JAL財団 外国人学生に対する研修




ビジネスマナーセミナーレポート

台湾 国立政治大学 陳伊璘



 三月七日と三月八日の二日間、私はビジネスマナーセミナーを受講した。その二日間では、私以外に経歴のそれぞれ異なる五人の女性がこのセミナーに参加した。私と同い年にも関わらず、すでに二、三年間社会人として働いている方もいらっしゃり、彼女のしっかりとした態度を自分も見習いたいと思った。

 このビジネスマナーセミナーは全て実践演習だと思っていたが、実際には皆さんと一緒にマナーについて考えるという時間もあった。例えば三月七日のセミナー開始時に、企業におけるマナーの重要性について、皆さんと一緒にしばらく討論した。お客様に対するマナーの大切さは従来から認識していたが、職場内にもマナーが大事であるとは意識していなかった。今回のセミナーを通じて、自分にとって働きやすい環境を作るためには職場内のマナーも重要であると学んだ。

 マナーの重要性についてのレクチャーが終わったあと、さっそく各自一分間の発表を行った。発表の様子は録画した。日本語学科で勉強してきた私はこれまでも会話の授業での録画を何回か経験しており、発表内容は工夫したつもりであった。しかしこの発表で意外だったのは、ここで重視されたのが内容や文脈の良さではなく、姿勢や動作、言葉の癖などであるという点であった。スーツを着ていると自分の姿勢の悪さがはっきりと分かり、映像を見直すと自分でも恥ずかしいくらいであった。こうした無意識の所作は、ひとつひとつは些細なものだが、例えば手の組み方や、足の開き方など、全てにしっかりと注意を払わないと全体的にとても悪い印象を与えてしまうのだということが分かった。自分と他の方の映像を見比べることで、どのように自分自身の第一印象を改善できるかを学ぶことができた。

 午後には、主にビジネスコミュニケーションの基本についての演習をした。特に興味深かったのは、上司から指示を受ける時、5W2Hの情報を正確に把握するためにはどのように上司へ質問すればよいかを2人1組で演習したことであった。ここで大事なのは、上司からの指示通りに作業を終えたあと、必ず報告を行うということである。また、最後に上司へ「ほかにも何かございますか」と確認することも大切である。もしそれで何も新たな指示がなければ、それでようやく任務完了となる、ということを学んだ。

 二日目の三月八日には、まず前日に教わった敬語の用法などを繰り返し復習した。日本語学科の授業でも敬語については勉強していたが、やはりまだ身についていない部分も多く、より一層努力しなければならないと感じた。

 そして、私にとって最も苦手意識のある電話対応の演習が始まった。この演習で感じたのは、話すべきセリフの多さである。電話の向こうの相手がとても急いでいる場合でも、「おはようございます」や「お世話になっております」などの最初の挨拶を欠かしてはならないという点に敬服した。そして伝言をメモした後の「○○が承りました」という言葉など、日常会話では使わないような日本語も電話対応中には多く出てくるので、混乱してしまった。しかし何よりも難しいのは、相手の会社名・部署名や話の内容を正確に聞き取るという点であった。

 セミナーの最後には、3人1組で来客対応のロールプレイをした。ロールプレイの順序は、①部下がお客様到着の電話を受ける、②部下がお客様を迎えに行き、打ち合わせを行う会議室まで案内する、③上司に報告して一緒に会議室まで向かう、④担当者が変わることを上司がお客様に伝え、お客様と新しい担当者である部下とを引き合わせる、⑤お客様と部下が名刺交換をする、⑥全員が席に着き、お茶を用意して、打ち合わせが始まる、⑦打ち合わせが終わり、名刺をしまい席から離れる、⑧退室して、お客様をエレベーターまでお見送りする。このロールプレイでは、二日間で学んだビジネスマナーを全て使って実践演習をした。どのパターンでも、お互いの上下関係を考えながら、言葉遣いと話す順番に注意しなければならない。そして席に着く時や離れる時には、席次や着席・起立のタイミングにも配慮する必要がある。台湾にもこのようなビジネスマナーがあるはずだが、台湾での就職経験がないため、今回初めてこうしたマナーを学ぶことができた。

JAL財団での半年間の活動の始めにこうしたビジネスマナーを学ぶことができ、本当に良かったと実感している。今回のセミナーで得た知識を、これから半年間の活動に大いに生かしたい。また、この知識は将来の実際の就職時にも役立つものと思う。このレポートを書いている今現在、すでにセミナーを受けてから二週間がたっている。しかしいまだに電話対応には苦戦している。課題は多いが、さまざまなことを身につけて、早く社会に役立つ人間になりたいと思う。



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