日本政府はビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の名の下に、外国人旅行者訪日促進運動を行っています。 
数字目標として2010年まで1,000万人の訪日外人を得ることです。因みにCY2006年では約733万人の実績を数えています。

日航財団は日本政府が重点市場として指定した地域12カ国中、毎年7カ国から夏季留学生を受け入れ、同3カ国より大学生の企業研修生を1年単位で受け入れています。
当財団として上記促進運動に呼応しつつ、ツーリズム研究の一環として、これら留学生あるいは研修生の目を通して「日本の観光資源」を調査、紹介しています。
(隅田 信、坂本 憲昭)

第二回目として、満開の桜が咲く上野公園を訪れた時の報告です。

公園の桜と花見に来た日本人の姿を中韓豪3名((Ms. Areum Yoon , Ms. Ying Sun, Mr. Gregory Brown)の研修生の眼にどう写ったでしょうか? 

日時:2007年3月30日(金)12:30-19:30 (実質所要時間7時間)
天候:晴れ
場所:上野恩賜公園
ルート: 
上野駅 → アメ横 (徒歩)
アメ横 → 上野公園 (徒歩)


上野公園巡り(日本人と桜)
ユン・アルム

桜の開花が始まり、東京の街が花見のシーズンを迎えた。この時期を日本で過ごすのは初めてだったので、日本の誰もが美しいという桜の満開がとても楽しみだった。以下は3月30日(金)午後,上野公園を巡った印象です。

アメ横
12時半過ぎに上野駅に着いた私達はまずアメ横に向かった。アメ横は韓国の市場と似ていた。勢い良いお兄さんの掛声や、様々な品揃えなどから市場独特の雰囲気が伝わってきた。置いてある品も安くて気軽に買えるものが多かった。たまに韓国の観光客の姿も見かけられたが、渋谷みたいな繁華街とは違って若い人だけではなく40~50代の人もいた。素敵なビルが一杯並んでいる日本も、そして生活感溢れるちょっとホッとするようなスポットが残っている日本も両方楽しんでみるのもいいと思った。

上野公園
アメ横を回った後、花見で有名な上野公園に向かった。公園の入り口から広がる桜は満開を迎えていてどれもキレイだった。雲ひとつ無い晴天と桜のピンクが一層その美しさを増していた。韓国にも桜はあるけれど、それ以外の花も一杯咲いているので日本みたいに「花見=桜」というイメージは無かった。

しかし話には聞いていたが、こんなに人が多いとは思いもしなかった。桜は咲いている時期が限られているし、短いので、日本人は誰よりも花見を大切にしているのかも知れないとは思っていたが、これほどとは本当に予想外だった。一番印象的だったのも桜の美しさではなく、この集まっている人達だった。桜は韓国にもあるので花見をするために日本まで来る気はしないと思うけれど、花見をする日本人を見るために来るのは面白いかもしれないと思った。

桜の木がずらっと並んでいる両側は、青いシートを敷いて、そこで花見の準備をする人でいっぱいだった。日本と韓国でワールドカップが行われた2002年、韓国戦の応援のために集まった人の数より多いかもしれないと思った。シートとシートの間はほとんど隙間もなく、その上には食べ物やお酒が既に準備されていた。昼間だったのに、酔っ払って寝転がっている人もいた。もはや花見というより人見の状態だった。しかしこのうるさい人ごみの中、嫌な表情をしている人はほとんどいなかった。みんなどこかとても楽しそうな顔だった。「静かで、人見知りで、街の人々の話し相手はほとんど携帯で…」というのが私の日本人に対するイメージだったので、花見はとても不思議な光景だった。人の少ない公園で桜を楽しみながら散歩をすることを想像していたので、この様子は意外だった。しかも私が訪れたのは昼間だったのでまだ盛り上がっていないものの、夜になるとカラオケ大会もするという話を上司から聞いたときは更に驚いた。これはぜひ見てみたいと思った。

さすが日本人と思ったことがあった。数え切れないほど多いシートはキレイに、ずれも無く並んでいた。そしてゴミ箱もいっぱい設けられていて周りはとてもキレイだった。日本人のこういう市民意識の高さは見習うべきところだといつも思っている。
公園にはいろいろな店も出ていた。たこ焼き、お好み焼き、中国や韓国の食べ物もあった。これらを見て回った後、近くの神社に行って、今回初めておみくじを引いた。一緒に行ったオーストラリアからの研修生、グレッグには時期外れだと言われたけれど、一回やってみたかったので、100円を出して引いてみた。結果は「吉」だった。書いてある内容も面白く、日本語が分かる外国人なら一回ぐらいやってみるのもいいと思った。

