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千歳マラソンボランティア
~言葉の力~

孔鑫梓



 今年の初夏6月に、研修の一環として、北海道で開催される千歳JAL国際マラソンボランティア活動に参加した。小学校で先生をやるボランティアを始め、スポーツ大会など数多くの中国のボランティア活動に参加したことはあるが、日本のボランティア活動に参加した経験がない。財団の強力な支持のおかげで、日本の社会貢献活動を体験する貴重な機会をいただき、非常にうれしかった。


 今年の千歳マラソン大会は32回目で、6月3日に開催された。参加者は日本各地から集まり、ハーフマラソン(21.0975㎞)とフルマラソン(42.195㎞)を合わせ8500名にのぼっているそうだ。私が所属している東京地区のグループの中心メンバー、長年千歳マラソンボランティア活動に取り組んできた伊藤さんから今回のボランティア活動内容の説明をいただき、私たちグループはゴールに最も近い最後の給水場となっている第8給水所を担当することが分かった。 

 6月2日、マラソン大会開始の前日、第8給水所で働く同グループの他の東京地区のメンバーと一緒に夕飯を食べ、打ち合わせをした。彼らの中で、参加した経験のある人は数多くいる。私はみんなと楽しく話し合い、ボランティアのアドバイスなどをいただいた。

 大会当日、6月3日の朝7時頃、東京地区のグループメンバーと集合し、一緒にマラソン会場に移動した。そこで地元のグループメンバーと合流し、第8給水所に向かった。給水所に到着した後、みんなで簡単な自己紹介を行った。顔合わせの後、トラックから部品を取り卸し、仕分けして、準備活動を始めた。メンバー全員を四つのチームに分け、それぞれはスポーツドリンク、飲料水、スポンジ、フードコートのチームに所属した。私のチームはスポーツドリンクを担当した。主な仕事はスポーツドリンクをコップに注ぎ分け、道端に立ってランナーたちに渡すことだ。一本一本のスポーツドリンクを開け、大量のコップに注ぎ分けた。注ぎ分けたコップをテーブルの上に丁寧に並べると準備活動が一区切りついた。準備活動終了後、最終打ち合わせをし、簡単な食事をした。食後、各チームは各ポジションでスタンバイし、ハーフマラソンのトップランナーを待っていた。 


午前10時30分頃、ハーフマラソン開始からの一時間後、トップランナーを迎えた。トップランナーはスピートを落とさず、すごい勢いで目の前を通過した。スピードが速かったので、私が渡したドリンクはほとんどこぼれてしまった。初の試みは失敗したが、うまくランナーにコップを渡すコツがわかるようになった。その後、ハーフマラソンのランナーたちは次々と第8給水所を通過してきた。応援のかけ声をかけながら、スポーツドリンクのコップを手のひらに載せ、ランナーに渡していくうちに、やり方もだんだんうまくなってきた。特に、ランナーからの「ありがとう」という一言はとても暖かく、私を励ました。 


 午前12時40分頃、フルマラソンのトップランナーは通過してきた。とても速いスピートで通過していた姿は、40キロを走ってきた人のように見えなかった。勿論、トップランナーのような楽勝のランナーもいれば、疲れ切った顔でゆっくり歩いてきた素人のランナーもいた。「後2キロです。頑張ってください。」と大声でエールを送ると、ランナーたちが「ありがとう」とまた頑張って走り出した。私は彼らの姿を見るたびに、感動した。それで、声が枯れても、「もっと頑張らなくちゃ、もっとランナーたちに力をあげなくちゃ」と思い、大声で応援しつづけた。午後16時くらい、最後のランナーが無事に給水所を通過した。全員で大きな拍手をしながら、「がんばってください。あと一息です。」と励ました。最後のランナーの見送りが終り、ボランティア活動が円満に終了した。胸の中に感動や喜びの気持ちが溢れていた。


 今回のボランティア活動が教えてくれたのはなんといっても「言葉の力」の大切さだということだ。最後まで頑張り続けていたランナーたちを見た時も、「ありがとう」との返事をいただいた時も、感動で何回も涙を流したくなった。私たちボランティアが送ったエールはランナーの走り続ける力となり、そしてランナーからいただいた感謝の一言は私たちの頑張り続けていくパワーとなったのではないのか。日本での初体験のボランティア活動のおかげで、コミュニケーションの不可欠さを再認識できた。


 6月の北海道は肌寒かったが、ランナーたちの言葉は暖かいそよ風のように胸の中に吹き込んでいた。私は「ありがとう」と、ランナーたちに伝えたい。


以上




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