日航財団ツーリズム 研修生の見た日本の観光地 > 浅草・谷根千・六本木

日本政府はビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の下、”外国人旅行者訪日促進運動”を行っています。
数値目標として2010年までに1,000万人の訪日外国人を得ることです。
日航財団は日本政府が重点市場として指定した地域12カ国の内、7カ国から毎年夏に大学生をJALスカラシップとしてを受け入れる一方、3カ国から大学生の財団での企業研修を1年単位で受け入れております。又、政府の観光促進運動に呼応しつつ、ツーリズム研究の一環として、これら研修生の目を通して「日本の観光資源」を調査、紹介しています。


 第7回は、2日間の日程で、東京観光の新旧の代表である六本木と浅草、そして 人気の高い下町、通称、谷根千(谷中、根津、千駄木)をめぐりました。
今回のコースは、インターンシップ(企業研修)で日航財団が迎えた玉川大学2年生塩井理香さん、笠谷奈津子さんが外国人向け東京のおすすめコースとして企画。
日本人学生ご推奨の場所は、中国の高さん(Miss Gao TingTing北京外国語大学4年生)、韓国の朴さん(Miss Park  SunHee 梨花女子大学4年生)の眼に、どのように写ったでしょうか。玉川大学生のレポート(インターンシップ学生による調査・レポート)と併せて、ご一読戴ければ、幸いです。


■ 実施日 2008年8月20日、27日
■ ルート 20日  日の出桟橋 - 浅草 - 谷根千
27日  国立新美術館 - 東京ミッドタウン - 六本木ヒルズ


浅草・谷根千・六本木の旅

北京外国語大学 高 ていてい

浅草・谷根千(谷中・根津・千駄木)

 日本の下町情緒を味わうため、玉川大学の塩井さんと笠谷さんがガイドしてくれた。
日の出ふ頭から出発する水上バスに乗船し、小さな旅が始まった。時刻は正午に近く、日差しはまぶしくなってきた。船尾の手すりに寄りかかって掌を額に当てて陰を作りながら眺めると、両岸をつないでいるレインボーブリッジが遠ざかっていく。水上バスはぐんぐんスピードを上げ、頭の上を跨った橋が一本一本移っていく。川の多い東京には橋はかけがえのない存在だが、浅草まで40分の道のりで眺めた13本の橋は同じ形をしたものは一つもなく面白みを感じた。昔は繁栄していたと思われる両岸は、高層ビルの森に占領されていて、江戸風情は少しも感じられなくなっている。残念は残念だが、これはすばらしい現代の都市景観なのだ。
心が癒されるはずの綺麗な水辺の風景も都市化で汚染されている川に掏りかえられているのは残念だが、環境改善に力を注いでいるこれからの東京へ期待が高まる。

 

 寒いお正月のとき、新年を祝うためにしか花火を打ち上げた事のない私は、真夏の夜に開催され盛況だった隅田川花火大会をおもいうかべていたが、視野にはいったアサヒビールの泡の巨大彫刻が浅草に入ったぞと宣告してくれた。

 浅草寺に来たのは何回目か忘れたが、飽きることはない。雷門をくぐり、仲見世商店街に入ると、江戸情緒が身を包んでくれる。店の人が大声で客を呼び込んだりはしないが、店頭に並んでいる浴衣、扇子、仮面、日本刀に目を惹かれ、観光客は立ち止ってしまう。人形焼やあげ饅頭を食べながら散策している外国人観光客も目にする。

