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CLM研修レポート(整備、KI)


北京外国語大學  周 怡



 4月25日と6月25日、私は羽田CLM事務局が定期的に開催する「まずやろう、HND」という研修活動に参加して、JALの整備場と国際ターミナルで整備とKI(空港 インターナショナルスタッフ)の仕事を見学した。この研修活動は毎回JALグループの各職場から参加社員が集まり、ある部門の仕事を見学し、それを通して部門間のコミュニーションを促進することを目的としている。普段、飛行機に乗ると、精々チェックインのスタッフや客室乗務員としか関わりがないので、私は裏で働いているスタッフ、例えば整備士がどんな仕事をしているのかについて、興味津々で研修に臨んだ。

整備について

 4月25日午前9時、羽田のM1ビルに集合。始めに簡単なオリエンテーションを受けた後、いよいよ現場に向かう。安全のためヘルメットと安全ベストを着用し、バスでターミナルの整備士の基地に移動。バスの移動中、頭上に次から次へと飛行機が離陸して行く。あまりにも距離が近かったので、バスを掠めたようなスリル感があり、わくわくした。
 基地に到達後、まず倉庫らしい場所を見学した。想像したよりもツールや部品がきれいに整理されている。ほとんど名も用途も知らないものばかりだったが、機種の表示もされ、細かく分類されている。これは正確でスピーディな作業に必要なのだろう。倉庫を出て、オフィスに入ると、入口に大きなスクリーンがあり、運航のスケジュールや飛行機の状態情報が映っている。整備士は必ずそれをチェックしてから、作業に入るという。その時、オフィスにいる整備士の人数は少なく、みんな飛行機の整備作業に出かけているようであったが、私たちも、着陸したばかりの飛行機を整備しているところを見学することになった。飛行機がスポットに入ってくる前に整備士たちが待機し、駐機場の異物などをチェックする。飛行機が滑り込み、エンジンが止まると、素早く点検作業に入る。飛行機の外を一周して、外観点検を行い、次にコックピットのシステムチェック、機長に故障有無の確認。さらに客室のシートや熱湯蛇口などの不具合個所の整備。時々、ひざ掛けの畳む作業も手伝っているとか。そして、大事な燃料補給も欠かさない。飛行機が到着して次の出発まで、限られた時間内で整備を済ませ、飛行機を良好な状態で飛ばす。一つ一つ、細かい故障を見逃さず、飛行機の安全運航をバックアップするため、常に神経を尖らせ、丁寧で注意深い作業をしなくてはならない。そして、整備士の判断で飛行の可否が決まるので、かなり重要な役割。私は現場で、そのような重要な役割を担う整備士の緊張感を感じた。
 運航整備を見学したあと、格納庫に向かい、工場整備を見学した。ちょうどJALの新シートの交換作業が行われていて、機内に入ったら、まるで家のリフォームの様子だった。ビジネスクラスのシートは、まだカバーが装着されておらず、内部のパーツや電気コードがはっきり見え、荷物ロッカーの扉と天井が全部取り外されていた。また、カーペットの貼り付け作業が行われており、最後尾のあと少しでまもなく終わるところだった。いつも乗っているのは「完成品」なので、このように出来上がっていない機内の一部を見たことは非常に貴重な経験で、面白かった。なお、カーペットだけではなく、シートの組み立ても業者さんに頼むのではなく、全部整備士がやっていると聞いて驚いた。万能ではないかと思った。
 午後のグループワークでは、小グループに分かれ、それぞれのグループに加わった整備士の方から職場の話を聞いた。私のグループの整備士の方は、現在、現場に出ておらず、サポーター役をしているそうだ。現場からの相談を受け、それに応じてマニュアルなどを調べて回答したり、整備方法の案を提示するなどが主な仕事とのこと。とても親切にマニュアルの例も見せてくれた。内容は英語で書いてあって、指示がとても細かい。いろいろなコンディション状況が想定され、それに応じた解決策が載っている。もちろん、マニュアル通りにやると無難で正確だが、時々、実際の状況とかみ合わないこともある。例えば、貨物室のレールに一箇所不具合があるという連絡があった。その状態をマニュアルに照らし合わせてみたら、辿り着いたのは修復が完了するまで貨物を載せられないという結論だった。しかし、お客さまの荷物はすでに預かっている。そのまま荷物を載せないでお客さまだけを目的地に送るか、修復まで飛行機を飛ばさないか。もしくはマニュアル通りではないけれど、不具合のあるところだけ避けて荷物を載せるという選択は可能か。その場合、飛行に大きな支障は出ないだろうか。このように、難解なシチュエーションに立たされたとき、安全面とサービス面の両方を気遣った上で、どうやって判断を下すか。ただ物の整備に集中するだけでは務まらない仕事だろう。

