JAL Scholarship 2018 JAL Scholarship Program Report

テーマ:

SDGs –持続可能な社会へ-

持続可能な開発を目指して。
考えよう、いまの社会のために、そして将来世代のために私たちができること

開催期間:
2018年6月25日~7月17日
参加者:
2018年度のJALスカラシッププログラムには、オーストラリア、北京、広州、大連、天津、上海、香港、ソウル、釜山、シンガポール、台北、高雄、ホーチミン、ハノイ、インド、インドネシア、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、グアムから選出された25名が参加しました。

スケジュール

6月25日 各地より来日後、福岡県宗像市へ
6月26日 午前:オリエンテーション(日程・注意事項説明、自己紹介等)
午後:宗像大社 見学
6月27日 宗像市プログラム
午前:海の駅むなかた館 見学
午後:基調講演 「SDGsを北東アジアの海の交差点の宗像で考える」
   九州大学大学院 准教授 清野 聡子氏
   海岸清掃・調査
夕食:ウェルカムパーティー
6月28日 宗像市プログラム
午前:漁業・6次産業について
午後:竹魚礁製作
夜 :宗像市中学生と交流会
6月29日 福岡市内自由行動
福岡より東京へ移動
6月30日 東京より石川へ移動
石川県白山市プログラム①
午後:白山比咩神社散策
   千代女の里俳句館 俳句創作
7月1日 石川県白山市プログラム②
   ホームビジット(午前:対面式、午後:ホームビジット)
7月2日 白山市プログラム③
午前:講演 「国連SDGsと金沢工業大学の取り組み」
   金沢工業大学 地方創生研究所SDGs推進センター長 平本 督太郎氏
   白山市副市長表敬訪問
午後:白山麓研修
   金沢工業大学白山麓キャンパス訪問
7月3日 午前:日本文化体験(浴衣着付け・茶道・琴)
午後:講演
   ①「国連大学OUIKが繋ぐ石川県金沢市のSDGs」
     国連大学サステナビリティー高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)
     事務局長 永井 三岐子氏
   ②「金沢の新しい庭園管理・⾦沢の生物文化多様性圏について」
     OUIK研究員 Juan Pastor Ivars氏
   2030 SDGs カードゲーム体験
7月4日 午前:基調講演
   ①「金沢市の環境政策」
     金沢市環境政策課 課長補佐 大壁 久展氏
   ②「持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて」
     ESD活動支援センター 副センター長 鈴木 克徳氏
   ③「日常生活におけるSDGsの実践と普及活動」
     NPOエコラボ 代表 中村 早苗氏
午後:石川県 環境関連施設 見学
   ①会宝産業    ②明和工業
7月5日 終日:金沢学生のプランによるフィールドワーク実施(グループ別行動)
7月6日 終日:グループ討議・フィールドワーク
7月7日 ①「アジアフォーラム in 石川」公開シンポジウム開催
②石川地区ホームステイ対面式
③国際交流まつり
7月8日 石川地区ホームステイ
7月9日 午前:JL186便(小松11:20発→羽田12:30着)
午後:①JAL SKY MUSEUM 見学
   ②JALオペレーションコントロールセンター 見学
7月10日 午前:基調講演「SDGsで未来から考える」
   慶応義塾大学大学院 政策メディア研究科 教授 蟹江 憲史氏
午後:築地本願寺 見学
7月11日 東日本鉄道文化財団プログラム
   TESSEI社 新幹線車内清掃
   コトニアガーデン新川崎 都市開発事業
7月12日 公開シンポジウム準備 グループ討議またはフィールドワーク
7月13日 午前:公開シンポジウム準備(グループ討議・資料作成)
午後:公開シンポジウムリハーサル(資料作成継続)
夜 :発表資料作成
7月14日 公開シンポジウム(ウィングホール、13:00~16:30)
海外スカラーはホストファミリー宅へ
7月15日 東京地区ホームステイ
7月16日 月・祝 東京地区ホームステイ
夕:修了式 ・フェアウェルパーティー
7月17日 帰国
  • 7月3日~8日の日程は、「アジアフォーラムin石川実行委員会」との共催になります。
  • 7月11日の日程は、「公益財団法人東日本鉄道文化財団」の企画になります。