新宿御苑

 商店街を通り抜け、立派な都内最古の寺院――浅草寺が目の前に現れた。本堂前にある大きな鼎(かなえ)を囲み、多数の人が線香の煙を頭にかけながら「頭がよくなりますように」と祈っていた。私も祈りの必要を感じて、さっそくその中の一員となった。 妙なことに、日本の神社でよく見られる手水舎も設けられている上に、神社でお祈りするときと同じ方法で日本人が合掌し、目を閉じて願い事を胸の中でしている。これは日本のお寺でしか見られない風景ではないだろうか。お寺や神社は厳格な儀式は次第に忘れられ、実用化されてきて、単に人々が幸せへの憧れを神様にお願いする場所に変わったのかもしれない。西洋人にとっては浅草はとてもインパクトの強い観光地とおもわれるが、中国も古代の仏教を重んじる時代にお寺が多く建てられ、今も多数が観光スポットとなっている。見た目に両国のお寺はさほど変わりはないが、それぞれの環境による影響のもとで、真義も形も各自の特色も持つようになったと思う。われわれアジアの観光客にとっては「わぁお」と叫ぶ名所ではないかもしれないが、「うん、なるほど!」と頷くような異文化を体験できるスポットではないだろうか。

 浅草寺を出て、4人一行は東京名物、もんじゃ焼きの店へ向かった。

 もんじゃ焼きは焼くときに鉄板に材料で字を書いて楽しんだことで「文字焼き」から転じたというが、真顔で材料をこねって焼いている笠谷さんを見て、なぜか子供の時の砂遊びが思い出された。美味かった。

 日がやや沈んで、私たちは浅草ほど華やかで賑やかではないが、下町として東京の人に知られている谷根千へ向かった。 所狭しと前世紀の子供に親しまれたお菓子、おもちゃが詰められている駄菓子屋と煎餅屋、そして金太郎飴の店などを訪れた。一番印象深かったのは、飴細工の店だった。店主は想像していたおじいちゃんではなく、青年だったのでちょっとびっくりした。「ポニョを作れるんですか?」と聞いたら、あっという間に生き生きとしたお腹がまん丸のポニョができ上がり。「トトロは?」と聞いたら、あっという間、生き生きとしたお腹がまん丸のトトロができあがり。思わず拍手したくなった。

一握りの飴の塊、指十本、色をつけるペン、これだけで小さな芸術品が人の前に現れる。一見簡単そうだが、その難しさが想像できる。北京の王府井にも飴を材料として動物などを作る人がいるが、手で握るのではなく、口で吹くのだ。町人文化の一つとして、親しまれている、このような文化を大事にし守る人がいるからこそ、私たちが美の芸術を楽しめる。彼らには感謝の気持ちで一杯だ。 下町見学はここで終点となり、谷根千を後にした。短かい調査だったが、自分には誇りを持って外国の友達に見せられる中国の伝統文化の一芸が何かあるのか、と自身に問い かけた。文化を守れるのは作る人と見る人。両方になれるようにがんばろうと思う。

六本木

 東京の下町と対照的に、今、最先端エリアとして、人々が注目を寄せている、六本木に足を運んだ。まず最初に、東京ミッドタウンサントリー美術館、六本木ヒルズ森美術館と並び称される、国立新美術館にやってきた。展示されていたのは、ウィーン美術史美術館所蔵の静物画。17世紀のオランダのチューリップ、市場、果実、楽器を対象に「黙した生命」が描かれている。穏やかな曲線が流れる現代的で独創的なデザインの建物の中で、国境を越え、文化の壁を越えて、ヨーロッパやアジアなどの芸術品が楽しめる。下町とはまったく違う落ち着いた荘重な雰囲気だ。東京の人々の精神生活を豊かにするには、国立新美術館は大きな役割を果たしているとおもう。

 国立新美術館を出て、ミッドタウンへと向かう。ミッドタウンは思っていたより若者に好まれる雰囲気だった。フードコードには各国の料理が並んでいる。中華の店から故郷の刀削麺のにおいが漂ってきた。とてもたまらない。ここでお昼を解決しようと、四人はフードコードに入った。周りにも外国人がいた。見た目からみれば、明らかに観光客ではなく、働いている人だ。耳に英語がときどき飛び込んでくる。ニュースで見たが、東京にいる外国人は近年かなり増えているそうだ。違う肌色の人が各国の料理があるフードコードで食事をしている。この光景を東京を知らない人に見せて、ここどこ?と聞いたら、日本だと答える人はいるだろうか?実に面白い。

 食事を終え、ミッドタウンの店を回った。特異な形をした観賞用の西瓜、食べるにはもったいないと思うほど綺麗なケーキなど、どれもこれも手に入れたい。外国人にとって、ここはお金を使うことを楽しむ良いところだ。デートスポットとしてもなかなかいいと思う。ミッドタウン、また行こう。

