日本政府はビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の下、”外国人旅行者訪日促進運動”を行っています。  数値目標として2010年までに1,000万人の訪日外国人を得ることです。因みに2006年では733万人の実績を数えています。 日航財団は日本政府が重点市場として指定した地域12カ国の内、7カ国から毎年夏に大学生をJALスカラシップとしてを受け入れる一方、3カ国から大学生の財団での企業研修を1年単位で受け入れております。又 政府の観光促進運動に呼応しつつ、ツーリズム研究の一環として、これら研修生の目を通して「日本の観光資源」を調査、紹介しています。

第5回目の調査は、研修生のかねてよりの希望でもあった「築地市場」と「秋葉原電気街」を中心に回りました。
中韓豪の若者達の眼に生活に密着した街がどう写ったでしょうか? 5月に韓国に帰国したユンさんに代わり、キムさんが加わりました。
(隅田信、坂本憲昭) 

日時:2007年8月29日(木)終日
天候:晴れ
場所:築地、浅草、秋葉原
ルート:築地市場 → 浅草合羽橋 → 浅草寺 → 秋葉原)


外国人研修生プロフィール

 名前:ソン エイ
出身国:中国/天津
大学と学部名:北京外国語大学 日本語学部
滞日暦:10ヶ月
日本の印象:日本は住みやすいところで、日本人は勤勉で、世の中のものを大切にする民族です。
趣味:クラシック音楽鑑賞
将来の目標:日本語をいかして就職したいことです。
名前:グレゴリ-・ブラウン
出身国:オーストラリア/シドニー
大学:マッコリ-大学、日本語学部/法律学部
滞日暦:7ヶ月
日本の印象:西洋と東洋の文化が入り混じり、それをばねにして、独自の文化を作り上げた国。
東京は人が多く、まさに「眠らぬ大都市」である。
趣味:運動、読書、音楽鑑賞
将来の目標等:将来は日本語と英語を両方活用し、外交関係・国際交流などの分野の職に
つきたいと思っている。
名前:キム・ドンヒ
出身国:韓国/釜山
大学:梨花女子大学 英語英文科
滞日暦:2ヶ月
日本の印象:漢字がいっぱい。「適当に」という否定的ではない、便利な言葉がある。コンビニのパンも美味しい。
趣味:テコンド、読書、友達や家族に手紙を書くこと。
将来の目標:自分の名前で文を書くこと。今よりもっといい自分、いい娘、いい姉、いい友達になること。

築地、合羽橋、秋葉原

ソン・エイ

8月29日 朝8時、
研修生全員地下鉄日比谷線の築地駅出口に集合して、最初の目的地である築地中央卸売市場に向かった。

築地
市場に入る前に、車が頻繁に行き交う新大橋通りに沿って進むと、場外市場アーケードがあった。そこには乾物屋があり、並びの小さな料理店では朝ご飯を食べる人々がいた。この時間帯は通勤者が多く、少し離れたデパートとか普通のレストランはまだ営業してないのに、ここは全然違う風景だった。
市場に近づくと、水産市場特有のなま臭い匂いがした。近づけば近づくほど、匂いが強くなってきた。市場に入り、目に入ったのは縦横に走り回っているユニークな小型三輪車だった。スピードが速く、ぼーとしていたら、ぶつけられる可能性もあり、恐ろしかった。でも、この小型三輪車は市場の中で狭いところでも小回りが出来るし、この築地市場で運送の大きな役割を担っていた。ここで働く人達にとっては欠かせないもののようだ。後で調べてみると、この小型三輪車は「ターレ」と呼ぶそうだ。


市場の中に入って、私達は主に第5、6大通路あたりを回ってきた。大通路には、一箱一箱の水産物がずらりと置かれていた。店と店は隙間がなく並んでいて、新鮮な水産物が溢れている。扱われている商品は、値札や箱にアフリカ産や北海道産など書かれてあるので、海外からの輸入品や日本国内各地からここに集まっていることが分かった。マグロ、たこ、アワビ、金目鯛、貝などなど中国の市場では「貴重品」扱いされているものが多く、又一つ一つが大きくびっくりした。海産物が好きな私にとっては、見るだけでも楽しめた。質のいい商品だけがここに集まっている感じがした。