プログラム内容

オリエンテーション

チームビルド、及びアイスブレークを目的としたオリエンテーションでは、今回のテーマ及び、プログラムの全行程の内容の確認、日本におけるマナーを含む内容を宿泊先である宗像市グローバルアリーナ研修室にて実施した。JAL財団常務理事田中 順二の挨拶に引き続き、プログラム全体の日程概要、プログラムの趣旨、スカラー達が取り組む「SDGs-持続可能な社会へ-」というテーマの趣旨と、スカラーがこれから取組む3つのミッションとその進め方について、JAL財団 後藤 浩毅より説明が行われた。

午後には、宗像の象徴を知るため、宗像大社へ赴き、本殿拝殿にて宮司 葦津 敬之様のもと、正式参拝をさせて頂く機会を得て、これから始まる3週間の日本でのプログラムが安全で素晴らしいものとなるよう祈願をした。お神酒をふるまって頂いた後、宮司 黒神 直豊様のご解説のもと、高宮祭場、第2宮、第3宮へも参拝することできた。本殿拝殿で玉ぐしを捧げ、二礼二拍一礼に沿った日本の神道に沿って祈願をする体験は、参加したスカラー達には、日本人の本質に触れる良い機会となり、日本を理解しようとする姿がそこにはあった。続く、神宝館では、古代により沖ノ島でなされた祭祀や対外交渉の際に献上された数々の装飾品に目の当たりにして、日本とアジア大陸との交易が今日の日本の原点となっていることを実感することができた。今回初めて来日するスカラーが全体の4分の1占める中にあって、来日後に初めて訪れた地が、宗像であったことは、日本の歴史と伝統を知る上においてとても有意義であった。

宗像市プログラム

基調講演

九州大学大学院 准教授 清野 聡子氏
演題:SDGsを北東アジアの海の交差点の宗像で考える

6月27日、海の道むなかた館において、学芸員 白木英俊様による、宗像の由来、海の民族と陸の民族が融合した背景、歴史に関する講演を頂いた後、館内の展示物一つ一つを楽しい解説と共に習得する機会を通じて、宗像の歴史と、世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の詳細について学ぶことができた。

午後は、九州大学大学院の清野 聡子氏より基調講演を頂き、海洋交易の拠点として栄えた宗像という場所の特徴から始まり、海洋生物多様性、そしてそれに伴う文化を保護することの重要性や、更には海に漂流するプラスチックゴミ問題、海草が生えなくなる磯焼け問題などの環境問題解決へ向けて、海で繋がった各地域が責任を持って協力し合い、世界全体で取り組んでいくことの必要性について学んだ。

海岸ゴミ清掃活動

基調講演に引き続き行われた、さつき松原海岸ゴミ清掃活動では、「ながさき海援隊」の指導の下、グループ毎に設定した区画の中で国際海岸クリーンアップ調査(ICC)を実施した後、海岸全体の清掃活動を行った。ICC調査では、グループ毎に所定の調査用紙にゴミの集計を種類別に行った。翌6月28日朝には、ながさき海援隊によるICCの分析報告と提言がなされ、そして全体でワークショップを実施した。

宗像の漁業を知る

6月28日午前、宗像漁業組合鐘崎本所にて、宗像市産業振興部 水産振興課 宮野 辰治氏により宗像の漁業の概要と歴史について学んだ。続いて、海女さんや漁師さんとして活動されている、林 由佳理氏、権田 幸祐氏、宗岡 建一氏の3名をパネリストとした講演会では、宗像の最前線における漁業の現状報告と課題、そして解決に向けた提言を伺った。持続可能な漁業を実現するためには、現代世代に留まらず、魚を将来世代まで残していくために、必要な分量に漁獲量を抑えるリソースマネジメント、体長の短い魚は海に帰す活動を世界で協力して行っていく必要性などを学習した。講演の後は、鐘の岬活魚センターにて魚加工を見学し、加工された魚を、道の駅むなかたで昼食時に食することができた。