KI(空港 インターナショナルスタッフ)について

 6月25日午前9時、国際ターミナルの出発ロビーに集合。オリエンテーションでの説明によると、KIの仕事は主にカウンター、ゲート、オフィス、手荷物、ラウンジ、vipの六つのポジションに分けられているとのこと。普段、飛行機に乗るときはいつもカウンターを通っているが、オフィスの中は今回の見学で初めて見た。
 一見、何の変哲もなく、普通の会社のオフィスのように見えるが、コンピューターの画面を見て驚いた。それは、いつも見慣れているものではなく、青と緑が背景色となり、メージとしてはDOSに似た感じの画面で、何かの指令を入力すると、英語で書かれている情報が出てくる。それを使い、出発・到着便の状況把握ができるそうだ。他にも座席指定の変更やアップグレードのコントロール、乗継の調整などもできるそうだ。私はその画面をじっと見つめていたが、分からない英語の略称や専門用語ばかりだった。
 オフィスの次に、見学予定の搭乗口に向かった。まだ、搭乗アナウンスは流れておらず、私たちは素早くゲート内に一列に並んでスタンバイした。何のためかというと、搭乗開始後、ゲートの改札口を通ったお客さま一人一人に向けて、「いってらっしゃいませ」とお辞儀をするためである。10人以上の多人数だったので、びっくりしたお客さまもいたし、途中で、「君たち訓練生?」と尋ねてきたお客さまもいた。こうして見送りをしているだけなのに、すっかりスタッフになりきったつもりになった。そしてまもなくドアクローズの時間。まだ搭乗していないお客さまがいたので、一人のスタッフが便名・行き先を表示した看板を持って捜索に出た。空港はこれほど広いのに、どうやって探すのだろうと、スタッフの張り切った姿を見て思った。幸い、お客さまは搭乗に間に合った。私たちはゲートスタッフに連れられ、連絡通路に進み、コクピットに向かって手を振った。見送る気持ちも含まれるが、仕事のバトンタッチのサインにも見えた。
 その後は新しくオープンしたラウンジを見学。食事、仕事、休憩の場として、設備が揃っている。眺めもよく、飛行機の離陸・着陸が見える。利用中のお客さまに迷惑をかけるわけにはいかないので、ここは簡単に見学を終えた。
 昼食後はグループワークの時間。前半はクイズが出され、グループで点数を競った。税関のキャラクターの名前は何か。oneworldに加盟した航空会社をすべて答えること。羽田発ファーストクラス片道のチケットはいくらか。などなど。私は一問も分からなかったが、同じグループの方々が頑張った。みんな初対面なのに、クイズのおかげでかなり盛り上がった。後半はさらに4人グループになって、「対話」した。普通のおしゃべりではなく、あるテーマに沿って真剣に語るが、ディスカションのような激しいものではない。それぞれ今まで一番やりがいがあると思った仕事を絵に描いて、グループのメンバーに説明する。私はJAL財団の中国語講座の仕事を選んだ。他のメンバーは、ホームページのリニューアルとか、天気の影響で飛行機が20時間以上ディレーした時のお客さまの案内・引率とか、政府専用機の手続き全般を担当した話をしてくれた。まさに、部門を超えたコミュニケーションを行ったのである。

 このCLM研修には、整備と空港のほかにも、運航、客室、貨物、販売などでの研修機会があるが、一機の飛行機を飛ばすのに、さまざまな部門が携わっていることが分かる。KIでは、チェックインスタッフからゲートスタッフまで、一連の流れで繋げて行き、お客さまを飛行機まで案内する。それと並行して、飛行機の整備や貨物搭載作業も行われ、肝心な出発の準備を備える。出発準備が整ってはじめて、担当は運航の番に回る。部門内のグループワークはもちろん、ほかの部門への配慮も欠かせない。互いの関係は密接であり、短時間で次から次へと順調にバトンタッチしていくために、大規模且つ効率よいグループワークが求められる。一回のフライトに、これほどの人間が動いていることを実感した自分は初めて飛行機に乗ることに感動的な気持ちを抱いた。そして、グループワークの重要さと素晴らしさも改めて思い知った。今後もこのようなグループワークに参加し、その達成感を味わいたいと強く思った。

注:CLM コミュニケーション・リーダー・ミーティングの略称。  






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