 ミッドタウンから出て、伝説の六本木ヒルズへと向かう。建物のデザインも店のブランドも皆、高級だ。正直言って、日本という感じはしなかった。日本風の箸と小物の店や着物の店など日本の色を帯びたお店は外国人にとっておもしろいかもしれない。森タワーには展望台があるらしいが、素敵な東京の夜景を一望するのは東京の旅に疲れた心身を癒すことになるのだろう。今回のツーリズムの研究調査を通じて、東京の古今を体験させてもらい、とても楽しかった。二つの顔を持ったこの世界のトップに立っている都市はこれからも世界各国の観光客を招き、魅了することだろう。楽しみだ。


以上

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日本を感じる

梨花女子大学 朴 宣姫

浅草・谷根千(谷中・根津・千駄木)

 誰でも東京に来たら一回は必ず行ってみる浅草。私は個人的に浅草にもう10回ぐらい行った事があるけれど、行くたびに新しく感じられる事がある浅草の魅力におぼれている。そして今回はいつもとはちょっと違うルートで浅草から下町の谷根千までめぐり、また違う東京に出会う事ができた。

 日の出桟橋から始まった浅草への旅は水上バスでゆっくりと東京の姿を見る事ができ、いつもの電車利用より楽しむ事ができた。浅草とお台場は今観光客に人気がある場所であり、二つのスポットを結んでいる’ヒミコ’と言う水上バスが運行されている。水上バスは隅田川を通って行くが、その間、なんと13本のそれぞれ違った素敵な橋の下を通って行く。また、川の周りには東京の高層ビルや有名な建物、一般住宅なども見えて、東京の雰囲気を十分感じる事ができる。ただ、乗船場の案内をわかりやすく表示し、乗船場自体をもう少しきれいにすると、今よりももっと多い観光客を呼べるのではないだろうか。

 水上バスで景色を楽しんでいるうちに、いつのまにか浅草に着く。船着場のすぐ前には浅草を代表する仲見世が観光客を待っている。韓国ではなかなか見難い、これだけ長い仲見世はいつも私の目を大きく開かせる。長さだけではなく、店で売っている物や食べ物はすごく日本らしくてお土産におすすめ。何度行っても行くたびに新しいものが目に入って困る時もある。これが浅草ならではの楽しみではないかと思う。

また、韓国にもお寺はたくさんあるけれど、やはり日本のお寺とは少し違い、お参りの方法も異なり、浅草寺では日本の文化をよく知る事ができる。しかし、これほどたくさんの外国人観光客が来ているので、少しは英語で日本のお寺の由来やお参りの方法、おみくじの仕方などの説明を書いて置くと、日本の文化をよりわかり易く理解できる観光スポットになれると思う。

 今回初めて行った谷根千は、本当に日本をそのままを感じたい観光客にぜひおすすめしたい所だ。浅草から百円巡りバスで30分ぐらい離れた場所で、静かな普通の日本の町だけれど、ときどき昔から残されている古い家などもあって、人が多い浅草とはまた違う雰囲気の日本を味わう事ができる。例えば昔ながらの駄菓子屋やセンベイ屋、飴細工屋、金太郎飴屋などがあって江戸時代から続いている日本を見る事が出来ておもしろい。その中でも飴細工屋では実演を見る事ができ、印象的だった。その店のご主人はもともとイタリアで料理の仕事をやっていたけれど、自分の国の文化をよりよく知りほかの国の人にも伝えたいと言う気持ちが強くなり、日本に戻って飴細工を始めたと言う。彼が飴で作る色々な人形は、まさに今すぐに動きだしそうで、彼の手先に息を吹きかけている。

 残念なのは、確かに谷根千は静かな町でモダンな東京のイメージとは違う雰囲気が感じられて良いけれど、東京の新しい観光スポットにするには少し物足りないかなと言う事だ。なぜなら観光スポットになるためには、まずいろいろ見る所がたくさんないと短期間で来ている観光客にとっては時間の無駄になりやすい。もし日本に住んでいたり、長期間来ていたりするのであれば気軽に来られるかも知れない。