竹魚礁製作体験

6月28日午後には、福岡県立水産高等学校の大山 欣丈先生を始めとする6名の先生と7名の生徒(竹魚礁製作では先生)より、竹魚礁*1)の概要についてプレゼンを受けた後、6つのグループに分かれて各先生の指導のもと竹魚礁の製作を行った。思い思いの形を自由に設計したのち、スカラーと地元学生達は竹を割る所から始め、一心不乱に魚礁の組み立てを行い、最後には竹で作った短冊に願いを書き綴り、約3時間かけて6基の竹魚礁を完成させた。互いに協力しあって完成させた時のスカラー達の達成感はひとしおであった。津屋崎沖に魚礁を設置するべく、水産高等学校の和船も準備されたが、生憎の強風のため、水産高等学校の皆様にその作業をお願いすることとなった。竹魚礁を共同で作成した貴重な経験は、将来スカラー達が自国へ戻って語り継がれて、次世代へと受け継がれていくことを願っている。

*1)繁殖力の強い竹は、間伐を行わないと、広葉樹を浸食してしまう。一方間伐材として生じた余剰の竹の有効利用と、環境への負荷が少なく、編み込まれた竹にはイカなどの海洋生物が産卵する。

中学生との交流会

宗像国際育成プログラムでは、地元中学生に対しスカラー達の国・地域を紹介するプレゼンテーション、宗像市との比較や、ユニークなクイズ出しを行いつつ、理解を促した。後半では、スカラー達の宗像市訪問の感想を共有し、宗像の中学生との時間はあっという間に過ぎていった。スカラー達は、アジアオセアニアの国々への理解を深めてもらう一方、宗像の中学生には将来大きくなったら是非自国を訪問してほしいと強調した。こうして宗像市プログラムの長い最終日を無事に終えることができた。

白山市プログラム

俳句創作体験等

6月30日、石川県白山市へ移動し、3日間の白山市プログラムが始まった。白山比咩神社では、盛夏の緑の参道を登り本殿にて参拝体験をした後、千代女の里俳句館を訪れ、白山市国際交流協会、白山市俳句協会のご協力を得て俳句創作体験を行った。白山市俳句協会会長の川崎 房恵氏より、俳句の創作のポイント、考え方をご教示頂き、スカラー達は思い思いの俳句創作に取り組んだ。季語、表現の方法等いろいろ悩んでは、その都度先生と相談しつつ、様々な題材の感受性豊かな俳句が完成し、発表会が行われた。優秀作品の発表の後、千代女の里俳句館玄関の七夕飾り用に、願いを込めた短冊作りも行った。千代所の里に俳句館にあるJAL財団の展示物もスカラー一同で見学した。

ホームビジット

白山市プログラム二日目は、白山市の皆様のご協力のもと、ホームビジットプログラムを実施した。ホームビジットプログラムでは、スカラーは白山の皆さんと、白山市ならでは広大な自然、お料理、観光、買い物、農業体験等を思い思いに楽しみ、充実した一日を過ごすことができた。もっと長く一緒にいられればとの声もあり、とても好評であった。夜は、宿舎横の松任海岸で漁火をバックに花火を実施し、山から海まである白山市ならでは光景を満喫した。

副市長表敬・基調講演・白山手取川ジオパーク訪問

金沢工業大学地方創生研究所SDGs推進センター長 平本 督太郎氏
演題:国連SDGsと金沢工業大学の取り組み

白山市プログラム最終日には、白山市副市長 井田正一氏、白山市国際交流協会会長の福田 裕氏への表敬訪問を行った。頂戴したお話しの中では、JAL財団とは2002年の白山でのハイクキャンプ以来のお付き合いがあること、白山市が、6月に29都市ある「SDGs先進都市」の一つに指定され、持続可能な社会を目指しており、日本でも他に例のない、山、川、海のすべてを有する稀有な市でありSDGsとの親和性が高い点、加賀の千代女の故郷に由来し、俳句を海外へ普及活動を行っている点が紹介された。スカラーからは、千代女の里俳句館での俳句創作経験や、ホームビジットでの経験を通じてできた白山市への思いを紹介させて頂いた。
当日は、金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長の平本 督太郎氏による基調講演も行われ、「地球規模」、「誰一人取り残さない」、「バックキャスト」のキーワードを基に、社会・環境・経済のトレードオフの関係をどのように打破していくのか、2030年には一人ひとりがどのような世の中にしていきたいのかを描き、それを目指すには何が必要なのかを考えなければならないこと、「現状の延長上では、もう持続可能な社会には届かない、バックキャストからの破壊的創造」が必要であることを念頭において常に考えて行かなければならない点を学んだ。
本年4月に開学した最先端の金沢工業大学国際高等専門学校の白山麓キャンパスについて、SDGsに貢献する次世代リーダー育成を目的に、ボーダースクール形式を取り入れ、3年目には環境技術イノベーション・社会システムイノベーションを取り入れた授業取り入れていること、週末にはご家族が学生のもとで一緒に過ごせる体制を築いて、過疎に悩まされている山間部の人口問題解決の一翼を担い、経済・社会・環境のすべてに貢献している点等を学んだ。

