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新大気観測プロジェクトでは、2種類の大気観測装置<ASE>と<CME>が新規に開発されました。
1. 自動大気サンプリング装置 Automatic Air Sampling Equipment (ASE)
航空機が飛行する経路上のあらかじめ設定された地点の空気を12本の容器(フラスコ)に採取する装置で、出発地を離陸後、サンプリングを行い、目的地(当面成田空港)に到着後機体から取り外されて、つくばの国立環境研究所に輸送されます。 研究所では、採取した空気の詳細な分析が行なわれます。
ASE は従来のボーイング747在来型機に搭載されていたものと基本的な構造部分は同じですが、各所に改善を加えるとともに、航空機搭載機器間を結ぶデータバス*から、緯度、経度、高度などの情報を取り込み、任意の正確な位置でのサンプリングを可能にしました。
ASE は2機のボーイング 747-400型機に搭載され、月に2回の観測が予定されています。
* ARINC 429データバス : 航空機に搭載される機器間で飛行情報などをやり取りするためのシリアルデータバス。
2. 手動大気サンプリング装置 Manual Air Sampling Equipment (MSE) :従来より国内線にて使用
手動大気サンプリング装置は、キャビン内に装置を持込み、手動ポンプを使用して、再循環前のエアコンの空気を吸収し、金属容器内に加圧充填することにより、大気を採取します。
大気のサンプリングは、豪州ー日本間で緯度別に実施され、CO2濃度をはじめ、CH4 濃度、N2O濃度、SF6濃度、CO濃度、H2濃度、CO2の安定同位対比の測定を行い、それぞれの緯度における濃度分析を行います。
MSEの特徴は、ほぼ全機種に対応して、大気を採取できることがメリットとなっています。
* 詳しくは、CONTRAIL-MSE装置、及び主なパーツの写真を参照ください。
3. CO2 濃度連続測定装置 Continuous CO2 Measuring Equipment (CME)
大気に含まれる CO2 の濃度を連続的に計測する装置で、計測した CO2 濃度データは、CME 内のメモリに記録されます。 CME は、約1〜2ヵ月毎の定期整備のときに機体から取り外され、成田にあるジャムコ社に搬送後、記録されたデータがダウンロードされ、国立環境研究所に送られます。 CME も ASE と同様、データバスから緯度、経度、高度などの情報を取り込み、取り込まれた情報は、CMEの制御に使用されるほかに、計測した CO2 の濃度などとともに記録され、データ解析に使用されます。
CME は、ボーイング 747-400 型機2機とボーイング 777 型機3機に搭載されるほか、JAXA が所有するビーチクラフト65試験飛行機にも搭載されます。
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ASE は下記のサブシステムから構成されています。
@ 採取大気を保存するフラスコ (ASE-1 と ASE-2 で計12本)
A 採取した大気を順次、各フラスコに供給するためのシステム
B 装置全体の作動を制御するための制御システム
C 機体の情報を測器に取り込むためのインターフェイス
また、ASE の上流には、採取大気 (航空機側のエアコンエア) を加圧するためのポンプが別に設置されています。
作動原理
ASE-1およびASE-2にはそれぞれ6本のフラスコが装備され、合計33個の電磁弁を組み合わせて作動させることで、空気の流れる経路をコントロールします。また、ASE-1には、配管内の圧力を計測する圧力センサ、および、キャビン内の周辺の気圧を計測する大気圧センサが取り付けられています。
ASE-1には、電磁弁およびポンプをコントロールするためのコンピュータが内蔵されています。このコンピュータにより、機体の緯度、経度、高度などの情報を取り込み、また、どのフライトで観測を行うか、どの地点の空気を採取したいか、などの観測するための条件を設定することで、採取したい地点の空気を、決められたフラスコに充填させることができます。
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ASE 配管系統図 |
機能
フラスコ内面および配管内は、採取した空気に影響を与えないよう、特殊な表面処理が施されています。 フラスコは、1.7リットルの容積があり、採取したい空気を最大約2.7気圧に加圧して、持ち帰ります。
ポンプの始動、停止、およびフラスコへの充填は、緯度、経度、あるいは高度をトリガーにして行うことができ、各々のフラスコへの充填が完了したときの、日付、時刻、緯度、経度、気圧高度、電波高度、外気温、ASE内温度、機内圧、および充填圧が記録されます。 この記録は、採取した気体を分析するときの参照データとして使用することができます。 また、温度異常、圧力異常、電流異常などの場合は、ASEの作動が停止するようプログラムされています。
機体に搭載後、何回目のフライトで観測を行うか、どの地点の空気を採取するかなどの設定は、ASE-1にあるRS-232Cポートに PC を接続して、変更することができます。
諸元
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ASE-1
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ASE-2
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ASE Pump
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サイズ (mm)
(幅x奥行きx高さ)
