第34回千歳マラソンボランティア レポート
北京外国語大學 周 怡
2014年5月31日午前、新千歳空港に到着した。迎えに来てくださったのはマラソン第8給水所チーフのかつおさんだ。第8給水所は、ゴールまで2キロぐらいのスポットで、今回私のボランティアする現場だ。この日は晴れで、駐車場に向かう途中、涼しい風で爽快な気分になった。
打ち合わせの時間まで余裕があったため、かつおさんは支笏湖に案内してくださった。晴天の青空は無論きれいだが、それよりも真っ青な湖のほうが先に目に沁みた。陽射しで水面には夥しい金色の星が浮いていて、手に染まるようなブルーは息をのむほど美しい。あの中に潜れたらどんなにいいだろうと水嫌いの私でさえ思った。英語ではブルーは憂鬱の意味もあるが、目の前の景色はそれを覆す開放感を味わわせてくれる。次の日に備えてずっとテンションが高まった気がした。
そして 6月1日、いよいよ第34回千歳JAL国際マラソンの本番がやってきた。私は同じく東京から来たボランティア仲間と一緒に第8給水所まで移動し、準備を始めた。この給水所では、スポーツドリンク、水、フード、スポンジの4つのグループに分かれて行動する。私はスポーツドリンクを担当することになった。最初は少し戸惑ったところもあったが、周りの行動を見たり、経験者に要領を教えてもらったりして、だんだん自分の力が発揮できるようになった。仕事自体は難しくないが、ランナーが絶え間なくやって来るので、ずっと神経を尖らせていた。特に、ランナーが来るピークの時にはテーブルに並べてあったコップが一気に減るので、スポーツドリンクの入ったコップを急いで補給しなければならない。素早くコップを並べる、やかんでスポーツドリンクを注ぐ、コップを各所に回す、など、みんなせわしく動き回っていた。私も気がついたらポジションが次から次へと変わっていた。
いろいろなポジションを担当しているなか、やはりなんといっても一番やりがいを感じたのは、ランナーと接する時だった。最初はコップを持った手を差し伸べても受け取りに来るランナーが少なかった。しかし、一人一人のランナーとアイコンタクトを取ってみたら、私のところに寄ってきてくれて手元のコップの「売れ行き」がよくなった。「あと2キロです!頑張って下さい!」という言葉を言い続けたが、2キロも走れない自分が次第に恥ずかしくなってきた。それでも笑顔でランナーに声をかけ続けた。こうでもしないと応援の気持ちが伝わらない気がしたからだ。
こんなに近くでマラソンに挑む方々を見るのが初めてだった。給水ポイントに来てもスピードを落とさず余裕に走っているランナーもいれば、疲れを知らないように歯を喰いしばって走っていくランナーがいた。また、トウモロコシやトマトのコスチュームを着ているランナーも見かけた。老若男女問わず、みなさんの情熱と真剣さが陽射しよりも熱く感じた。今まではマラソンに興味がなかったし、理解できないことも多かった。「いったい何のために走っているの。あんなに走ってどうするの。走ってなにが面白いの。」といつも思っていた。しかし、今回のボランティアを通して、すべてが分かったとは言えないが、マラソンの世界には一歩近づいた気がする。みんな走る目的は各々あるに違いない。自分に自信を持つため、だれかとの約束を守るため、自分を証明したいため、限界を知るため、生まれ変わるため…ゴールの後、恐らくランナーにしか分からない気持ちが湧いてくるのだろう。達成感?生きる喜び?いろいろな人に支えられてきたことへの感動?どれかは知らないが、その気持ちが堪らないから走り続けているのではないかと想像した。そんなランナーを見ているうちに、「私もいつかマラソンを走ろう」と初めて思った。もっと根性を鍛えようと思った。ボランティアとして応援している立場だったのに、逆にランナーに勇気づけられ、励まされた。こういう支え合う空間こそドラマを生み出すのだろう。
この日はいろいろな感情が湧き出た一日だった。コップを手渡した後ランナーに「ありがとう」と言われたことに感動したり、コップを並べていると年配の方に「速いね」と褒められたことが嬉しかったり、やかんが思った以上に重くて体力的にきつく思ったり、天気が良すぎて日焼けを心配したり…そして何よりも一番の収穫は、マラソンの面白さを思い知らされたことだった。疲れたというより、楽しかった。ランナーたちに学んだ「目標に向かって諦めない、挑戦し続ける精神」を今後に生かしたいと思う。
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