帰る頃にはもっと多くの人が上野公園を埋めていた。部屋に引きこもっているよりは外でみんなと騒いだほうがいいし、一年に一回ぐらいこういうイベントがあっても良い息抜きになるのではないかと思った。でも明らかに新入社員と見えるサラリーマンが昼間から、いや、朝から場所を取っている場面はやはり日本ならではの不思議で面白い光景だと思った。
以上


日本人と桜
ソン・エイ


北京の玉淵潭公園は、1972年田中角栄首相が中国を訪れた時に、桜を植樹した公園としてよく知られている。私の通っている大学はその公園の近くにあるが、一回だけ友人と行ったことがある。桜の下で、多少日本の雰囲気を感じたかったので、わざわざそこへ行った。でも花の咲く時期ではなかったので、その願いはかなわなかった。桜の花はきれいで、多くの人々に愛されているが、中国でなかなか生き生きしている桜が見られなかった。

春はまた来た。幸い、今年は日本で、咲いている桜を見られた。三月三十日(金)午後、研修生三人で上野公園付近のアメ横からスタートして、半日の桜見物をした。

アメヤ横丁:

アメ横はアメヤ横丁の略称である。インターネット(註1)で調べてみると、上野周辺の観光地として、ランキングの一位となっている
註1: http://navi.pupu.jp/cgi-bin/enqsite/c12/msgenq.cgi
なぜ、ここはこんなに人気があるのだろうか。散策を通して、それが分かるようになった。この横丁の由来は三つもある。第二次大戦後、旧満州からの引揚者等が米軍の物資を払い受け、安く売りたたく店が沢山集まったことから「アメヤ」の名となったこと、次いで、飴を販売する店が多数出店したことから「飴屋」となったこと、最後に米兵が小遣い稼ぎにこの地域に物資を持ち込んで店を開き、アメリカの製品が大量に出回ったことから「アメリカ+屋(店)」との三つの説である。(註2)
註2: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%A4%E6%A8%AA%E4%B8%81

実際に行って見たら、商品の数が多くて、魚介類や乾物、外国のスナック、衣類、雑貨、宝飾品などの店が業種ごとに集中している。特にオーストラリアのチョコレート――TimTamが安かった。一缶で500円だった。成田空港で実務の研修した時、一度買ったことがあって、でも、オーストラリアの特産だとは知らなかった。ただ、そのお菓子は口あたりが特別で、ちょっと高かったと思った。だから同行したオーストラリアからの研修生も本当に買い得だった」と話していた。串に刺した果物が一本100円で買えた。私達の食べた苺は旬で美味しかった。外国の名物もたくさんあった。口がおごっている人なら、そこに行ったほうがいいと思った。その日は平日だったが、観光客が多く、賑やかだった。日本に来てから5ヶ月、初めて市場みたいなところへ行って、道に漂っている食べ物の香りを嗅ぎながら、歩いてると、懐かしい感じがした。大学のある北京と故郷の天津もこのような市場の姿を見つけるのがだんだん難しくなってきたからだ。

上野公園:

アメ横近くの中華料理屋で昼ご飯を済ませた後、今回の目的地の上野公園に入った。実をいうと、午前中、大手町の経団連会館に行った折に、途中の大雨で、びしょびしょになって、寒さに襲われていた。  会館に入る前には、雨が上がっていたが、気分はなかなか良くならなかった。そして、そんな大風雨の中で、桜は大丈夫かな、今日の花見は上手くできるかなと心配して、上野の公園へ向かった。

でも、予想外に、お昼から晴れてきた。きれいなお日様が笑顔で現れた。春の陽を浴びると暖かく、そよ風が顔をなでると涼しく、不忍池のそばに植えてある桜は満開で、魯迅先生が描いたように遠目には、桜の花は緋色の雲と赤色の霧に似ている。こんな風景を見たら、朝の憂鬱な気分が吹き飛んでしまって、だんだんと心がうきうきしてきた。

