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日本文化探訪:2泊3日の伊勢南紀めぐり

2010年6月4日
沈 美玲


 日本に来てから旅行に大きな関心を持つようになった私は、常日頃から旅行ガイドブックをよく見ていたが、沖縄の青い海や北海道のラベンダー畑など心惹かれるところも多いなか、一番目を奪われたのが日本人のふるさととも言われる伊勢神宮と夫婦を象徴した夫婦岩であった。


 今般の研修の目的は日本歴史文化探訪である。まさに私が興味を持っていた伊勢神宮や紀伊半島の歴史的名所の見学が計画に入っていて、私はこの研修旅行で、日本の自然、歴史・文化を満喫し、大いに学ぶことができた。


 5月27日羽田を出発、大阪の伊丹空港で現地ガイドさんと合流した。今回の研修は、ほかのツアー参加者と行動をともにするので、とてもにぎやかな雰囲気で、いざ紀伊半島の旅へ。


 初日は伊丹空港から和歌山県の白浜を経由して一気に勝浦まで移動した。和歌山県は「木の国」と呼ばれるほど豊かな森に恵まれていて緑がいっぱいである。初夏の新緑に着替えた山々の眺めは本当に素晴らしかった。和歌山県はみかんでも有名だが、道路の両側にみかん畑がたくさんあるだけでなく、トンネルの飾りもみかん模様になっている。「道の駅」という道路利用者の休憩施設では名産であるみかんが直売されていて、今回の研修旅行の引率してくれた吉田さんから、さっそくお裾わけをいただき、味見した。さすが地元の新鮮な果物だけあって、甘くておいしかった。


 バスは伊丹空港からひた走ったが、白浜に着いて移動は一段落、観光地として有名な円月島をはじめ千畳敷や三段壁を見学した。一番印象に残ったのは、真中に、波による浸食によってできた大きな穴を持つ円月島であった。とても綺麗な丸形になっていて、一年のうち何日かはその穴のちょうど向こうに夕日が沈んでいく景色を観賞出来るらしい。


 2日目は熊野めぐりの旅で、最初にやってきたのが那智の滝だった。日本三大名瀑のひとつとして知られる名高い滝で、そのまっすぐ落ちてくる様に驚いた。飛瀧神社のご神体とされていて、流れる水には延命長寿の効果があるらしい。日本人は常に山や川、巨木などさまざまな自然物を神様として崇拝し、八百万という数多い神様を祀っている。今回の研修旅行を通してそれを実感し、日本の神道をより深く理解できたと思う。


 それからバスで移動し、青岸渡寺、熊野那智大社、熊野本宮大社という順番に参拝した。どちらもとても立派な建物であって、長い年月を経ており、歴史を感じた。遠い昔には参道が整備されていなかったため、信者たちは何日間もかかる旅に出て、山道すなわち私たちのいう「熊野古道」を登って参拝に来たらしい。本宮大社の近くにある熊野本宮館には「蟻の熊野詣」という当時大勢の祈願者が連なって歩いていた様子を再現した模型が設置されていた。平安時代の服装を着た若い女性や、農民の姿をした男性たちを模した人形が並び、いかにも混み合って渋滞していたであろう様子が復元されている。このように見ると、熊野は昔から人々を惹き付ける魅力があったらしい。今回、その熊野三大社の二つを見学できて、とても勉強になった。


 最終日は、以前から興味を持っていた伊勢神宮と夫婦岩の観光であった。まず見学したのが夫婦岩であった。海面から飛び出した二つの大きな石がまるで夫婦が寄り添っているように見えたので、このように名づけられたという。そういえば、日本では夫婦の木や男体山・女体山などといったように二つ揃っている自然物に性別を与え人間化する傾向がある。これは日本人が自然と調和し、親しい仲間としてともに生きていく生命観の表れではないかと考えている。


 その後はまたバスで移動し、伊勢神宮の外宮と内宮を見学した。ちょうど3年後の平成25年に20年ごとの式年遷宮が行われる予定で、境内の所々にその準備の様子が現れていた。なぜ20年ごとに遷宮するかと聞いてみると建物に使われている木材が20年を経つと傷つきやすくなってしまい、保てなくなるからということだった。そして昔の人たちは今と違って寿命がそれほど長くないので、技術を次世代に確実に受け継ぐために、およそ人生のひと区切りとなる20年ごとに建て替える必要があるのだと説明していただいた。今回の遷宮予算は550億円にも達するそうで、どれほど盛大なイベントなのか想像がつかない。


 今回の研修旅行を通して、歴史名所を見学したほか、温泉も体験し、素晴らしい思い出をたくさん作ることができた。この研修に参加することによって、経歴や年齢、出身地も異なる人々で、短い期間だが目的を同じくして時を過ごすのは、不思議な縁を感じた。これが一期一会というものなのか。いろいろな意味で、私の人生にとって掛け替えのない大切な経験となった研修であった。


以上



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