千歳マラソン研修レポート

北京外国語大学 徐 浩天



 6月2日、私は北海道で開催された第39回 JAL 千歳マラソンにボランティアとして参 加した。事前の顔合わせ会から最後のお疲れ様会まで、私は給水準備や声援の言葉遣い、水の渡し方など、色々と学んできた。その上、地元の方々、JALの方々と交流することもできて、自分にとっても貴重な思い出になった。
 正直に言うと、私は北海道にもマラソン現場にも一度も足を運んだことがなくて、飛行機を降りたときは胸がドキドキした。だが、空港の到着ロビーに入るや否や、中国語のプラカードを持っている佐藤かつおさんの姿が見えてきて、彼が親切に接してくださったおかげで、 持ち続けてきた緊張と不安は吹き飛ばされていった。その後、支笏湖とサケのふるさと水族 館を観光したのち、ボランティアグループのメンバーたちとの打ち合わせ会に参加した。周囲は一度も会ったことがない人々ばかりだったが、話が進めば進むほど親しくなり、うちとけた雰囲気の中で宴たけなわとなった。さらに、かつおさんから翌日の日程や給水の手渡し動作、応援の言葉などについてきめ細かく説明していただき、最後に皆さんと交わした「明日よろしくね」という言葉で、私も元気と自信をもらった。

 天気予報は雨が降るという予報だったにもかかわらず、当日の朝は抜けるような青空であった。 私たちは朝8時頃から千歳川に沿って担当する第8給水所へと向かっていた。セミの鳴き声や鳥のさえずりが聞こえ、木漏れ日で目が少しくらむのである。川をちらっと見ると至る所に葦が生えている。疾走するランナーたちはこんな風景をゆっくりと楽しめる余裕がないかもしれないが、 吹き抜けていくさわやかな風を感じながら見た美しい景色も、マラソンならではの趣だと言えるだろう。第 8給水所は最後の給水所でもあるため、ランナーたちに最後までマラソンを楽しんでもらうことが、私たちの任務だ。


ボランティアグループとの事前打ち合わせ


給水中の様子

 初めて選手の姿が現れてきたのは、10時過ぎの頃であった。バイクスタッフのすぐ後ろに、先頭グループのハーフマラソンランナーが次々とやってくる。先頭ランナーが過ぎてしばらくすると、第2位、第3位も目に入ってきて、ランナーたちの数がどんどん増えていく。皆は鍛えられた体で、ひたすらゴールを目指しながら、猛スピードで私の目の前を走っていった。そのため、道端に立っていた私は紙コップに入った栄養ドリンクを渡そうとするたびに、うまく渡すことができず、こぼれてしまった。ただ、ルートの先に私と同じようなボランティアが何人も立っているのでランナーはなんとかドリンクを受け取っていた。私は自分の要領の悪さに挫折感を感じてしまった。だが、渡す回数が増えるにつれて私はだんだんに上手になった。それは後半の走者のほとんどが給水所に着くと速度を落としたことによるものでもあり、私がコツを覚えて、コップを少しランナーの方向に斜めにして渡したことも要因であろう。


 ランナーたちのピークになったのは、午後3時ごろの話だった。40キロも走り続けてきたランナーたちが最後まで頑張っている姿を見て、感銘を受け、大きな拍手と声援を上げたい気持ちになった。給水を何時間やり続けて、日焼けをしたのにもかかわらず、コップを渡した時にもらった「ありがとう」という一言で、私はまた 元気が湧いてきた。そして、こちらからも 「お疲れ様です」 とさらに大きな声をかけることができた。なぜ 「頑張って」ではないかというと、ランナーたちの中には真剣勝負をしたい人もいれば、観光がてら千歳の景色を満喫したい人も必ずいると思ったからである。その人たちに思いっきり楽しんでいただくためにも、勝負を考えさせない方がいいのではないかと感じた。 ゴールを「頑張って 」目指させるのではなく、ここまでの努力を励ます言葉は走者の心により優しく届くだろう。


第8給水所の皆さん

 今回の2日間のボランティア活動は決して長い期間とは言えないが、千歳の夏の景色と美食や地元の人のおもてなし、マラソン大会の運営などを思いきり楽しませていただいた。また、ボランティアとランナーたちの熱が伝わり、いつも静かな私も思わず大声で応援していた。今度のマラソン研修を通して、皆さんとの絆が深まった上、マラソンとボランティアについても多くの知識を得ることができた。また、ランナーたちの立場に立って考えたりすることもできるようになって、精神的にも肉体的にも逞しさを身につけることが必要だと認識できたので、自分自身に大きな成長をもたらしたと思う。



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