こんなに店が密集して、こんなに多くの品があると全部売れるかなという疑問が出て来る。店の人に聞いたら、最後まで売り切るそうだ。やはり商売はどこでも楽なことではないと思った。築地市場のことは以前聞いたことがあったが、想像したのと実際に来て見たのとはちょっと違った。私達が行ったその日にも、欧米の観光客が何人もいた。自分達が市場を回った時も、何回もここで働く人々を邪魔した気持ちになった。何故なら築地は観光のために作られたところではないのだ。庶民が働いている場所なのだ。ここで感じられたのは、ほかの観光地で見られない自然な日本人の生活だった。これからここを訪れる外国からの観光客もますます増えていくだろうと思った。

合羽橋
次の目的地へは、地下鉄築地駅から銀座乗換えで、浅草の一つ手前の田原町で降りた。近くの合羽橋通りの両側には、料理道具の店が多かった。特にケーキ作りの道具とかが多くて印象深かった。サンプルメニュー二軒の店に入った。店内にはレストランのショーウインドによく見かけるサンプルが溢れている。知らなければ自分が料理店に入ったかと勘違いしてしまっただろう。アイスクリームのサンプルの色あわせが食欲を誘って本物との違いが見分けられなかった。思わず手に取ったら、割と重かった。サンプルのキーホルダーは小さいから、お土産としては新鮮で、もらった人にきっと喜んでもらえるだろう。

秋葉原
ヨドバシカメラに始まり、ラジオ会館、電気部品街、アニメセンター、アニメート、ラオックスと回り、最後にもう一度ヨドバシカメラに寄った。
 秋葉原の電気製品は中国の人々によく知られている。私も来日8ヶ月、何度も来たことがある。確かに電気製品の天国だ。家庭用電気から、盗聴器等変わった製品まで幅広く扱われている。

ヨドバシカメラはチェーン店で、中国の「大型の電気商城」と似ている。店内照明が明るく嬉しかった。店内放送も日本語、英語、韓国語、中国語に分かれて、外国からのお客様への親切さが感じられた。ビルの中には、飲食店も揃っている。レストラン、カフェいろいろあった。化粧品も扱われていて、それは意外だった。値段については、後で回ったラジオ会館にある店や部品専門店ほど安くないような気がしたが、観光客にとっては、ここの方がわかりやすく便利だと感じた。ラジオ会館の中の店と部品専門店には、電気の部品が多かった。こだわりがあれば、気に入ったものを手ごろの値段で入手できるかも知れない。

秋葉原駅前で、ビラを配っているメード喫茶の従業員達が多く見られた。日本の特有の文化がそこにあるようだった。秋葉原には、アニメのキャラクターや漫画などを扱っている店も多く、「オタク」と言われる人々もよく見られると聞いた。今回、残念ながらオタクらしい人は見えなかった。自分にはオタクと普通の人の区別がつかないのかも知れない。でも、アニメ漫画に出て来るキャラクターの人形、グッズなどが陳列されていてうれしかった。アニメとかが好きな友達に紹介したいと思った。



築地市場、合羽橋、秋葉原

グレゴリー・ブラウン

8月29日に東京都内の築地市場、合羽橋、秋葉原を訪問した。これらの訪問場所は東京の有名な観光地として知られている。オーストラリア人観光客にとってこの場所等が本当に興味深く、面白い観光地かどうかを検討した。

築地市場
築地には午前8時過ぎに訪問した。競りはすでに終わって、その様子は見られなかったが、市場の雰囲気は十分に味わえた。
市場から徒歩10分の地下鉄築地駅で降りたのだが、すでに魚の臭いがしていたのに驚いた。町を歩いていると長靴を穿いている人や魚市場特有の三輪自動車を見かけた。市場に近づくにつれて次第に道が混雑し、市場内では何度か轢かれそうになり、まるで一般人が知らない独自の交通ルールがあるように思えた。

市場内は電球が多く、早朝暗いうちから商売が行われていることが良く分かった。卸売業者の店の間を歩いて、想像を超える量の海産食品を見ることができた。食品の量があまりにも多かったので、余った物は捨てるのだろうと思ってしまったが、店の人に尋ねたところ、店で売れないものは競りで買ってこないので捨てる事は無いと言われ感心した。
売っている海産食品が世界の至る場所から毎日築地に来ているという事実を、梱包を解いた箱や値札に付いている産地名から知ることができた。ノルウェーの鮭、アフリカの蛸、オーストラリアのタスマニアのマグロなど見かけた。又市場内では魚などを切る道具で電動のこぎりから斧まで使われていることが印象的だった。