 一つ浅草近辺一日観光のモデルプランを立ててみたい。銀座と浅草を見た後、夜、水上バスでお台場に行くプランをおすすめしたい。東京はロンドンの次にファッションリーダーとして、世界の多くの人々の関心を受けているので、そういう意味で、銀座はショッピングにぜひおすすめしたい所だ。さらに銀座から浅草までは行きやすく、ショッピングを終えて、浅草で日本の仲見世とお寺文化を楽しむと良いと思う。夜になるとお台場の夜景がきれいなので、浅草発の水上バスで夜景を見ながらお台場まで来て、海岸でのんびりすると、いい一日を過ごす事ができる。ただ、現在、水上バスが19時ぐらいまでしか運行されていないので、東京の夜景を多くの観光客に見てもらうには、水上バスの運行時間をもう少し長くすることを提案したい。

六本木

 浅草から戻ってきてから一週間後、今度は現代的な日本を感じるために六本木に行った。 六本木は、本当に今の日本をよくわかる事ができる場所だった。高層ビルや、有名なホテルなどが多くてすごくモダンな感じだった。

最初に行った所は新美術館。ちょうどウィーン美術展をやっていて、オーストリアから来た70点の作品を観覧する事ができた。個人的に絵を見るのが好きで、韓国でも美術館によく行っていたので、今回の美術館の旅はすごく良かった。新美術館は上野の国立美術館と比べて新しくできた美術館なので明るくてきれいだ。その建物も現代的なデザインで、なかなか見られない素敵な建築物だ。そして、六本木ヒルズやミッドタウンからも歩いてすぐなので訪ね易い場所だと思う。晴れた日には美術館の周りを散策してもおもしろい。ぜひおすすめしたいスポットだ。

 新美術館を出て五分ぐらい歩くと、空を突くような高いビルが見えてくる。それが去年新しく建てられたミッドタウン。ミッドタウンには色々なショップとおいしいレストランが沢山入っていた。若い女性だと誰でも憧れそうなきれいなケーキは見るだけでも幸せになる。私たちは、そこの地下一階にあるフードコートで昼ご飯を食べる事にした。そこには色々な国の食べ物があるので、和食が苦手な外国人でも自分が好きな種類を選んで心配なく食べられる。

イタリアのパスタも日本で食べると少し違う感じがするので、日本のパスタはいい思い出になるかも知れない。 ミッドタウンからもう少し足を伸ばすと六本木ヒルズに着く。まず目に入ってくるのは多くの外国人たち。なぜなら六本木あたりには外資系の会社が多く、ランチタイムになると外国人社員が沢山出てくる。東京で国際的な雰囲気が感じられるところだ。六本木ヒルズはミッドタウンと似ていて、高級レストランやカフェーがある。そして今回は行かなかったが水族館と展望台もあるので、家族連れや東京の夜景を見たい観光客にも大人気である。しかし、韓国のガイドブックによると六本木はショッピングにおすすめと書いてあるが、すごく高い高級ブランドがほとんどで、一般の人には少し無理があるだろう。

 新美術館を始め、ミッドタウンや六本木ヒルズは現代的な東京を感じるのにはぴったりだと思う。少し余裕を持って昼間にゆったりと美術品を鑑賞しながら美味しい食事をして、おしゃれなカフェーできれいなケーキを食べたりすると、少し贅沢な東京での一日を過ごす事ができると思う。

 韓国と日本は似ている事がたくさんありながら、また違う事も多い。その違いを感じるために韓国から日本への観光客は毎年増えている。この頃は、新宿、原宿の様な東京の有名なところだけではなく東京の下町もかなり人気がある。これが今の時代の若者たちの間でトレンドとなっている。そのために、日本は何よりも世界の色々な所からの観光客を迎える準備を続ける事が大事だ。新しい日本の姿だけではなく、残されている昔の日本の姿もよくリニューアルしてもっと日本らしい日本を世界に見せるべきだとおもう。


以上

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