外国語もたびたび耳に入って来た。外国の観光客も多くて、さすが日本で有数のお花見の場所だなと思った。花見しながら散歩する日本の人はもちろん多かった。鴨が池の中で、遊び戯れていて、風が吹いて水面に漣が立っていた。春の息吹をたっぷり味わってきた。微風で、桜の枝が軽く揺れ動いて、桜の花片が風に乗ってはらはらと舞散る。日本の代表的な桜である「染井吉野」が薄いピンクの色をつけていた。この色は純潔で、人々の心を奪うと同時に、人々の心を清めている。

青いビニールのシートを敷いて、家族、友人、或いは会社の人が木々の下に席を陣取っていた。早春の美景を楽しみながら、花宴を行い、話と笑いを交えながらますます興に乗り、寛いだ時間を過ごしていた。ここでは通勤時間の緊張さがぜんぜん感じられなくて、のんびりした感じだった。思わず、歩スピードも落として、この花祭りのテンポにあわせたい気がした。人の流れがひっきりなしで、桜の木に挟まれた大通りはいくら幅が広くても足りないような感じがした。足を止めて、桜の木を背景として写真を取ろうとしても、人の邪魔をしないように気を配らなければならなかった。会社が行うお花見なら、ニ三日前から、場所取りをすることもあるそうだ。上野公園は本当に賑やかだった。ある会社の社員がスピーチしていた。夜になると、カラオケする人もいるそうで、また見に行きたいと思った。いくら、見ても飽きない感じがする。桜を鑑賞する方法はいくつがあるようで、花見の醍醐味をもっともっと知りたい。この時期の日本は普段と違い、活発な一面を見せてくれた。商売の人も興を添えてきた。広告の旗を飾ったり、屋台を出したりする。お寺に詣でる人も少なくない。祭りの雰囲気が一層濃くなってきた。上野動物園の前の広場で、スコットランドのバグパイプを演奏する人、混声合唱の人もいた。日本は本当に外国の文化を上手く融合した国なのだと感心した。どこにも、春の生気が溢れている。

今回のお花見はお花を眺めだけではなくて、お花見をする日本の特有の風俗習慣も体験した。桜並木の下で、青いビニールシートを並べて敷いて、その上に座って、お酒を飲んで、花吹雪を肌で感じながら、爛漫な春を捕まえることができるのは、日本だけの風景だろう。今日のように、午後に天気が回復すると、桜を見て、不意に元気が出てきたような感じがする。だから、皆に好かれるのだろう。

日本人にとって、桜が特別で、日本の国花とされ、日本のシンボルとされてきたのは、もう一つ重要の原因があるのだ。一緒に咲き、一緒に落ち、それは日本人の団結一心の精神が桜の中に含まれている。華やかに咲いたときの美しさときれいに散りゆく時の潔さと壮烈さが、全体の民族が共有の精神の支えとなっているからだ。だからこそ、「大和の魂を聞こうと、朝日の下で山桜を見てご覧」の詩句もあるのだ。古から、「人生は短い」と慨嘆した詩人がすくなくないが、中国の人が恒久の輝きを求めることと違って、日本の人は一時のきらきらと輝かしさあれば、命を惜しまなく、後悔ないように頑張っていきたいというところの美しさに感動した。
以上



上野花見ツアー(日本人と桜)

グレゴリー・ブラウン

3月30日に日航財団での仕事の一環として東京の上野を訪問した。お昼過ぎに「アメ横」に行き、遅めの昼食の後に主目的地である上野恩賜公園に向かった。そこで桜を見物しながら、「日本人と桜」という今回のテーマを意識しながら、

アメ横

アメ横とは、かつてアメリカ横丁と呼ばれた。戦後アメリカ軍人の放出物を商売の材料にした商店街だと云われている。現在もその面影は残っており、オーストラリア人の観光客が気に入りそうな雰囲気が「アメ横」にはある。例えば、魚屋、洋服店、屋台といった、隣接するには相応しくない小店が、さも当然のように同じ場所にあるアジア独特の感じは新鮮で楽しかった。  また、店員の掛け声、真上に電車が走る振動、海産食品やケバッブ(肉類をローストして調理する中東の食品)の匂いが混じり合った活気のある町はオーストラリアには無い。このことからも、オーストラリア人の観光客にとってアメ横は魅力的だろう。品物の値段はとても安いのでびっくりした。ブランド品などに興味を示す人は関心が無いかもしれないが、ユニークなデザインの手作りアクセサリーが売っている店もあり、個性を生かしたい人やお土産を買いたい外国人観光客にもアメ横はお薦めである。

