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旧市街から新市街へ
バザールとイェニモスク(その1)
昼を少し周っていたので昼食を取ろうと、トランヴァイ(路面電車、Tramvay-Tramwayのトルコ訛り)のスルタンアフメット駅近くの数あるロカンタ(大衆食堂)の中の一軒に入り、写真付きメニュからトルコピザ(Pide)とドネル・ケバブ(Döner Kebabi)を注文した。ビールもついでにと声を掛けたが、ビールはないとの返事。トルコはイスラムの国ながら、酒類は手軽に手に入るのだが、生憎であった。ドネル・ケバブは肉を金属棒に円錐状に巻きつけ、それを回転させながら焼くトルコの代表的な料理の一つで、肉の味付けがレストランのノウハウのようである。また、ピザはイタリアと言うことになっているのだが、トルコのピザもなかなかで、地域によって生地が厚いもの薄いもの、トッピングにもいろいろあるようだ。思うに、インドのナンからギリシャのピタまで、ピザの生地と考えても不思議はない。パスタが中国から伝わったと言われるように、ピザもインド、中近東からギリシャにかけて昔から食べられていたのではないかと思うのである。 路に迷ったらその時はその時と決めて、取り敢えず、グランドバザールを目指し歩き始めた。グランドバザールはスルタンアフメットの西北にある。方向を定め、先ずはトランヴァイの走る路を右折し、次は左折と繰り返す内に小さなモスクに出た。地図をみるとマフムート・パシャ・ジャミーといい、グランドバザールは間近である。昼過ぎの祈りの時間らしい、あちこちの路地から小父さん達がモスクに集まってくる。近所の顔見知りが殆どなのだろう、挨拶やら四方山話が始まり、一頻りすると靴を脱いでモスクに入って行く。モスクの中を一寸覗いてみたが、場違いな異邦人が中に入ることは遠慮した。遠慮したというより、異教徒が図々しく中に入り込んで神聖な祈りの邪魔は出来ないと感じたのである。いずれにしても、日に五回もご近所さんが顔を合わせるのだから、モスクにはかなり濃厚な近所付き合いに支えられたコミュニティがあるに違いない。
グランドバザール
グランドバザールは文字通り大きな市場でスルタンアフメットからほぼ5~600mの距離にある。トルコの人達はカパル・チャルシュと呼んでいて、屋根付き市場を意味するらしい。面積は3万㎡を越えるという。10年ほど前の記録に店舗は3300余り、2008年版ガイドブックでは4400余りとある。ブラブラと歩いて判ったが、グランドバザールを出ても商店街は屋根のないうねうねとした坂道を下って、ガラタ橋のたもとのイェニ・ジャミーの裏まで続いていて切れ目がない。そしてエジプシャンバザールに繋がっている。最早二つの独立したバザールというより、両者が一体になって巨大な市場を形成していると見るべきであろう。近代的モールには、例えば、ハワイのアラモアナ・ショッピングセンターのように、両端にキーテナントの百貨店等を据え、その間の遊歩道に専門ショップが並ぶ設計が多いが、屋根のあるグランドバザール、エジプシャンバザールをキーテナントと考えると、その規模正に世界一のショッピングモールになるのではなからろうか。何しろ直線距離500メートルを越えるショッピング・コンプレックスなのである。
グランドバザールから
イェニ・ジャミーに至る商店街
グランドバザールはオスマンの初期に既にあったというから、その歴史と発展はオスマントルコと共にある。商業は遊牧民族たるオスマンの不得意分野、商業に秀でたユダヤ人、アルメニア人、ギリシャ人、ジェノア・ベネチア人に依存せざるを得なかった。彼らがバザールの中核をなしていたに違いない。一寸話がそれるが、中部アナトリア、カッパドキアにアボノスという小さな町がある。この町は陶器の産地として名が通っているが、そこの窯元の親父が、「うちの焼き物はグランドバザールに卸している」と自慢げに語っていた。「バザールの中核」と書いたが、こんな話を聞くと、トルコの商業・流通の中核と言う方が妥当なのかもしれない。ユダヤ人・アルメニア人の多くはトルコ共和国建国後トルコを去ったが、彼らが確立した制度やネットワークは未だに脈々と生きているのではないだろうか。(続)
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