オーストラリア内ではシドニーのフィッシュ・マーケットなどが魚市場では代表的だが、そこに比べると築地市場は活気があり、伝統的な雰囲気があった。オーストラリア人観光客はこの一味違う雰囲気を楽しめると思う。又、市場内で食べた寿司はとても美味しかったので、この「本場の寿司」を食べたいオーストラリア人観光客は少なくはないと思う。

合羽橋
合羽橋は日本では道具街として知られているらしいが、オーストラリア人観光客にはあまり知られていないと思う。合羽橋は確かに刃物や器を売っている店が多く、値段も悪くないと思った。一番珍しいと思ったのは食品のサンプルを専門的に扱っている店だった。このサンプルは実に出来がよく、本物と間違えても不思議ではない。「芸術」と言っても良いこのような食品サンプルはオーストラリアには無いので、オーストラリア人観光客は喜ぶだろう。だが、買うとなると値段が高いのが玉に瑕だ。合羽橋は調理などに興味がある観光客、又はお土産を買いたい人には良い場所かもしれない。だが、東京に滞在する時間が限られている観光客は他の代表的な観光地を訪問する方が有効的だと思う。

秋葉原
オーストラリアでは日本は電気製品の製造が盛んで、それを安く売っている国としても知られている。このため、東京に来る外国人観光客の大半は電気町である秋葉原を訪れる。又 秋葉原は日本内では「マニアの町」、又は「オタクの町」としても知られているので今回は電気製品とともに秋葉原にいる人々を観察することにした。
最初に訪れた店はヨドバシカメラだった。ここは一般の人が必要とする電気製品がすべてそろっていて、レストランの階まであった。色々な商品を一度に見ることができて便利だったが、秋葉原駅周辺の小さな店に比べると製品の値段が少し高いような気がした。

次に古くから駅の隣にあるラジオ会館ビルに行った。ここで秋葉原がオタクの町と言われる理由が分かった。プラモやフィギュアなどが沢山あり、驚くほどの値段で売られていた。ビル内にはオタクらしき20代・30代の男性も大勢いた。
駅前の献血コーナーの裏にある部品専門店もとても興味深かった。ここを見学すると秋葉原はもともと電気製品の卸売業者が集まっていた場所だったということが分かる。見たことも聞いたことも無いような部品が丁寧にサイズ別に並べてあり、一般の客は観光や好奇心のみでこれらの店を訪れるのだろうと思った。1.5メートル四方ほどの小さな店もあり、商売になっているのが不思議だった。

秋葉原はアニメ・漫画関連の店も多い。日本のアニメ情報発信基地「東京アニメセンター」とアニメ専門店7階建ての「アニメート」に行った。アニメのDVDや漫画本以外にはそれらに関連するグッズが置いてあり、オタク系の人だけではなく一般の人も多かった。オーストラリアでもアニメはとても人気があり、日本の文化の一部として有名である。このためこのような店は観光客にも人気があるだろう。
秋葉原は多様性があるとても楽しい町だと思う。マニア系の人向けの店もあれば、一般の客向けの店もあり、そのために色々な人が集まる。このようなユニークで電気製品、専門部品、アニメ・漫画がそろっている町はオーストラリア人観光客にも必ず好かれるだろう。東京で観光する場合には欠かせない場所だと思う。

最後に
今回の体験から、家族や知人が東京を訪れることがあれば築地市場、浅草、秋葉原を是非案内したいと思った。特に浅草と秋葉原はつくばエクスプレスでつながれているため、一日の観光コースに向いている。合羽橋は時間に余裕がある場合には観光しても良い場所だと思う。
                                     以上

築地、合羽橋、浅草寺、秋葉原

キム・ドンヒ

もし、貴方が外国にある期間住んでいるとします。そこへ貴方の母国の友達が遊びに来るとします。その時、貴方はその人を何所に連れて行きますか?友達はガイドブックに載っている場所はもちろんですが、そこに載っていない場所へも連れて行って欲しいと言うでしょう。でも、私は来日してまだ2ヶ月であり、東京の有名な観光地すら十分回っていないのです。先ずは知られている場所を巡りながら、その周辺でガイドブックに出ていない面白い場所を探せたらと思っています。2007年8月29日、私は財団の他の研修生と一緒に、築地市場、浅草合羽橋、浅草寺、秋葉原に行って来ました。以下はその感想です。

