雅叙園・雛人形見学

2010年3月8日
沈 美玲


 ずっと以前から日本人は祭り好きな民族だと聞いていた。しかし、日本に来て、改めて実感できた。歴史、文化、自然などあらゆる方面において、神様に対する感謝の気持ちや生活に関する願いなどを込め、一年中各地でいろいろなお祭りが行われている。


 その中でも、私が一番親しみを持っているのが3月3日の雛祭りである。なぜかというと、中学校の時、雛祭りが近づいてくると先生はいつも雛人形を飾ってくれたからである。中学校に入学して初めての学級開放日に、日本語クラスの女子生徒全員で浴衣を着て、踊りながら「嬉しい雛祭り」の歌を歌った。


あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓(ふえたいこ)
今日はたのしい 雛祭り…


 嬉しいことに、まもなく雛祭りという2月の末、日航財団から雛人形を見学する貴重な機会をいただいた。300年の歳月を経たさまざまなお雛様を一気に観覧し、その素晴らしさを満喫できた。


 飾ったのは、先生がわざわざ日本から買ってきてくださった雛人形で、お内裏雛の布製の縫い包みであった。とてもシンプルなものだったが、私たち日本語初心者にとっては、すごく新鮮なものであり、それをきっかけに何段もある華やかな雛人形への思いは一層深まったものだ。


 今回やってきたのは東京都目黒区の「雅叙園」という長い歴史を持つ宴会場である。そこの旧三号館「百段階段」と呼ばれている文化財にもなっている建物の、実際は九十九段の長い階段に繋がる七つの部屋が雛人形の展覧会場だった。各部屋には日本画や彫刻など当時有名な芸術家による装飾がそのまま保存してあり、建物自体が日本の伝統的な美で溢れている。部屋の壁や天井には美人画、秋草や武蔵野図、花鳥風月など、部屋ごとにそれぞれ異なるテーマで描かれ、ぜんぜん違う雰囲気が漂っている。雛人形も各部屋に飾られ、雛の歴史や種類、人形の小道具、地域別の収蔵品などが説明されていた。自分が持っていた雛人形のイメージは七段飾りで、お内裏様や三人官女、五人囃子、そして牛車や箪笥などの小道具をそれぞれ違う段に飾られたものだった。それが一般的だろうと思っていたが、実際に見てみると人形をミニチュアの御殿の中に飾ったり、蝶の舞をする官女や百歳雛を飾ったりして、必ずしも同じではないことにとても驚いた。


 お雛様の種類が多いのは、作られた時代によって新たな形式や好みが人形作りに取り入れられたからのようだ。初期のシンプルな紙雛は、その後の人形師たちの工夫によって変化していく。やや正式な寛永雛、贅を尽くした元禄雛、そして顔立ちや手足さえ細工された享保雛、そしてその後、現在一般的となっている有職雛へと進化している。顔や衣服、大きさ、そして立つか座るかの姿勢が人形の種類を区別するポイントだそうである。特に印象深かったのが傘福というちょっと変わった雛飾りだ。傘の下に、健康や豊かさなど、それぞれの意味合いの飾り物を下げて、子どもの節句を祝うのである。桃や猿っ子など伝統的なつるしはもちろん、鉢巻を巻いたタコや赤ちゃんなど、現代風の縫い包みもたくさんあって、すごくかわいかった。


 でも、私が一番好きなのはやはり、小さくて薄い紙雛である。色紙で体の形を折り、紙粘土を丸めて頭の所に張り付くだけで出来上がる。その多くは顔さえ描かれていなくて現在の華やかな雛人形とはとても比べられないが、今回、何年も前に作られ、今でも大事にされているその紙雛を見て、とても感動した。それほど豊かではなかった時代であっても、子供を愛し、喜ばせるようにいろいろ工夫していた人々の気持ちを非常に強く感じ取った。
美しい雛人形に囲まれ、とても和やかで楽しい二時間であった。


以上



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