引き続き、白山市観光文化部ジオパーク・エコパーク推進室室長 山下 浩雅氏のご案内と詳細な解説のもと、手取川ジオパーク・白山ユネスコエコパークとして認定されている白山麓地区へ向かう道中でクイズを解きつつ地域の理解を深め、各地区を訪問した。綿ケ滝を始めとする美しい手取川渓谷を堪能する傍ら、手取りダムの近くの東二口の「尾口のでくまわし」では、日本の伝統文化に間近で触れる、後継者問題について考察した。手取りダム完成で交通アクセスが良くなった一方、人口が800名にまで減少している白峰村では、白山しらみね自然学校理事の 山口 隆氏によるSDGsの観点からのご説明による白峰重要伝統的建物群を含む村内各地区見学を通じて、白峰で起きている諸問題は、日本の縮図であることを学んだ。

日本文化体験

アジアフォーラム初日の7月3日、石川国際交流ラウンジを訪問し、スカラー達が心待ちにしていた、日本文化体験を実施した。今回は、中村 桂子氏による浴衣の着付け、山森 三鈴氏による茶室での茶道、網谷 智子氏による琴の演奏などを体験した。お琴では、網谷先生の楽譜の掛け声のもと、全員で揃って演奏ができるまでレベルまで習得することができた。茶道では、お作法を学ぶ傍ら、お茶のお代わりはできないのか、飲みきれなかった時はどうすればよいのか等の質問が出ていた。浴衣着用時には、美しい形でかつ、正しい方法での浴衣着用を学んだ。
浴衣を着用したスカラー達は、石川国際交流サロンへ移動し、美しい日本庭園背景にて写真撮影を楽しんだ。昼食は地元のボランティアの皆さんの手作りカレーライスを頂きつつ、交流を図った。

アジアフォーラムin石川

講演・SDGsカードゲーム体験

国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット(OUIK)事務局長 永井 三岐子氏
演題:国連大学OUIKが繋ぐ石川県金沢市のSDGs
国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット(OUIK)研究員 Juan Pastor Ivars氏
演題:金沢の新しい庭園管理と生物文化多様性圏について

7月3日午後には、しいのき迎賓館を訪れ、アジアフォーラムin石川プログラム総合コーディネーターの、石川県ユネスコ協会事務局長 川畑 松晴氏によるオリエンテーションと、地元の学生たちとの対面式が行われた。
国連大学サステイナビリティ高等研究所OUIK事務局長の永井 三岐子氏より、OUIKが石川県内において自然と文化の包括的な保全を目指す「生物文化多様性圏」をはじめとするOUIKの取り組みを事例に、お互いの顔が見える特性を生かし地域からSDGsを推進していくグローカルな活動の意義を勉強した。
OUIK研究員のJuan Pastor Ivars氏による講演では、外国人の視点から気づき・提案された金沢の持続可能な日本庭園管理について学んだ。美しい日本庭園の手入れ・管理が困難になっている状況に対する解決策が披露された。
SDGsカードゲーム体験では、永井氏のご指揮のもと、カードゲームの体験を通じて、自らの行動が、経済メーター、環境メーター、社会メーターの動きを通じて世界に影響を与えるさまを、詳しい解説と共に学んだ。各グループ中心に取り組んでいた前半部分よりも、より各グループ間で協力し合うことを指示された後半部分では、環境メーターの値が大きく増え、お互いが協力することにより、経済・環境・社会のいずれの面においても、より大きな目標達成をすることができる点について身を持って実感することができた。

