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ひな祭り研修レポート
北京外国語大學 周怡
2月28日、目黒雅叙園と三井記念美術館でひな祭り見学をしてきた。
目黒雅叙園では、毎年恒例となる「百段雛まつり」の展覧会が開催され、階段を上りながら展示を楽しむことができる。今年は九州の雛人形が大集合し、地域ごとの違いを味わうのも一つの醍醐味であった。佐賀県有田焼の磁器雛人形は全身真っ白で、とても目立った。長崎県古賀人形は外国風で、顔も衣装もポルトガール人に見える。歴史通り当時ポルトガールとの交流が盛んだったことがわかる。他にも箱に入っている雛人形「箱雛」や 紙で作ったうすき雛(大分県)があり、種類豊富で目の行先が分からなくなった。
しかし、「九州ひな紀行」とはいえ、一番印象深かったのが京都を舞台にした座敷雛(福岡)だった。「雅な京での花見」をテーマに、昔の風景を再現したものだった。5m×5mぐらいの場所に500体余りの雛人形が置かれていて、奥に紫宸殿が見え、その中に華やかな衣装を着ている内裏雛がいた。手前の方は、庶民のお花見の様子が見え、真ん中に「鴨川」が流れ、ちょうど二つの空間の境目となっていた。ほかにも金銀閣寺や飛雲閣が見えて、京都だということがわかるようになっている。
これらを目にした瞬間、私は思わず「すごい」と呟いた。従来の七段飾りのイメージと違って、別世界に入ったかのようだった。のちにはやはり「すごい」という普通の感想だけではこの素敵な景色には失礼だと思い、必死にほかの言葉を探そうとしたが、その気持ちをうまく伝える言葉が一つも浮かばないまま目黒雅叙園の見学を終了することになってしまった。(もっとも、わたしの日本語が未熟であることも要因のひとつではあるが。)
その後に向かった先は三井記念美術館だった。さすが三井家、受付のホールですでに豪華というイメージを受けた。館内に入ると、その雰囲気がさらに深まって、上品な振る舞いをしなければと思わせる空気だった。
展示で出されたお雛様は言うまでもなく淑やかで、庶民の私にはとても及ばないオーラを出していた。表情から服装まで、まさに完璧だといえるだろう。通常サイズよりも小さめの嫁入り道具が陳列され、思わず当時の職人の技に感心した。そして、ある意味ではこれも三井家の財力を示していると思った。なぜならそこまで小さくて細かく作るのに職人の巧みな技術が求められたからだ。そういう腕を持っている職人に依頼するわけだから、相当のお金が必要なのだろう。
こうして、半日に渡ったひな祭り研修を終えた。以上二つの展示にとどまらず、ひな祭りにまつわるイベントはきっとほかにも多く開催されているはずだ。こういった展示はただ外国の方に日本のひな祭り文化を紹介し、理解してもらう役割をしているだけではなく、もっと大事なメッセージが含まれていると思う。「自国の文化を忘れないでほしい。その美と雅を誇りに持ってほしい。」と伝えようとしているのではないか、私はそう感じた。
それに対して、少し残念に思ったのは、中国では、三月三日(旧暦)を祝う習慣がもうなくなったということだ。漢の時代に遡ると、当時は上巳節(じょうしせつ)と呼ばれ、禊(みそぎ)払いや魔除けを行う日だった。しかし今、まだこの習慣が残っている地域はわずかで、少数民族の風習になっている程度だ。私自身を例にすると、情けないことに、本当はひな祭りをきっかけに上巳節を初めて知ったのだ。
今回のひな祭り研修を通して、外国語を勉強しているうちに、他国の文化に触れながら、自分の国の文化を再認識する重要性を思い知らされた。今後もこのようなことを心掛けていきたいと思っている。
以上
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