築地
ここは、世界で一番たくさん魚を食べると言われている日本人の評判にふさわしく、巨大な市場でした。鯨のお腹に入ったピノキオのような気がしました。築地の仕事が終わりかけた朝8時に、縦にしたドラム缶のようなものを前に付けた小さい三輪トラックが、観光客は邪魔と言わんばかりに走っていました。これを上手く避けながら辺りを見回すと、人の腕と同じ大きさの蛸の足、斧で切られているマグロ、今まで見たことない魚や海産物が目に入りました。これら生気が溢れる築地の風景は興味深いものでした。本やテレビから知る日本人のイメージはなかなか自分のことを話さず、静かでルールを守る感じでしたが、築地は知られていない日本人の活気を感じさせてくれました。その日仕入れた魚は売れ残りがないように、無理やりにでも売り切ってしまうという仲買の人の笑い話は、市場の活気に加え、素朴な笑いと人情まで感じられました。今まで抱いていた日本の一つのイメージに新しい面が加えられた瞬間だと言えます。それに今回行った場内市場の築地にあるお寿司屋さんは味もよく量もあり、とても素晴らしいものでした。もし水曜日のレディスデーに行くなら女性はもっと楽しい気持ちになるでしょう。

合羽橋
私がまだ日本に来る前、日本語が全然出来ないのに日本を楽しく旅行した友達に聞きました。「食べ物はどう頼んだのですか」と。そうしたら友達は「料理とそっくりな見本や写真があるから、頼みたいのを指で差せばいいのよ」ときっぱり答えてくれました。築地の次に行ったのは、何処に行っても料理の見本が必ずある理由を知りたがっていた友達に案内したい浅草合羽橋道具街です。もしかしてこの店の奥に、レストランがあるかもしれないと思わせるぐらい、本物と同じ形をしている料理サンプルを売っている店がありました。まるで小さい料理博物館みたいに、日本で売られる料理を全部集めているようでした。でも一番心を引かれたのはそのサンプルで作られたいろんな記念品でした。お好み焼きの形をした携帯電話ストラップからラーメンのキーホルダー、寿司時計(数字がお寿司になっている時計)まで家族や友達を感動させられるプレゼントが沢山ありました。日本から故国に帰る前、立ち寄ったらいいかもと思いました。でも値段がちょっと高かったです。心残りを感じながら、向かったところは合羽橋から歩いて五分の浅草寺でした。

浅草寺
東京観光の代表的スポットである浅草は、立ち並んでいるお店が観光客の心をうきうきさせるには十分魅力的な場所でした。あげ煎餅が美味しく焼かれるにおい、目を楽しませる人形焼き、繊細な響きの風鈴、浅草寺までせいぜい数百メートルぐらいの通りを歩きながら、まるで日本のすべてを感じられるような気がしました。五円玉を投げ入れて両手を合わせ、目を閉じると、日本料理を和食という日本人の平和ってこんな感じかなとも思いました。でもその平和も一瞬。子供たちの笑い声で我に返り、すぐ団子のにおいに引かれて露店まで走ってしまいました。ちょっと恥ずかしい。

秋葉原:
最後の目的地は電気製品の天国、秋葉原でした。イヤホーンだけでも一角を占めるヨドバシ・マルチメディア館のような電気製品の百貨店から、どこに使われるか見当もできないような部品を扱うパーツ専門店まであるのが秋葉原のイメージでした。でも秋葉原の真価は日常の電気製品を扱うビルの中にもありました。日本のオタク文化の中心地に相応しく数ミリから2メートル近いフィギュアがあるのです。子供のおもちゃにしようとしているのでしょうか?それらを買いに来た人達の目はとても真剣で、その姿を見ると非常に価値があるだろうと思ってしまう程でした。世界を制覇した日本のアニメの底力は、作品の内容やスキルのみならず、秋葉原のアニメ商品を買うお客さんにもあるっていうことを気づきました。

さあ、ここまでの紹介で、友達は関心をもってくれたでしょうか?楽しい観光のイメージが出来たでしょうか?自分の好みの場所だけではなく、その国の今の文化を見せることは確かに難しいと思います。それは自国民にも観光客にも難しいと思います。 でも、今回行った築地や秋葉原、浅草そして合羽橋は、滞日2ヶ月の私ですら日本の断面を見せるに相応しい場所であると思いました。
以上