金沢講演・企業訪問・カードゲーム体験

金沢市環境局環境政策課 課長補佐 大壁 久展氏
演題:金沢市の環境政策
ESD活動支援センター 副センター長 鈴木 克徳氏
演題:持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて
NPOエコラボ代表の中村 早苗氏
演題:くらしにおけるSDGs 実践と普及活動から

7月4日午前、金沢講演として、金沢におけるSDGsの取り組みについて、造詣の深い3名を招いてご講演を頂いた。金沢市環境局環境政策課課長補佐の大壁 久展氏からは、持続可能な都市を目指して金沢市が環境に対して取り組んでいる活動を、2018年4月から新たに施行された環境基本政策に沿ってご説明頂いた。ESD活動支援センター副センター長の鈴木 克徳氏からは、SDGsの前の目標であったミレニアム開発目標(MDGs)の反省点や持続可能な開発の考え方などSDGs成立の背景や、日本が行うSDGs関連の取り組み、また、持続可能な社会づくりのための人づくりとしての持続可能な開発教育(ESD)を推進する活動など幅広く学んだ。NPOエコラボ代表の中村 早苗氏によるご講演では、2010年には経済産業省主催「省エネコンテスト」家庭部門で最高賞である経済産業大臣賞を受賞にまで至ったご自身の活動や経験から、日常生活レベルで実践できる省エネ活動などについてお話し頂き、自己の生活を省みるきっかけとなった。
午後は、自動車リサイクル業を行う会宝産業と、有機廃棄物を炭素化し有効活用を目指す明和工業の2社を訪問し、先進的なリサイクル業務の実情を学び、静脈産業と循環型社会の確立の可能性を目の当たりにした。また、夕刻に行われたカードゲーム体験では、金沢工業大学と金沢星稜大学の学生で構成された団体、SDGs Global Youth Innovatorsをお招きし、新しいSDGsカードゲームの体験を通じて、若者の柔軟な発想を提案し合った。

フィールドワークとグループ討議

7月5日には、グループのテーマに沿ってコーディネーターの川畑氏、及び地元の学生たちによって提案・計画された石川県内各地のフィールドワーク先へ、グループに分かれて出掛けた。このフィールドワークでスカラー及び学生達が視察した内容、取材によって入手した情報を基に議論を重ね、アジアフォーラムin石川の発表に向け準備を進めた。

アジアフォーラムin石川

プログラム総合コーディネーター:石川県ユネスコ協会事務局長 川畑 松晴 氏
日時:7月7日(土)午後

2018アジアフォーラムin石川は、「SDGs-持続可能な社会へ-持続可能な開発を目指して。考えよう、いまの社会のために、そして将来世代のために私たちができること」をテーマに、7月7日の午後、石川県青少年総合研修センターで開催された。
オープニングセレモニーでは、アジアフォーラムin石川実行委員会委員長 紐野 義昭氏、引き続き公益財団法人JAL財団常務理事 田中 順二、日本航空執行役員 下條 貴弘、石川県観光戦略推進部次長 竹内 政則氏、金沢市都市政策局国際交流課長 山田 敏之氏がそれぞれ挨拶を行った。
続いてプログラム総合コーディネーター 川畑 松晴氏による進行のもと、スカラー及び日本人学生がフィールドワークとグループワークの成果をグループ毎に発表した。

グループA つくろう!DiverCity!! 生物多様性からみるSDGs~地域活性化
グループB 市民と観光客の調和~持続的な観光都市金沢を探る~
グループC SDGsの達成に向けて 金沢市のグローカルの取り組み
グループD ISK48小選挙 ~あなたの地球アイドルに投票せよ!~