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215 x 430 x 530
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215 x 430 x 530
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241 x 118 x 250 |
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重量
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18kg
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16kg
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8kg |
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電源
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28VDC
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28VDC
(ASE-1経由供給)
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115VAC, 3Phase, 400Hz, |
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CME は下記のサブシステムから構成されています。
@ CO2 濃度の測定部 (NDIR : 非分散型赤外分析計)
A CO2 濃度較正のための、高濃度と低濃度の2本の標準ガスボトル
B 測定用大気、高濃度の標準ガス、低濃度の標準ガスの3者を順次切り替えて測定部に供給するためのシステム
C 環境圧力に関わらず、測定部の圧力と流量を一定に保つための圧力制御部と流量制御部
D 装置全体の作動を制御し、 CO2 濃度測定値や機体からの情報を記録するための制御・記憶システム
E 機体の情報を測器に取り込むためのインターフェイス
作動原理
CME は、 CO2 濃度を測定するための測定器 NDIR (Non-Dispersive InfraRed analyzer : 非分散型赤外分析計) 、流量を一定に保つためのマスフローコントローラ、圧力を一定に保つためのプレッシャコントローラ、計測結果を校正し、測定精度を高くするための2種類の標準ガス、CME をコントロールするためのデータロガ、測定データなどを蓄積するためのストレージモジュール、および気体の位置情報を取り込むための ARINCレシーバなどで構成されています。
空気取り入れ口から取り込まれた観測気体は、ポンプによって加圧される前段で、ドライアで水分 (H2O) が取り除かれます(CO2 と近い波長領域に赤外線の吸収特性があるため)。 その後観測気体は、電磁弁を介して、マスフローコントローラに入り、常に一定の流量の観測気体が NDIR に送られます。 NDIR の出口側には、プレッシャコントローラが取り付けられており、CME 内の圧力が一定に保たれます。 プレッシャコントローラを通った観測気体は装置内に開放されます。
CME には、正確な CO2 濃度測定を行うための2種類の標準ガス(厳密に CO2 濃度が分かっている空気) が装備されています。 外気から導かれた観測大気の CO2 濃度計測と、2種類の標準ガスの CO2 濃度計測を交互に繰り返します。
CO2 濃度を計測する NDIR は CO2 が特有の波長の赤外線を吸収する性質を利用しているものです。
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CME 配管系統図 |
機能
計測した CO2 濃度は、その時の日付、時刻、CME を通る気体の流量と圧力、機内圧力、緯度、経度、風向、風速、気圧高度、および外気温度などとともにストレージモジュールに記録されます。 計測した観測気体の CO2 濃度は、交互に計測する標準ガスの CO2 濃度と比較することで、高い精度で CO2 濃度を決定することができます。 記録されたデータは、CME にある RS-323C ポートにPCを接続して読み出すことができます。
CME は ARINC429 データバスから取り込んだ対地速度、電波高度、気圧高度などの情報を組み合わせてコントロールされており、定期整備で取り下されるまでの1〜2ヶ月間、機体の離陸時から着陸まで、設定された高度以上で連続して測定を行います。
諸元
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CME
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サイズ (mm)
(幅x奥行きx高さ)
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264 x 330 x 570
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重量
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25kg
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電源
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28VDC
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