JAL財団 外国人学生に対する研修




研修プログラムを通して見えた日本社会


台湾政治大学研修生  張雅筑


 半年ぐらいの間に色々な日本事情を経験したり、勉強したり、大変充実した生活を過ごしてきました。会社に通っている日々はよく「時間がない」を口癖にするサラリーマンたちを見ていて、あの忙しくて一生懸命に働いている姿に、心を打たれました。終戦を迎えた国々は、一時的に混乱に陥って厳しい状況下で復興を図ることが少なくないですが、戦後の日本は日本ならではの精神で復興に努めて、高度経済成長を実現しました。

 勿論、戦後の日本は一時的にバブル景気を迎えることになり、遂にバブル崩壊により、経済も低成長期に入ってしまうことがありました。そして、日本人が働き過ぎるという声もよく耳に入ります。しかし、今の日本は様々な困難を乗り超えて、アジア諸国の中で最も進歩的な国と看做されているのは否めない事実です。また、3.11東日本大震災が発生してすでに四年程が経って、日本の社会の雰囲気も大きく変わりました。日本は沢山の難関を潜り抜けて成長して来ました。必死に頑張って、「武士道精神」を持っている日本人には大変感動しました。

 今回は日本のJAL財団のスタッフとさせていただいて、たくさんの研修活動を通し、日本企業での様々な仕事も実体験させてもらい、日本社会に深く迫ることが出来たと思います。以下は幾つかの研修活動を挙げて、日本社会について感じたことを報告致します。



◆2015.3.3雛祭り研修を通して見えた日本の文化財保存
 二月の末に台湾を離れて、日本に来ました。初めての研修プログラムは三月三日の雛祭り研修でした。日本の伝統文化はいつも自然に対応し、季節に合わせる美意識を感じました。日本人は季節感を大切にし、具体的に言うと、和食は四季をもりこみ、上品な味に加えて、彩や器の趣にも気を配り、見る人を楽しませる工夫が施されているようです。つまり、雛まつりのため、応える和食も出て来るとのことです。また、美しい四季に応える行事は日本独自の文化と言えると思いました。この日本ならではの美しさは大勢の海外からの観光客を魅了しているようです。

 二月の東京はまだ寒い日々が続いていましたが、雛祭りの活動は一週間前から準備が始まったようです。今回の研修の目的地は目黒雅叙園でした。雅叙園は昭和初期に建てられ、中に、東京都指定有形文化財の「百段階段」がありますが、二月の下旬から「百段雛祭り」が行われていました。なお、展示されているお雛さまは、とても古く、江戸時代から地震や火災や戦争などの災害を潜り抜けて、残された珍品とのことですが、極端に乾燥に弱いため、保護を目的に会場内の暖房が控えられていました。

 日本は歴史文物を大切にするため、細かいところまで注意する心には本当に感動しました。歴史文物の保存は世界各国でも重要な課題となっており、様々な復元や再建することも進められているとのことです。現在、台湾の歴史文物の保存に関し、この研修を通して学んだ日本の歴史文物保存経験をもっと多くの人に伝えようと思いました。



◆ 2015.3.17~3.18マナーセミナー二日間コースに感じた日本人の「おもてなし」
 今回の研修プログラムの中で一番印象に残ったのはマナーセミナーでした。「おもてなし」という言葉は、「一期一会」におきかえられると思います。日本では「一期一会」は一度の出会いを大切にして、日本人の精神を表す言葉だと思いました。元々は茶道に由来する日本の諺ですが、茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることがないため、一生に一度の出会いであるということを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす心構えを意味するとのことですが、今は茶会のみならず、相手とこうして出会っているこの時間は、二度と巡っては来ないたった一度きりのものため、大切にし、有意義にいい思い出を作るように行動するとのことです。これは日本独特な文化だと思われています。

 マナーセミナーも「おもてなし」が大前提とされ、ビジネス社会の接待の現場での様々なルールやマナーもここから生まれてきたとのことです。マナーセミナーで学んだことは相手の立場と気持ちをよく考えて、応対することです。日本人は職場内外における人間関係構築のため、挨拶·表情·身だしなみ·言葉遣い·態度などがきちんと決められているようです。

