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ひな祭りの研修レポート

北京外国語大学3年生 韓 璐


あかりをつけましょ ぼんぼりに 

お花をあげましょ 桃の花

五人ばやしの 笛太鼓

今日はたのしい ひな祭り


 大学一年生の時、この歌とひな祭りについて、先生がいろいろと紹介してくれました。ちょうどこの歌を歌うことのできるクラスメートがいたので、私たちはそのクラスメートに歌ってもらいました。私は美しい歌声に引き込まれてしまい、いつかひな祭りが体験できればと思うようになり、ずっと興味を持っていました。ですから、ひな祭りの研修があると聞いた時は、わくわくして、とても楽しみにしていました。
今回の研修の内容は、目黒雅叙園と三井記念美術館に行き、開催されているひな祭りの展示を見学することでした。本レポートは、二つの展示を紹介しながら、子どもに関する日本と中国の祝日を比較します。


 2月28日、最初に見学しに行ったところは目黒雅叙園でした。今回の展示は「山形ひな紀行Ⅱ」という百段雛まつりを主とし、日本三大つるし飾りも同時開催されていました。
十畝の間、漁礁の間、草丘の間、静水の間、星光の間、清方の間、頂上の間と七つの展示室に分けられ、山形に伝えられている雛人形が展覧されていました。百段の階段を上がって、素敵なお雛様を見ながら、私は日本の歴史をさかのぼる気がしました。時代によって、人形の服装と位置、飾り方などはかなり異なり、たとえば、古い時代にはシンプルな人形が多かったが、時代が経つにつれて人形が次第に華やかになっていきました。また、男雛と女雛の並ぶ位置にも決まりごとはなく、今は、男雛が右、女雛が左に飾られているのがよく見られますが、展示されている人形の中には、逆に飾られる男雛と女雛がかなりありました。それは、昔の日本は「左」が上の位だったからです。人形のほか、同時開催されている日本三大つるし飾りもとても面白くて、すばらしかったです。いくつかの飾り物が糸でつながってかけられ、傘の先に幕をめぐらしていました。どの飾り物もかわいくて、その中に込められている「元気に成長できるよう」という親の子どもへの祈りの気持ちもちゃんと伝わってきました。


午後、三井記念美術館に行きました。そこでは三井家の所有しているお雛様を見物でき、また、特別展示として、「吉徳これくしょんの名品」も展示されていました。上品なお雛様はもちろん、さまざまな豪華な雛道具も堪能しました。丁寧に飾られているお雛様を見ながら、にっこりしているお雛様と向かい合って幸せそうな顔をしている三井家の夫人とお嬢さんの姿が目の前に浮かんできました。そして、一つ一つ工夫を凝らした雛道具に製作者の尊敬と祈願の心が伺われました。


 ひな祭りの起源について、諸説はありますが、中国の昔の風習にさかのぼるという説もあります。中国から伝わった習慣は時代とともに変わり、日本特有の文化になったといわれています。では、今、日本と中国では子どもに関して、どのような行事が行われているのでしょうか。
日本には五つの節句があります。その中で、3月3日の桃の節句、つまりひな祭りは、女の子の誕生と成長を祝うことで、お雛様を飾ります。それに対して、5月5日の端午の節句は、男の子の成長と立身出世を願ってお祝いをすることで、鎧と兜を飾って、こいのぼりを立てます。1948年に施行された祝日法により、5月5日は子どもの日とされましたので、そもそも男の子の成長を祝う節句でしたが、近年では、男女の別なく祝う日というイメージが次第に強くなってきています。
 その他、日本には「七五三」という行事も行われます。七五三とは、三歳の男女、五歳の男子、七歳の女子が11月15日にお宮参りをして、子どもの成長を祝う行事のことです。現在の七五三は型にこだわらず、一般的に、子どもたちは晴れ着をきて、千歳飴を持って、家族に連れられ、神社にお参りします。


 それに対して、中国では子どもの成長を祝うために、どのような行事が行われているのでしょうか。実は、現在の中国にひな祭りのような行事は見当たりません。しかし、社会主義国家が定めた「子どもの日」――国際児童節、つまり6月1日には子どもの健康と成長を祈って、各地でイベントを開催する習慣があります。子どもたちは両親に公園や遊園地に連れて行ってもらい、一緒に遊んだり、好きな料理を作ってもらったりします。プレゼントをもらうのも一般的です。  中国にひな祭りのような行事は見当たりませんが、「端午節」「七夕節」「重陽節」と女子にかかわる三つの伝統的な祝日があります。「端午節」は旧暦の五月五日に戦国時代の楚の詩人屈原を弔う祝日で、蓬をドアに挿したり、粽を食べたり、ボートレースをしたりします。「七夕節」は旧暦の七月七日で、夜、織女星と牽牛星が会うという伝説があり、かつては七夕の夜に女の子が庭に果物などを供え、織女星に針仕事の上達を願う風習がありました。「重陽節」は旧暦の九月九日の節で、この日、一家そろって山登りをします。昔は菊のお酒を飲んで、シュユという花の実を袋に入れて身に付け、あるいは山に登りながら、シュユを挿す習慣がありました。この三つの祝日にはそれぞれ異なった行事が行われていますが、三つとも女子の幸せを祈願する日とされているそうです。その中で、「七夕節」は「女児節」とも呼ばれ、女の子が運命の人と出会えるよう、あるいは付き合っている人とうまくいくようにと祈る日のことです。今、「七夕節」は中国のバレンタインデーとも言われていて、付き合っている恋人たちが一緒にお祝いすることが多くなってきました。「端午節」と「重陽節」はそもそも女子のための日ではないのですが、女子の健康と成長を祝う意味を兼ねるそうです。だが、三つの祝日はお祝いされている対象に違いがあるといわれています。「七夕節」はまだ結婚していない女の子しかお祝いしないが、逆に、「重陽節」は結婚している女子の日となります。「端午節」は両方とも祝うことができます。


 歴史が結びついたのに、今はこれほど違いが出てきた日本と中国。しかし、形がかなり異なっているとしても、心を込めて、祈ってお祝いするという純粋な気持ちが一致しているのではないでしょうか。お雛様にも、子どもの日のプレゼントにも、子どもへの親の愛が込められています。一番大切なのは、親が自分の気持ちを子どもにちゃんと伝えて、そして、子どもたちがその気持ちを受け取って、健康に成長することができるということだと思います。
  今回のひな祭りの研修を通して、本当に勉強になったと思います。日本の歴史と習慣の知識を学んだ上で、日本への理解を深めることができたことはもとより、中国の文化に対しても、改めて認識することができました。本当に大切な体験と貴重な思い出になり、お雛様の笑顔はきっと永遠に私の記憶の中に残っていくと思います。


以上



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