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旧市街
ホテル周辺
スルタンアフメット地区は、イスタンブールの豊かな歴史が集積する街である。ガイドブックがイスタンブールの見所として挙げる名所史跡はこの地区に多い。トプカプ宮殿、アヤソフィア、スルタンアフメット・ジャミー(ブルーモスク)、地下宮殿、ヒッポドロームは隣り合わせだし、グランドバザール、スエジプシャンバザール、エジプシャン・バザールも近い。
スルタンアフメット寺院
スルタンアフメット・ジャミーは、マルマラ海からやや傾斜の強い坂を300メートルほど登った岡の上に立つ。その直ぐ下の石畳の路や路地には飲食店、ホテル、お土産店が所狭しと並んでいる。店頭で声高に客を呼び込む威勢のいい兄さん達、車の警笛、観光客の哄笑。西ヨーロッパの大都市とは異質な賑わいである。世界資産に登録されているからだろうか、区画整理して開発したショッピングモールのような現代臭さは全く無く、昔からのしもた屋を改装して商いしているといった風情である。
宿泊したホテル
ホテルはニューヨーク、マンハッタンのタウンハウスほどの規模の建物を改造した10室乃至多くても50室程度と小規模で、レストラン施設を持つホテルはまず無い。しかしその数は道沿いに軒を並べるといって過言で無いほどである。イスタンブールではここを寝所とした。 言うまでもないが、トルコはイスラムの国である。敬虔なイスラム教徒は日に5回メッカに向かい祈る。最初の祈りは日の出前。寺院の尖塔(ミナレット)は祈りの時間を告げる。これをエザン(Pray Call)と言う。普通、寺院のミナレットは1基か2基だが、大寺院スルタンアフメットは6基、その塔の拡声器から明け方の静寂の中、庶民を祈りに誘う。明け方のエザンは異教徒にとっては止めることの出来ない目覚まし時計のアラームであって、10分もがなりたてるエザンに抗する術もなく、不承不承頭をかきながらベッドを離れる始末となるのである。未だ5時前であった。 ホテルの屋上に昇り、日の出を迎えた。マルマラ海の彼方、ほのかに茜に染まった空に、半島の山並がくっきりとその稜線を刻む。大小の船影はおぼろげで船灯を留めている。鴎は既に海から陸へそして海へと鳴きながら群れて旋回を続ける。丘のスルタンアフメットのドームとミナレットは朝日を受けて白く輝き始めた。清涼な風、静寂を裂く鴎の鳴き声、凪いだマルマラ海そしてジャミーの輝き。イスタンブールの朝に荘厳ささえ感じ、清清しさに満たされた。エザンの功徳であろうか。
住宅街
朝食までの時間潰しに外に出てみた。ホテル前の坂道を暫く下ると、街の様相が変わる。観光客向けの町並みが貧しげな住宅街に変わるのである。人影の無い路、歯抜け状態の石畳、ペンキの剥げた木造家屋、朽ちた廃屋、痩せ細った野良猫、オスマントルコ時代の崩れた城壁、電車の駆け抜ける硬質な金属音、確かに透き通った爽やかな朝には違いないが、街を被うような憂愁を何とはなしに感じるのである。イスタンブールの街に沁み付いているオスマン滅亡の残滓が、未だ払拭されきっていないのではなかろうか。(続)
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