動車)、ガルはフランス語Gare(駅)のトルコ合成語ではないかと思う。18世紀以降オットマントルコは西欧に先進技術を学んできた。必然的に英語、仏語、独語がトルコ語に多く入ってきて、オトガルのような合成語も生まれたのであろう。トルコの長距離旅行には、航空機、鉄道そしてバスが利用される。航空機は、東西の長距離移動に最適である。しかし空路はイスタンブールがハブとなって(首都アンカラもある程度)、地方都市を放射状に繋いでいるが、運航便数は主要都市を除いて少ない。従って地方都市間の空路は路線も便数も少なく、旅行は鉄道かバスに依存せざるを得ない。例えば、アンタルヤから次の目的地、カッパドキアのネヴシェヒルへ航空機で移動するとすると、アンタルヤからイスタンブールに戻り、イスタンブールからネヴシェヒルへ飛ばなければならない。イスタンブールでの長い待ち時間を入れると、所要時間はバスとほぼ変わらず、料金はバスの比ではない。鉄道はアナトリア半島の地形が峻険で、鉄路の敷設が進んでいない。その上時間は掛かるし、時間通りの運行もなかなか確保できていないようだ。信頼して利用するには難がある。アンタルヤにもネヴシェヒルにも鉄道はまだ来ていないのが現実で、その間では鉄道利用の選択肢はない。このような事情からトルコ政府は道路網の整備に力を入れており、バスの利用がトルコ国内移動には欠かせない。日本で鉄道の駅が担う役割をトルコではオトガルが果たしている。明治時代、鉄道の敷設が行われた際、駅は街の端に設置された事が多いと聞く。街の中心に駅を新設する必要性、重要性が認識されなかったのだろうし、そのような空地を取得することも難しかったに違いない。新幹線の駅もまた街のはずれにあることが多い。オトガルも同じで概ね郊外にある。イスタンブールの場合市内中心地から直線距離にして13kmの西方郊外、アンタルヤは街から6kmの郊外といった具合で、空港へのアクセスと余り変わらない。

 カレイチの時計台近くでトラベルエージェントを見かけ、面白そうな観光情報でもないかと中に入った。若い男がツアーを売らんとセールス攻撃を掛けて来るが、どれも割高な上、時間的に制約もあってツアーは諦めた。ついでにと、アンタルヤからネヴシェヒル経由ユルギョップ迄の高速バス切符の手配を頼んだが、バスの切符は扱っていないという。何処で扱うかと聞くと、オトガルだという。市内で扱うところはないかと聞くと、ないとの答。そんな筈はないと思ったが、ないという場所を探すのも時間が掛かりそうだ。オトガルだの切符だのと出発直前に慌てるのも業腹だし、出発時間を確認しておく必要もある。切符購入がてら下見をしておこうとタクシーをオトガルに走らせた。

オトガル

 オトガルは遠い。遠回りされているかもしれないが如何ともしがたい。20~30分も走っただろうか、やっと、運転手が「オトガル」といって近代的なビルを指差した。空港と並ぶアンタルヤの陸路の玄関である。正面玄関を入るとバス会社のチケットカウンターが並び、空港のロビーの造りと大差ない。通路を挟んでレストランやお土産屋の店舗がある。正面玄関を真直ぐ進むとゲートがありバス乗降車場となる。案内所で「ネヴシェヒル」と尋ねると右方のカウンターを指差した。ガイドブックは、バス会社は全国規模で運行する会社か目的地のバス会社を選ぶとよいと薦めている。ネヴシェヒル行きバスは、全国規模の「Metro」、ネヴシェヒルの「Nevsehir Seyahut」そしてカッパドキアの中核都市カイセリの「Kent」の3社が運行していると判り、「Nevsehir」に立ち寄った。アンタルヤを朝出発し、車窓の景色を楽しみながら夕刻カッパドキアに到着したいと計画していた。朝の便を予約したいと伝えると夜行便しかないという。「Metro」、「Kent」両社も夜行便しか運行していない。事前に朝の出発便を確認していたのにと腹立たしいが致し方ない。アンタルヤ滞在を一泊短縮することにして、夜8:30発ネヴシェヒル経由カイセリ行きを予約した。ネヴシェヒル着、翌朝07:00、所要時間10時間半の旅である。(続)



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