 また、日本の職場には責任感が強い傾向にある方が多く見られました。私は本当に日本人ならではの武士道精神に感服しました。職場では日本人の仕事に対する愛情もよく感じられました。日本人の中に、「真剣にやっている人を笑う」という人もいますが、自分のやりたいことや理想とすることをはっきりさ せて頑張る人も沢山いると思います。

 また、日本の職場のマナーは簡潔で、礼儀正しいとよく言われていますが、日本と台湾のビジネスマナーは大きく異なっていると思います。日本のビジネスマナーでは、自己中心ではなくて、常に会社を意識しながら行動することが求められるとのことです。チームワークは会社の運営や仕事を進める上で、とても重要なことだと言われています。お互いの立場を考えて、相手に優しくするという集団意識は大事なことだと思われています。一方、台湾の職場の場合には、欧米や台湾自体の多元化文化からの影響を受け、一様ではありません。台湾の職場では、自己主張する人がよく見られます。

 素晴らしい日本文化を世界に発信すると同時に、世界から外国人を日本に呼び込む役割も担っているのは日本ならではの「おもてなし」だと思います。
 

◆ 2015.3.22~3.23東北応援プロジェクト研修で見た日本精神  
 私は震災前に東北地方へ行ったことがありますが、今回、被災地となってしまった場所へ足を運ぶ機会をいただけて本当に感謝しています。被災直後の様子を自分の目で見ることが出来ました。また、受災した現地へ行き、自分の五感を使って見聞きをすることで、被災された皆さんの苦しみも感じることができました。

 3.11東日本大震災発生してすでに4年程が経って、被災地の復興も進められ、新しい道や施設なども整備されてきました。被災地で一生懸命に地元の復興を目指して働いている人々の姿は日本人ならではの「日本精神」ではないですかと思いました。

 なお、日本人はよく「反省会」を行い、特に、ミスとか悪いこととかがある訳でなくても、反省会はよくあるとのことです。3.11東日本大震災は自然の災害ですが、日本人は反省の上、安全意識を高め、新な未来を構築しようと行動しています。これも、「日本精神」の一つだと思っています。




◆ 2015.4.2お花見見学-日本人の美意識  

 日本人は季節の移り変わりや自然の変化に敏感で、それを情緒的に捉えるという感性が海外にはなく、独特な日本人の美意識だと思います。日本人は四季を楽しむ心があって、古くから四季の移ろいや自然の美しさを感慨深く感じる民族のようです。俳句の中にも季語を入れて、四季を一つ一つ情緒的に捉える という感性を育てました。

 今年の3月23日に東京の桜の開花宣言が気象庁の職員によって発表されました。靖國神社にある標本木に5輪以上の花が咲いたと認められると開花と言うそうです。例年より3日早く開花となったようです。私は日本に来て初めて「開花宣言」のことを知って驚きました。日本でお花見を行くことは初めてではないですが、日本各地によって「開花宣言」があったのは初めてでした。桜の花は暖かさに誘われて一気に満開しました。千鳥ヶ淵の夜桜は思わずため息がでるほど綺麗でした。

 頭の上に被さる見事な染井吉野桜の天井とお堀の対岸にぼんやりと霞む巨大な桜の景色は、ずっと見ていても飽きません。この千鳥ヶ淵緑道は全長約700メートルだったようです。人の海に押されながらゆっくり進んでいると、結構たっぷりと夜桜見物が出来ました。夜空を見上げると、桜の花の隙間に月が見えました。半月を過ぎて満月手前の月と桜の取り合わせは風流でした。たまに、春の風が吹いてきて、風に舞う桜吹雪が靖国神社を染めました。千鳥ヶ淵の川沿いで、水面に映された白い夜桜は本当に綺麗でした。

 日本では、季節がはっきりしているので、日本人はその季節に応じて生活の中に自然を多く取り入れてきたとのことですが、これは日本人の自然観かもしれません。色々な形の花見見学を通し、日本人はどのように桜を愛しているのか少しだけに理解することが出来ました。日本人には、桜の花が満開になり、その直後に、散ってしまう瞬間が一番美しい時だと思われています。桜は日本人に一番なじみの深い花だそうです。けがれがなく、清らかな精神が伝わってくるとのこと。これは日本人の独特な「もののあわれ」の美意識ではないかと思いました。



以上






★ プレゼンテーション風景

   




★ プレゼンテーション資料

      

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