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第33回千歳JAL国際マラソン
研修レポート

張 洋



 6月1日朝早く飛行機に乗って、私は人生初の北海道に旅立った。初めての北海道といっても今回は観光客としてではなく、第33回千歳JAL国際マラソンを応援する一名のボランティアとして来ている。任務を背負っているため、楽しみにしていると同時に緊張感も感じていた。


 北海道に着いたのは朝10時ぐらいだった。私が所属している第八給水所のチーフの佐藤さんが迎えに来てくれて、千歳周辺を案内していただいた。6月にもかかわらずところどころに雪が残っていて、まさに「北の国」の雰囲気が漂っていた。その日の夜は同じ給水所のメンバーと一緒においしいお寿司を食べながら打ち合わせをした。第八給水所には何回も参加した経験者が多いため、久しぶりの再会でみんな大変盛り上がった。私にとって何よりもうれしかったのは以前財団で研修していた先輩たちに会えたこと。二人とも今は日本の会社に勤めていて、「以前参加したときは楽しかった」と言って、今回も貴重な休みを使って自ら応募したのだ。私はみなさんの話を聞きながら、旬の食材を楽しんで、次の日への期待もますます高まった。 


 6月2日、私たちボランティアは朝7時半に集合し、忙しくて充実な一日が始まった。第八給水所はスポーツドリンク、氷・水、フード、そしてスポンジの四つのグループから構成されている。四つのグループの担当はそれぞれ違うけれど、ランナーたちを応援する気持ちは同じだ。朝が早くて少し眠かったけれど、バリバリ働いている皆さんを見てボランティアとしての一体感を感じて、だんだん力が湧いてきた。


 今回私はフード担当。道路のそばに立ってレモンを渡したり、バナナやカロリーメイトを切ったり、パンを配ったりなど、仕事がたくさんある。四人グループだが私を含めて三人は初めてのフード担当。最初はなかなか要領を掴むことができなくて少々焦っていたが、慣れたあとみんなの連携で効率がずいぶんよくなった。山のように積んでいたバナナとカロリーメイトを食べやすい大きさに切って、トレーの上に置いた。様々なパンを取りやすいようにきれいに並べた。さらにエネルギー補充になる氷砂糖と塩も用意した。準備万全の私たちはランナーの通過を待っていた。試合開始約一時間後、トップランナーの姿が現れた。ランナーらしい筋肉付きや真剣な表情、雨に降られたようにびしょびしょの服が印象深かった。先頭ランナーたちは時間と競争しているため、食べ物にはほとんど手をつけなかった。私たちは精一杯の拍手で彼らを応援することしかできなかった。 


 ランナー通過の最初のピークを迎えたのは昼12時ごろだった。アマチュアの参加者たちが歯を食いしばって走っているのを見て、なんだか自分の筋肉も引き締まったように感じた。二十代や三十代のランナーも多かったが、六十代か七十代のランナーも続々と現れた。髪は真っ白だが体つきと精神力は若者にも負けていない年寄りたち、凄すぎて目を疑うぐらいだった。「レモンはいかがですか」、「バナナをどうぞ」、「あと少しだから頑張ってください」、私たちの応援に応えて、ランナーたちは苦しそうにしていながらも微笑んで「ありがとう」と言ってくれた。うれしくて涙が出そうだ。 


 12時から3時までランナーの通過が途絶えなかった。私たちボランティアもほとんど休む時間なくフードを用意したり配ったり、声が枯れるまで応援していた。バナナをいっぱい載せたトレーを何時間も持ち続け、肩が痛くなったが、誰一人も「疲れた」とは言っていなかった。日焼け対策をしたにもかかわらず、首や腕が焼けて真っ赤になったけれど、誰一人も気にしていなかった。「あと最後の2キロだよ!最後のひと踏ん張り」、私たちは叫び続けていた、喉がガラガラになるまで。そしてついに来た、最後のランナー。朝10時20分から六時間ぐらい走り続けた彼は苦しそうな表情ではなく、むしろ少し微笑んでいた。真剣な目つきでゴールの方を見つめ、一歩一歩しっかり踏みつけて私たちの前を通った。拍手と歓呼は止まらなかった。


 北海道の大地は広い。緑の木と白い雪に覆われている山々は遠い地平線まで延々と続く。北海道の夕日はきれい。何枚も写真を撮ったがその美しさの半分さえ伝えることはできなかった。北海道の料理はおいしい。口に入れた瞬間で溶ける旬の刺身とちょうどいい感じに脂身がついている羊肉は胃袋も心も癒してくれた。北海道の空気は冷たい。深呼吸するたびにアイスを食べたように体中に涼しさが広がっていく。しかし北海道の人々は熱い。朝5時から午後5時まで一刻も休まずに働いていたボランティアも、初夏の太陽に照らされ何時間をかけてマラソンを完走したランナーたちも、見えないところで毎回の大会を支えている当地の住民たちも。北海道での二日間は短かったが掛け替えのない温かい思い出になった。こんな北海道に出会えて、よかった。


 以 上

  



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