発表後、金沢工業大学 平本 督太郎氏、NPOエコラボ代表 中村 早苗氏、金沢市環境局環境政策課課長 桑原 秀忠氏より全体総括を頂いた。

国際交流まつり

7月7日夜、スカラー、地元学生、ホストファミリー、地元関係者の皆さんが交流する「国際交流まつり」をアジアフォーラムin石川の終了に引き続き開催した。金沢市都市政策局 中村 弘志氏の司会のもと、アジアフォーラムの開催にご尽力頂きました関係の皆様との交流を始まり、余興では神隆社中による踊りと和太鼓の演奏に引き続き、民族衣装姿のスカラーたちによる民俗芸能などの出し物の披露、地元学生によるソーラン節の披露などで会場が大きく盛り上がった。この国際交流まつりは、地元金沢の学生とスカラー達が一緒に過ごす最後の機会となるため、別れを惜しむ姿が見られた。

石川地区ホームステイ

国際交流まつりの終了後、7月7日(土)の夜より7月9日(月)にかけて、石川県の皆様のご協力により、ホームステイが行われた。スカラー達は、北陸での家庭生活体験、人々との出会いを通じ、古き良き日本の伝統や生活習慣を経験することができ、日本の生活に対する理解を深めることができた。

東京プログラム

機体整備工場見学

7月9日、石川県のプログラムを終え、東京へ向かったスカラーは、羽田空港のJAL SKY MUSEUMを訪問した。航空教室では、飛行機や空港の基本について、展示コーナーでは、日本航空の歴史、航空会社各職種の仕事について学んだ。格納庫では、機体整備中のJAL機が、想像よりも大きく映り、目の前でなされている整備作業の光景を通じて、命を預かる仕事の大切さを見ることができた。続いてJAL本社で行ったオペレーションコントロールセンターの見学では、日本航空の機数、便数を始めとする運航全般の紹介及び運航に携わるセクションが一致協力してフライトを支えている点について学ぶことができた。

基調講演

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 蟹江 憲史氏
演題:SDGsで未来から考える

7月10日には、東京プログラムの基調講演として、慶應義塾大学大学院の蟹江 憲史氏をお招きし、ご講演頂いた。SDGsという新しい考え方・ものさしについて、従来のルール作りからのフォアキャスティング方式から、ゴールを先に決めてそれに向かって達成方法を考えていくバックキャスティング(逆算)する方式へと変化していること、また、パートナーシップ・レジリエンスでは、中央集権型によるトップダウン方式から自立・分散・協調型ネットワークによるボトムアップ方式へ転換している点等新旧の相違点を学んだ。世界では何かをコミットする事が難しくなっている現状において、将来の目標を決めて一緒に目指すやり方であれば、合意を形成しやすいことが背景にあった。今回のSDGsのルール作りは、国連がこれまでになく多い約3万人のメンバーと、初めてインターネット経由で意見を収集して作成された点の紹介もあった。日本の年金機構がESG(Environment Social Governance)を実践している先への投資を開始し、他の機関投資家や、海外投資家も同調してきている点や、今後はSDGsビジネスコンテストで優秀なモデルを作成した会社が成功していく時代になってくる、それには若い感性を入れて行く必要がある点の紹介があった。
午後には宗教としてSDGsに取り組んでいる築地本願寺を訪れ、築地本願寺副宗務長 東森 尚人氏から、SDGsに関する築地本願寺の取り組みに関してご説明頂いた。浄土真宗本願寺派は2017年11月に「仏教×SDGs 次世代リーダーズサミット」というシンポジウムを主催し、地縁・血縁のような伝統的なつながりが存在した時代から、変化の激しく流動的な「個」の時代となった現代社会構造のなかで、宗教というアクターとして貧困の撲滅へ取り組んでいる。東森氏は最後にSDGsを「小欲知足」と「和顔愛語」の四字熟語2つを念頭に生きればよいとまとめており、スカラーは多くを求めず助け合う相互扶助の精神を学んだ。

