|
メヴレヴィの旋舞(Whirling Dervishes)(その1)
ガイドブックはトルコの多岐に亘る音楽舞踊の中から観覧に値する一つに、メヴレヴィ教団の旋舞を挙げている。イスラム教のスフィズムと呼ばれる神秘主義教団の一つ、メヴレヴィ教団の修行僧はアラーと一つになるため旋舞を舞うとのことである。座禅を組んで無我の境地に入ることと似ているとも思える。ガラタ塔の近くの教団本部とスィルケジ駅の構内の催物ホールでその旋舞が披露されている。イスラムについて殆ど知識のない門外漢が、生半可なことを書くことに躊躇するが、スフィズムとかメヴレヴィについて、理解の栞として見聞きした程度に述べておきたい。
まさかイスラム教国の全てがテロを是認すると極端に理解するむきはないであろうが、昨今、イスラムのイメージは、アルカイーダや他の原理主義などによる無差別的なテロと結びつけられがちである。イスラムの人々にとっても不本意であろうと思う。 既に述べたとおり、トルコはイスラム教徒の国である。オスマン時代以来の東方正教会、アルメニア使徒教会、ユダヤ教、カトリック、プロテスタントはごく少数に留まり、人口の99%がイスラム教徒であるといわれている。イスラムの宗派別統計がないので明確には把握されていないが、その大半はスンニ派で、15~20%はアレヴィ派と推測されていている。スンニ、シイアを縦軸とすると、どうも横軸的にスフィズム、メヴレヴィが位置しているようだ。メヴレヴィはスフィズムの一教団であるから、先ずスフィズム(スフィズムを信仰する人をスフィと呼ぶ)に言及したい。スフィはウールの衣服を着る人々をスフ(アラビア語でウール)と呼んだことから始まったらしい。しかし、スフィが皆ウールまとっているわけでもない。また、サファがアラビア語で清浄を意味することから、心と魂の清浄な人々をスフィと呼んだとの説もある。イスラム教徒は皆神に至る途上にあって、死後または最後の審判が下った後、天国で神と共になると信じているが、スフィは生ある間でも、神の側にいたることが出来ると信じている。そのためには、自我を放棄し、神と一体化しなければならず、それは真実と自己を知ることを追究し達成されると考えている。イスラムの中でも最も内面的、神秘的、霊感的であって、モハメットに始まるイスラムの奥義は師から弟子へと伝えられてきたが、そのベースは直接的な個人経験に関わっているという。その意味では仏教の密教と共通するところがあるのではないだろうか。このような信仰を持つ人々は大多数がスンニ派に属しているが、スンニでなければならないという決まりはなく、宗派横断的であると理解できる。正直なところ、このような話はこれ以上手に負いかねる。興味のある方は、別途諸賢の著作をお読みになるようお勧めしたい。
メヴレヴィ教団は13世紀、モウラナ・ジャララデゥン・ルミの信奉者たちによって中部アナトリアのコンヤに設立された。ルミはコラサン地方(現在のアフガニスタン)に生まれた。当時、この地方は言語的にも文化的にもペルシャ圏にあり、ルミはすぐれたペルシャの詩人、音楽家、イスラム哲学者であった。ルミ一家はモンゴルの侵入に追われるように、ペルシャ、シリア、アラビアと居所を変え、最終的にアナトリアのコンヤに落ち着いた。ルミの詩や著作は、ペルシャ語圏のみならず、国や民族を超えてインドからトルコに及ぶ広範な地域に影響を与えている。彼の根本的思想はスフィやその他の神秘主義同様、本来人の内にあった「神もしくは愛(基本的根源)」をふたたび取り戻し、それと融合、統一する事を強く希求することにある。このルミの世界はスフィの世界に留まらず、ヒンドゥ、ユダヤ、キリスト教など全ての宗教にも通じ合うと考えられている。また、ルミはイスラムの言う「完全なる人(Perfected or completed human being)」と考えられている。つまり聖人と言うことなのであろう。彼は生涯を通じ、宗教や生い立ちの異なる全ての人が平和裏に協調して生存できること、内面の平和と幸福を達成し、敵対、憎悪を克服することを教えて生きたのである。
Whirling Dervishは文字通り旋舞する修行僧である。ルミは神と融合するために音楽、詩、舞踊を活用することが有用だと信じていて、それらを活用した旋舞は、勿論ルミが始めたのだが、それには次のような逸話がある。修行僧としてルミは各地を旅していた。ある時、鍛冶屋の前を通り掛かると、鉄を打つ、トッテンカン、トッテンカンという音が聞こえた。規則正しいリズムが快く、知らぬ間に、手を広げ回りながら踊っていた。鍛冶屋の弟子は得体の知れない坊主が店先で奇妙な踊りを始めたのを観て、親方にそう告げると親方は奥から出てきて、その踊りにただならぬものを感じて、「舞が終わるまで鍛冶音を止めるでない」と弟子に命じた。これが最初の旋舞だと言われている。(続)
財団法人日航財団のホームページに掲載されている個々の情報の著作権は、特に記載のない限り、すべて当財団に帰属し、日本国の著作権法及び国際条約による著作権保護の対象となっています。当財団ホームページの内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為を除き、当財団の許可なく引用、転載、複製等はお断りします。なお、引用等を行う場合には、適宜出所を明記してください。当財団ホームページの内容の全部または一部について、日航財団に無断で改編を行うことはできません。
〒140-0002 東京都品川区東品川2-4-11 JALビルディング 財団法人 日航財団
Copyright©2008 JAL FOUNDATION. Al Rights Reserved
|