春の上野公園

上野恩賜公園にはアメ横を抜け、御徒町方面から入った。  最初に見えた光景が不忍池のそばに並ぶ桜の木々だった。ちょうど桜が満開の時期だったので、桜がまるで綿アメのように見えたという印象が強かった。このような美しい景色は人種、文化、国籍を問わず、誰でもみとれるのではないでしょうか。  不忍池の中にある弁天堂に渡る道には屋台が並んでいて、お祭り的な気分が味わえた。 屋台で売っているたこ焼き、焼きそばなどの言わば日本の「お祭りの食べ物」は、オーストラリアでこれらに相当するポップコーン、ポテトフライなどとはまったく違う。これらを試食するというのも観光客は楽しめるだろう。  不忍池の反対側から弁天堂と桜の絶景を見ながら食べたたこ焼きは最高だった。 しかし、屋台の食べ物は値段が高いと思う。このことは玉に瑕である。

公園の入り口内にある西郷隆盛象は写真で見て想像していたものよりも大きく、立派であった。  上野公園近辺は戊辰戦争中に戦場だったという事実も日本の歴史を学びたい観光客を引き付けるだろう。 東京国立博物館方面に歩くと、花見をしている人で混雑していた。  花見での場所取りの競争は話に聞いたことはあったが、実際に人がビニールシートを広げて会社などの同僚が来るのを朝から待つ光景を見たのは初めてだった。  オーストラリアにこのような習慣は無いからか、少し不思議に思えたが、歩きながら桜と人を見ているだけで楽しめた。また、訪問はしなかったが、上野公園内には博物館、動物園、美術館などがあるため、一日を過ごす観光スポットには打って付けの場所だ。

上野公園は夜になると昼間とは雰囲気そのものが違ってきた。  暗くなるにつれて、次第に人の数が増し、にぎやかになった。 提灯が点り、ライトアップされた桜もきれいだったが、少し人工的に見えたせいか、個人的には昼間見る桜のほうが好きだった。  提灯にはスポンサー会社の名前が書き込まれており、「日本はどこにでもCMがあるなぁ」と思った。 お酒を飲んだり、歌ったり、楽器を弾いたりして楽しそうにしている人で充満した上野公園は、「仕事に没頭している」というオーストラリアでの日本人のステレオタイプのイメージとは逆の面も日本人は持ち合わせていることを示してくれた。

日本人と桜 - 最後に一言:

オーストラリアの春は短い上、一度に目立って咲く花もこれといって無い。  冬から春に季節が変わり、暖かくなり、色とりどりの花が咲き、人々の機嫌までもがよくなるこの感覚を日本に住んで初めて実感した。 日本人にとって「桜」はこの「明るさ」を象徴するものではないのかと上野公園で花見をして悟ることができた。  それを純粋に見て楽しむ人と、「花より団子」的に飲むための口実に使う人と分かれているようだが、日本人にとって桜が大切なものだということにかわりは無い。  この日本人の文化的な習慣であるお花見は必ずオーストラリア人の観光客も楽しめるだろう。これからは友人・知人に日本に行く機会があるのならば、桜の季節に行くようにと奨めるつもりである。
以上

編集後記

いわゆる「お花見」は日本だけの習慣なのでしょうか。桜ばかりでなく、「お花見」「雪見」など自然を見て楽しみますが、他の国ではどんな風なのかと思いました。

寄り添ひて桜吹雪の通学路
ささやかに山の小径の花見かな (TN)

不忍池のほとりで、満開の桜を見たとき、研修生3人がいっせいに「わーきれい!」の歓声。 
外国の若者がこれほど桜に感動してくれるとは。その姿に感動しました。(NS)

研修生の報告書に「本居宣長」が出てくるとは思いませんでした。 触発され、記憶の隅にある歌人、俳人の桜を追いかけてみました。

世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし 在原業平 
昨日まで かけてたのみし 桜花 一夜の夢の 春の山風 藤原定家 
願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃 西行 
風さそふ 花よりもなほ 我はまた 春の名残を いかにとかせん 浅野内匠頭長矩 
花の雲 鐘は上野か 浅草か 松尾芭蕉

この辺迄です。(MS)