東日本鉄道文化財団プログラム

東日本鉄道文化財団のご協力により、東京駅TESSEI社と、コトニアガーデン新川崎の視察を行った。TESSEI社では、社員のマインドが、「お客様からの笑顔・感謝」、「働く仲間からの承認」、「実践で手本示す先輩の存在」の3つによって支えられる点や、礼に始まって礼に終わる「TESSEIのおもてなし」を一人ひとりが実践することによって持続されることを学んだ。7分間で実施される新幹線清掃車内清掃の業務、メンバー同士が互いに対話し活性化するよう工夫された控室、自ら改善しつつ作成された持ち運び可能な清掃道具入れ等先進的な取り組みを見ることができた。スカラーにとっては、仕事に就く日本人の心構えとまさにミラクルの7分間を通じて多くを学ぶことができた。コトニアガーデン新川崎では、「”ずっと住みたいまち”をつくろう」をスローガンに、そこに住む人だけでなく地域から人が集い、子供から高齢者までの世代間交流ができるように工夫を凝らした都市設計の現場を視察した。公共部分を使用した地域交流イベントなどの仕掛けや、併設の高齢者サービス施設を見学し、都市部における新しい持続可能なまちづくりの形を学んだ。

クロージングセミナー

スカラーは、宗像市、白山市、金沢市、東京での数々の講演、企業訪問、フィールドワーク、人々との触れ合い、日本文化体験を通して得た知識を活用し、各グループ内で日本人学生と共にSDGsをテーマとするビジネスコンテスト形式の最終発表に向けた作業に取り組んだ。

スカラーによる公開シンポジウム

司会進行:後藤 浩毅
コメンテーター:国立大学法人 茨城大学 人文社会科学部社会科学領域 地球変動適応科学研究機構(ICAS) 野田 真里氏
        日本航空 副会長 大川 順子氏

JALスカラシッププログラムの集大成である公開シンポジウムが、野村不動産天王洲ビルの「ウィングホール」で開催された。ホストファミリー、プログラムに参加した日本人学生、昨年のプログラム参加者など多くの方々が来場した。 フィールドワークでの取材、クロージングセミナーにおけるディスカッションを踏まえた上で、日本人学生の協力を得つつ、JALスカラシッププログラムを通じ、学び、考えたことを、テーマに沿って纏め、日本語で発表することが目的である。ビジネスコンテスト形式で行われた今回の発表では、グループ毎に今回のテーマである「SDGs-持続可能な社会へ-」について、様々な国と地域から来た各スカラーと日本人学生が協力して熱い議論を繰り広げ、プログラム期間中に学んだSDGsの視点を駆使し一生懸命に考え、纏めあげたプレゼンテーションを発表した。

「私の夢」「私の2030年目標」

シンポジウムのチーム発表の後、スカラー一人ひとりが、将来の夢を発表する機会が設けられた。様々な国と地域から集まった次世代を担う若者たちが真剣な眼差しで「私の夢」を、また、日本人学生は「私の2030年目標」というテーマで自ら書いた絵画や文字と共に語った。すべての夢が叶うよう願うと共に、夢の実現に向け、このプログラムでの経験が、貴重な一歩となることを切望している。

東京地区ホームステイ

公開シンポジウムの後、スカラー達は、ボランティアのご家庭のもとへ2泊3日のホームステイに出掛けた。各家庭での生活体験、東京地区での観光、買い物、料理などを経て、日本の生活・習慣に馴染むことができた。白山市、金沢市に加えて、東京地区ホームステイでの日本人との触れ合いにより、スカラー達の日本の生活に対する理解が一層深まることとなった。

修了式・フェアウェルパーティー

7月16日(月)夕刻、 スカラシッププログラムで寝食を共に過ごしたスカラーたちは、野村不動産天王洲ビル ウィングホールにて修了式に臨んだ。会場にはJAL財団理事長の植木 義晴をはじめ、ホストファミリー、東京プログラムに参加した日本人学生、JAL財団の関係者なども参集し、スカラーたちは理事長植木から修了証書を手渡された後、記念撮影を行った。引き続き、クルーズクラブ東京にて開催されたフェアウェルパーティーでは、食事と共にしながら、今回のスカラシッププログラムの振り返りビデオを見た後一人ひとりが最後のスピーチを行い、涙を流し、別れを惜しみ、再会を誓いあっていた。

主催:
公益財団法人JAL財団
協力:
アジアフォーラムin石川実行委員会、公益財団法人東日本鉄道文化財団
独立行政法人国際交流基金、白山市国際交流協会、白山市俳句協会
宗像市、宗像大社、福岡県立水産高等学校
後援:
国土交通省、外務省、文部科学省、石川県、金沢市、白山市
協賛:
日本航空株式会社
To PageTop