JAL財団 外国人学生に対する研修 > 研修論文2017



 

(研修論文)

台湾のベジタリアン事情

2017.8.29
台灣 國立政治大學 陳伊璘 



  この半年間の研修の中で、アジアとオセアニアの学生が参加したスカラシッププログラムの海外学生たちの中に、宗教のために食べないものがある人もいれば、アレルギーの関係で食べられないものがある人もいたので、日本のベジタリアン向けのレストランに注目し始めた。それで、私が感じたのは、日本のベジタリアン飲食が、台湾より充実してないことだった。これから、台湾のベジタリアン事情、主にベジタリアンの種類とベジタリアン向けの飲食店事情を紹介していきたい。

 まず、世界主要な国のベジタリアンの割合を示す統計調査について、実は、世界中にベジタリアンが何人いるのか、どの国に何%くらいいるのかという正式な統計はない。ただし、一般論として、「ベジタリアンの割合が高い国」というのは存在する。例えば、インドは三分の一以上の人口がベジタリアンで、台湾にも10人の一人にベジタリアンであるということを示す調査がある。国によって、ベジタリアンとなった理由はそれぞれだが、主に宗教、動物を大切にしたい気持ち、環境を守る思いや、健康のためなどの考えがあると思われる。

 次に、台湾のベジタリアン種類について詳しく説明していきたい。

 ベジタリアンの種類はその基準は宗派や個人的に認識により異なる。まず、「全素」というものがある。これは植物性の食品しか食べない。第二に、「蛋素」というものがある。これは植物性の食品と卵(特に無精卵)だけを食べる。ちなみに、中国語の「蛋」は日本語の「卵」という意味だ。第三に、「奶素」というものがある。これは植物性の食品と乳製品だけを食べる。第四に、「蛋奶素」というものがある。これは植物性の食品と卵と乳製品だけを食べる。ちなみに、第一から第四まで全て「五葷」も食べない。最後に、「植物五辛素 」というものがある。植物性の食品しか食べないだが、「五葷」は食べてもいい。

 「五葷」は何かというと、味が強い野菜だと示す。ラッキョウ、ニラ、ニンニク、イトネギ、ネギなど味が強い五種類の野菜を食べない背景は、五行という思想にある。この世の中ではあらゆるものがお互いに生み出し合い、また滅ぼし合う性質がある。五行は、五つの臓器、そして人間が本来的に持っている五つの徳、また五つの罪にも対応している。実は五葷を好むというのは、五つの罪を犯す気持ちが高まると言われているので、修行をしている人は、食べない方がいいと考えられている。

 以上に説明したベジタリアンの種類以外に、日付によってお肉を食べない日がある人もいる。例えば、旧暦毎月の1日と15日にお肉を食べない人がいる。説によると、人間は朔月と満月の時に、不安や緊張する気持ちが高まるため、動物性食品を食べるとより不安定なると言われている。また、ベジタリアンとは言えないが、農業をやっている人で牛肉だけを食べないことに決めている人もいる。なぜかというと、昔の時代に、牛は農作業をするには大事なパートナーとして見られていた。牛のことを仲間のような存在だと思うので、牛肉を食べない。今でもこの考えは、多くの人が影響を受けている。

 引き続き、台湾におけるベジタリアン向けの飲食店について説明する。

 台湾の街の中で「素食」の文字を見かけた事があるかもしれない。「素食」というのは、粗食ではなく、ベジタリアン向けの食事である。台湾では、「素食」と書いてある看板の店がよく見かけられる。一般の飲食店には素食メニューを用意している場合が多いのだ。外国人から見て不思議だと思うかもしれないが、肉や魚にそっくりに似た、「素肉」「素魚」もよくメニューで出ていて、幅広く食べられている。このような肉に似た料理は、植物性の食材で作られ、ベジタリアンの初心者のためのメニューだと言われている。

 台湾で「素食」レストランが多くなった背景には、台湾人の外食習慣があるのではないかと思われる。台湾の行政機関が行った調査によると、93%の台湾人は外食の習慣がある。そのうえ、一週間の中に4日間以上外食する人はこの中の34%を占めている。つまり、多い外食する人の中に、ベジタリアンもいると考えられる。台湾の飲食業界にとって、かなりのビジネスチャンスであり、「素食」のレストランと普通の飲食店と同様に競争が激しい。  

 「素食」レストランが多くなったもう一つ考えられる理由として、同じ家庭でも、ベジタリアンと、そうでない人が分かれていることもある。台湾では、一つの家族がベジタリアンになったら、他の家族全員がベジタリアンになる家庭もあるが、菜食の方と肉食の方の混在する家族もある。例えば、お父さんとお母さんは菜食、長男と妹は肉食、次男はそれ程厳しくない菜食主義と言った例は台湾ではごく一般的だ。台湾のベジタリアン、特に宗教の関係で菜食主義になった人は、自分自身が修行したいと決めたからベジタリアンになったのであって、自分以外の人、あるいは自分の子供も一緒にベジタリアンの生活にしようとあまり勧めようとしない。なので一つの家庭が一緒に外食しに行く時、同じ店に素食メニューと肉食メニューがある方が望ましいと言える。

 日本の場合は、台湾と比べてベジタリアンが少ないと思われる。しかし、ある調査によると、卵と牛乳にアレルギーがある人が少なからずいることがわかる。日本では、様々な食材にアレルギーが出る可能性がある人向けの取り組みをしている。一番わかりやすいのが、パン屋さんの中で並んでいる一つ一つのパンの前に、代表的なアレルギー特定原料情報を表示してあることだろう。台湾の飲食店には、基本的に「全素」、「蛋素」、「奶素」、や「蛋奶素」などの表示が付いているが、日本と同じくほとんどの食材が書いているのがあまりない。このように示すと、食べ物の中に何か入っているのかがわかることができ、台湾の飲食店にも見習うべきだと思う。

  日本では2020年東京オリンピックに向けて、多くの観光客が来ると予想し、内閣府が「ベジランチ」のメニューを実験的に提供している。現状では、台湾のベジタリアン飲食店と比べると、まだまだ不足しているが、今も世界には菜食主義が溢れているし、世界中で日本を旅行するのが好きだと言う外国人も多いと言われているから、これから日本の街ではどんどんベジタリアン飲食店が多くなるだろう。



以上






★ プレゼンテーション風景

   




★ プレゼンテーション資料

      


▲page TOP